【論考】ぐんま母乳育児をひろめる会にバトンタッチ

【2010. 9月 28日】

【論考】 

 ぐんま母乳育児をひろめる会にバトンタッチ
            
       母乳育児をひろめる会会長  柳川洋子
 
 「母乳育児をひろめる会」は、母乳育児をする母親たちを支援するため、毎週土曜日に無料電話相談を続けてきましたが、2009年の3月末で終止符を打ちました。しかし、地域での母乳育児支援が引き続き重要であることは強く実感していました。
 幸いなことに、今年2010年に、病院関係で協立病院小児科の深沢尚伊先生、県立小児医療センター新生児科の丸山憲一先生、産科医院では桐生の優和クリニックの太田裕穂先生、群馬県立県民健康科学大学の小曽根秀実先生、開業助産師の後藤ひとみさん、母親の立場から三宮理恵子さんらが中心になって、群馬県に母乳育児支援の輪を広げようというグループが誕生しました。
 これまでの「母乳育児をひろめる会」を引き継ぐ形で、名称も新たに「ぐんま母乳育児をひろめる会」とし、若い世代、特に病院の産科、小児科、新生児科、助産師、保健師とさまざまな職種の方々に参加していただけたことは誠に嬉しく、また、群馬県民のためにも本当に喜ばしいことです。
 
  ◎24年続いた電話相談
 ここで、従来の「母乳育児をひろめる会」についてお話ししてみましょう。群馬大学小児科の故松村龍雄教授は、群馬大学小児科在籍の女医たちに、まず自分自身の子どもを母乳で育てるよう指導し、1985年3月に、女性医師21人を会員とする「母乳育児をひろめる会」を結成。同年4月に「母乳育児電話相談」を開設しました。
 「母乳育児をひろめる会」は、母乳育児の大切さを多くの人に知っていただくことと、母乳育児を望んでいるお母さんを支援することを目標としました。
 電話相談は毎週土曜日の午後3時から五時まで受け付け、電話番号は、「21世紀に向かっておっぱいゴクゴク=221-5959」という愛称で親しまれました。
 24年間の全国からの電話相談総数は8365件で、ほとんどが母親からの相談でした。相談対象者の月齢で最も多かったのは、1カ月以上3カ月未満の乳児を持つ母親で、結局、3か月未満の乳児についての相談が半数を占めていました。
 
  ◎母乳「不足」の心配
 「電話相談」からわかる母乳育児の問題点は非常に特徴があり、それがとりもなおさず母乳育児の問題点を浮き彫りにしています。
 相談内容の第1位は「母乳が足りているかどうか心配」です。実際は、母乳育児は頻回授乳が必要であることを知らないために、頻回に母乳を欲しがるサインを母乳不足と思って心配しているケースが多かったのでした。
 第2位は授乳に要する時間や授乳間隔など授乳方法についてでした。第3位は乳房のトラブル、第4位は卒乳、第5位は薬・酒・タバコの母乳への影響でした。その他、便について、離乳食、アトピー性皮膚炎等の相談がありました。
 統計は毎年取りましたが、驚いたことにこの相談内容は24年間一貫して全く変わらなかったのです。これがまさに母乳育児支援のポイントであると思いました。

  ◎助言があれば
 ご存じのように新生児の哺乳は不規則で、頻回にお乳を欲しがるのが正常の状態ですが、これを母乳不足と思ってしまい不安に感じる母親が非常に多いのです。このほかにも正常な状態を知らないために色々な不安が生じ、それが「母乳が足らないせいではないか」という心配になる母親が非常に多かったのでした。要するに、母乳不足は現実の問題ではなく、母親たちの感覚の問題であり、頻回の授乳が正常であることを知らないために生じる問題でありました。時には医療関係者からマイナスの助言を受けている場合もありました。
 適切な助言がないか、またはマイナスの助言があった場合は、これらの心配がきっかけで母乳育児を断念することも少なくありません。
 群馬県の母乳育児率は平成20年には2、3カ月時に54.2%になっています。混合栄養と母乳のみを併せると80.9%ですから、多くの乳児が母乳を飲んでいるということです。この時期に適切な助言があれば、さらに母乳育児率は上がることでしょう。決して難しくはない、ちょっとしたやさしい助言が母親の気持ちを安心させ、自信を取り戻させてくれるのです。
 物質文明を謳歌し、効率を重視する今の世の中で、母乳育児は積極的に支援していかないと次世代へと受け継がれてゆくのが難しい気がします。
 そういう状況下で、「ぐんま母乳育児をひろめる会」が10月に「第1回ぐんま母乳育児支援ミーティング」を開くことになりました。誠に意義深く、喜ばしいことです。是非、皆様のご参加をお願いする次第です。

 

【案内】
 第一回ぐんま母乳育児支援ミーティング
 時 2010年10月23日
 所 県立県民健康科学大学(前橋市上沖町323-1)
 資料代 500円
 問い合わせ、申込みは bonyu_hiromeru_gunma@yahoo.co.jp 

                                       

■群馬保険医新聞2010年9月号