年頭所感

【2012. 1月 15日】

会長 柳川 洋子

 新年あけましておめでとうございます。

●今年を脱原発元年に

 昨年は、日本にとって大変な受難の年で、被災者の皆様には誠に苦しみの多い年でありました。
 放射能汚染に関しては、日本全国すべての地域が汚染の影響を免れないということも知らされ、「自分には関係ないよ」ではすまされなくなりました。
 群馬県でも放射性物質を含んだ粒子が気流に乗って運ばれ、山間部に雨となって降り注がれているということです。この後、山間部から流れ出た雨水は山を汚染し、沢を下って平野や田畑を汚染し、利根川を汚染し、海を汚染し、プランクトン、小魚、大きな魚と次々に汚染することになります。 
 こうなると、放射線量は定点測定だけは意味がなく、広い地域で、大気や水、土壌、食物などを継続的に測定する必要があります。せめて測定器の購入と精度管理は国の責任で、早急に実現してもらいたいと思います。

 脱原発への道のりは遠く険しいものですが、未来の社会に、甚大な生命の危険と大規模な環境破壊という負の遺産を残すのか、それとも、希望の光を残すのかでは、全く違う道のりです。私は小児科医ですが、日頃、赤ちゃんや幼児のかわいらしい仕草や無心に遊びに熱中する子どもたちと、それを見守る幸せそうな母親、父親たちの姿を見るにつけ、この子たちに放射能汚染の危険を残してはいけないと強く思うのです。権力闘争に明け暮れ、富を得ることに血道をあげている為政者たちや経済界の人たちには、もっと将来を見通す想像力を持ってもらいたいものです。
 
 3・11の東日本大震災、福島原発事故を契機に、人々は人生観、宇宙観、世界観、地球規模の環境問題に改めて思いを馳せました。そして結局、国家とは何なのか、国民の義務とは何なのかということまで、考えるに至りました。
 国家は国民が作るものだと思います。国民が原発はいらないと考えるなら、国に対してその意思表示をしようではありませんか。今、沈黙していては、賛成していることと変わりないではありませんか。昨年末にお願いした、市民中心の運動「さよなら原発1000万署名」に、ぜひとも多くの皆様が参加してくださるよう願っています。

 

 ●TPPで国民皆保険 制度崩壊の危機
 
 日本人の健康レベルは、OECD加盟国の中で第1位であり、日本の国民皆保険制度は、非常に有効に機能していると、WHОからも高く評価された世界に誇るべき制度です。
 しかし政府は、医療の最大目標である国民の健康を守るということを忘れ、またもや医療費削減を最大の目標にしているかに見えます。国保の財政や運営を都道府県に移すなど、国の責任を縮小させ、一方では社会保障と税の一体改革として、消費税の目的税化を提唱しています。そもそも社会保障は、国が責任を負うべき最も公共性の高い公共財なのですから、財源は租税財源全般で支えるべきなのです。
 
 政府は、TPP加盟が必要であるとしていますが、これを日本の医療の面で考えると、日本の医療制度は閉鎖的で自由競争の拡大を阻害するものとして、国民皆保険制度の変更を求められることは明らかです。TPPは単なる通商条約ではなく、国の制度の上位に位置し、国民皆保険制度をも脅かすものです。米国の市場原理が導入されると、米国の株式会社型病院や保険会社の参入、自由診療や混合診療の解禁が起こります。結果として、不採算部門、つまり儲からないところからの撤退、公的医療保険の縮小、お金があればいい医療が受けられるが、お金がない人は病気になったら最後、自己破産、家庭崩壊など、健康格差が拡大し、利益追求の圧迫から医療の質の低下が生じ、国民皆保険が崩壊してゆく危険があります。
 国民医療費の割合が世界最高である米国は、国民の健康レベルはOECD加盟国の中で最下位であり、オバマ政権が公的な医療制度を整備しようとしていますが、市場原理主義の社会では、実現に大変苦労しているということです。その米国が日本国民の健康を心配してくれることはありませんし、自由競争に勝つためなら、日本の非常に優秀な医療制度を壊すことも躊躇しないでしょう。この国民皆保険制度を守るため、日本政府、日本国民には頑張ってもらいたいと思います。

 ■群馬保険医新聞2012年1月号