受診実態調査/経済的理由で治療中断30%が経験

【2010. 9月 28日】

     
受診実態調査

  経済的理由で治療中断30%が経験

        ―300医療機関が回答(回答率28.6%)

 

 

 長引く不況が医療機関受診にも影響を及ぼしている。
 日本医療政策機構の「日本の医療に関する世論調査」(2010年)によれば、79%の人が「深刻な病気にかかったときに医療費を払えない」と回答している。しかし受診中断の実態は厚労省も把握しておらず、7月に全国保険医団体連合会(保団連)が発表した第一次受診実態調査(5~6月)の結果がマスコミに注目された。
 群馬県保険医協会では8月下旬、保団連の第二次調査に連動し受診実態調査を実施した。対象は会員1050人、回答は医科220人、歯科80人の計300人、回答率は28.6%だった。

  他県に比べ低かった中断率
      ―子どもの医療費無料化が影響か 

 この半年間に、主に患者の経済的理由から治療を中断または中止したと思われると回答したのは30%だった。保団連調査の39%、福島協会46%、青森協会49%に比較すると、群馬は中断を経験した医療機関が少なかった。中学生まで医療費無料化が広がったことが影響していると思われる。
 受診中断があったのは、病院8%、医科診療所25%に対し、歯科診療所では49%に。また中断した病名は糖尿病、高血圧症、高脂血症、気管支喘息、関節リウマチなどの慢性疾患が多い。歯科では歯周病、う蝕、欠損補綴、義歯など全般にわたり、痛みが取れればよいという患者がふえている。
 検査や投薬を断られたことがあったのは35%、MRI、CT(PET含む)をはじめ一般的な血液検査やX線、エコーなども断る例があった。さらに、助成金制度などを説明してもインターフェロン療法を断ったり、糖尿病患者が必要なインスリン使用を拒否する例もあった。
 また43%が未収金を抱えており、医科診療所37%、歯科診療所49%に比し、病院では75%に。
 アンケートからは金銭的理由による受診中断、受診抑制が増えていること、生活保護者の増加、保険証の不正使用や未払い金などで困惑する会員の声が聞こえてくる。
 以下、受診状況に関する文書回答から。
 
  保険料が払えず高額療養費制度も使えない

【病院】
○夜間急患、特に救急車で搬送される患者に無保険者が増えた。以前は外国人が多かったが、最近は日本人のみ。
○入院患者で、過去に保険料未納があったため高額療養費制度が使えず支払いが滞っている。
【医科診療所】
 ○ジェネリック医薬品処方希望者がふえた。市販薬を内副したが改善しないという理由で受診する患者が増えた。
 ○中学3年まで公費負担になり(中断は)皆無になった。
 ○降圧剤を1日おきに内服している人がいた。
 ○初診の窓口でいくらかかるか尋ねる人が増え、診察前から検査は希望しないという人もいる。
 ○資格喪失後の受診が減らない。
 ○なぜ生活保護かわからない(車に乗っていたり、職のある親と同居していたり、明らかに健康そうな)若い人が増えていると思う。
 ○あっても払わない人が80%か。ほんとうに苦しい人は受診しない。
 ○モラルの低下と生活保護受給者の増加。
 ○やはり3割負担は患者には大変なこともある。
 ○受診拒否されることがないので未払い受診が便利、会計時に手持ちがないと払わず、次の受診も未払いで、電話にも郵便にも応じない。受診は控えていないようだ。
 ○初診、重症(急性膵臓炎等)で二次医療機関に搬送したケースで代金を踏み倒すケースが増えている。
 ○新生児の1か月健診(有料)を控えようとする人がいた。重要な健診なので公費助成が望まれる。
【歯科診療所】
 ○次回に払うと言ってそのまま来院しない。
 ○継続的治療をいやがる例が増えた。金銭的問題が多い。
 ○気になっていても痛みが出るまで来院しない。治療を始めても痛みがなくなると来院しない。   

 

 
■群馬保険医新聞2010年9月号