中医協の答申を読む/診療報酬改定のポイント(歯科)
安易な包括と縛りの拡大
◎初・再診料
診療報酬本体が2.09%引き上げられ、初診料は36点引き上げられ218点に、再診料が2点引き上げられ42点になった。しかし、スタディモデルの初診料への包括化、初回の歯科疾患管理料の引き下げなど、今回も医学的に根拠のない包括が進んでいる。もちろん前回の改定で包括化されたラバー加算、歯肉息肉除去、EE、EB、充填物研磨などは包括されたままである。
その一方で電子媒体またはオンラインによる診療報酬請求を行っている保険医療機関に患者から求めがあった場合、個別の点数項目までわかる明細書を発行しなければならない。それは医療の透明化や患者への情報提供の観点からと言っているが、点数に反映しない包括化された処置が増えれば、患者から不当な処置と言われてもおかしくない。
こうなればまた説明に時間を費やすことになり、患者の待ち時間の増加や医療機関の負担増に配慮しつつという条文が全く意味をなしていない事がわかる。安易な包括や点数の切り貼りで混乱や不利益を生じるのはいつも医療者と患者側である。
しかし今度はオンライン化することで問題があった時、常にプログラム改訂という作業が必要になってくる。今までなら通知ですんでいたところがIT関係の中で一番やっかいで費用のかかるプログラムの改訂。この財源をいったいどこから持ってこようというのだろう。
◎歯科疾患管理料
歯科疾患管理料は初回の点数が減点され2回目以降と包括された。また初回の算定時期が初診日から起算してひと月以内から、初診日の属する月から換算して2か月以内に変更されている。算定条件としては「う蝕、歯肉炎、歯周病、歯の欠損等」から「継続的な歯科疾患の管理が必要な患者」に変更され歯科疾患全般が対象になっている。
継続管理計画においては「歯科疾患と全身の健康との関係」、継続管理計画書においては歯や口腔内の改善状態を記載しなければならなくなった。これは以前の、かかりつけ歯科医初診料と同様に長期における初診の縛りなどにつながる可能性がある。今後の通知、通達に注意したい。
◎義歯関連
有床義歯については義歯及び関連技術の評価を引き上げる一方、熱可逆性樹脂有床義歯の引き下げが行われた。義歯管理料の新製有床義歯管理料が装着月1回に変更され、点数は150点に変更された。また義歯管理料とは別に有床義歯調整管理料(30点)が新設され、義歯管理料とは別日に義歯調整を行った場合、月2回算定出来る。
義歯については歯科技工加算が新設されている。これは常勤の歯科技工士を配置し、歯科技工や、それにともなう必要な機器を有し、「患者の求めに応じて、迅速に有床義歯の修理を行う体制が整備されている旨を院内掲示している」を施設基準とし、破損した有床義歯を預かった日から起算して2日以内に修理を行い、当該義歯を装着した場合に限り加点出来る。現在6万件ある歯科医院の中でこの基準を満たす医院がいくつあるというのだろう。
現在早急に対処しなければならないのは技工所を開設している技工士との関係であり、このままでは日本で技工物を作る人たちがいなくなってしまうだろう。とはいえ、今まで議論されていなかった技工士問題が取り上げられたことは評価したい。
◎歯周病安定期治療
歯周病安定期治療は、治療開始日から年ごとに区別され点数が減点されてきたが、300点で統一され年ごとの縛りはなくなった。だがこちらにも歯科疾患管理料の「歯科疾患と全身の健康との関係」などが絡んでくると考えられることから注意が必要だ。
その他、乳幼児の100分の50加算年齢の6歳児への引き上げ、混合歯列期歯周組織検査の新設、齲蝕処置、根管貼薬、同一部位に2回目以上の歯周基本治療が引き上げとなっている。
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今回の改定で今まで触られなかった問題が取り上げられた点については評価したい。だが、保険で良い治療をとがんばって来た歯科医たちの意をそぐような改定になったのは残念である。(審査対策部・遠藤 毅)
■群馬保険医新聞 2010年3月号