医師の勤務に適う保育施設の充実を 

【2007. 9月 04日】

医師の勤務に適う保育施設の充実を
—女性医師支援をめぐる動きから—
                        群馬県女医会副会長 山田邦子

平成18年10月から、群馬県でも女性医師再就業支援事業がはじまり、11月末で若干名の登録があったという。まだ予定の一割程度だが、あって良かったというのが本音ではないだろうか。
実は私もこの事業策定には強い関心を持っていたので、この制度が広く周知され、それなりの登録者数があり、これを利用して一人でも多くの若い女医が医業に従事できることを期待している。

※延長保育・病児保育施設がほしい
これまでの多くの育児中の女医の実情はどうなのであろうか。新研修医制度の始まる前は、若い勤務医の多くは大学病院の医局に属していた。医局は卒業大学に関わらず、また男女に関わらず、勤務体勢の整った医師を関連病院に派遣し、非健康、出産・育児、研究者は医局内にプールされていた。それだけの人的余裕があったからだが、休職中も希望があればパート勤務の口が紹介された。今回の女医支援事業は、主体が行政であることを除けば、まさにこの医局の分化型ではないだろうか。
再就業前の研修を受ける場合、保育園費の補助があるが、この保育園が問題なのである。医業は定時には終わらないことが常である。また、自分の児の急病に対応出来かねるときもある。延長保育・病児保育施設があれば、児を持つ女医の活動はどんなに拡充されることであろう。
まず群馬大学付属病院にこの条件にあった保育園ができたことを高く評価したい。地域勤務の女医のためには、このような保育園が県内に数箇所あることが望ましい。行政には、地方の民間病院にも公平な対応を期待したい。

※医師は対象外だった病院内保育所
厚生労働省から10月31日付けで医政局長通達があり、病院内保育所運営事業について、平成14年から医師の児童も対象に追加すると補助金制度が出されたが(なんと、医師は自分の勤務する院内保育園に児童を預けられなかった)、未だに医師を利用者対象から除外している事業所が多く、これでは女医の就業に適当ではないとの見解から、子育て支援を必要とする職員に対して入所枠の提供と広報を行うよう呼びかけている。
また、育児・介護休業法により、育児休業中の待遇、休業後の円滑な就業、子の養育中の勤務時間の調整措置が定められているが、この法律の趣旨、内容を、管理職、子育て世代の医師、同僚医師に広く浸透するよう通知している。
女医が三分の一を占める時代において、この制度を提供できるかどうかは、事業の存続に多大な影響を及ぼすと思われる。

※女性に優しい職場はみんなが働きやすい
NPO法人「女性医師のキャリア形成・維持・向上をめざす会」(通称・ej net)の「女性医師に優しい病院評価」事業で認定した病院は、すべての医療職員に優しい環境であったことから「働きやすい病院」認定事業と名を改めた。
いまや、医療事業の存続・成功は女性医師が活躍できるか否かにかかっていると言っても過言ではないであろう。              (前橋市・若宮内科)
■群馬保険医新聞12月号