【論壇】指導強化にどう対応するか

【2010. 9月 28日】

【論壇】

  指導強化にどう対応するか

 

 

 ◎指導に警察力
 厚生労働省はこのほど来年度の新規施策を募る初めてのコンテストを行った。全国の厚労省職員から政策アイデアを募ったところ81件が応募、7件が第一次選考を通過した。
 医療関連で残った2件はどちらも厚労省保険局医療指導管理官・向本時夫氏の提案で、「対医療機関等に対する指導監査部門の統合等」が優秀賞を受賞している。これは医療機関に対する調査・指導、監督監査は健康保険法、医療法、生活保護法、労災補償法等で縦割りになっている。これを一つの組織に統一し、一体となって実施をめざすという提案。具体的は方法が今後検討されることになった。
 問題は向本氏のもう一つの提案「保険医療指導監査部門の充実強化」である。警察庁・警視庁からの出向者を医療指導監査室の所属とし、都道府県に一人ずつ配置させるというものだ。同氏はプレゼンテーションのなかで、「私どもの組織の中に、警察庁・警視庁の人が入っているだけでも相当な効果がある。厚労省職員も捜査のプロからいろいろな手法を学べ…」と述べている。これが「懇切ていねいな指導」の実態なのだろうか。

 ◎違反を待ち構えて
 30数年前、前橋駅前のけやき通りは若者を乗せた車がUターンを繰り返しながら爆音を轟かせていた。流していた。警察当局はこの行為を禁じるために、片側三車線もあるこの道をUターン禁止区間に変更した。
 昨年のこと、市外に住むK氏は、厚生局群馬事務所を訪れる際、駅前通りを挟んだ反対側の駐車場が目に入り、禁止の標識に気づかずUターン。そこに、待ってましたとばかりに白バイが現われ、Uターン禁止違反の現行犯で反則切符。見事、K氏は犯罪者(?)となってしまった。
 目の前で違反しそうだと分かっていれば、未然に防ごうと指導するのが本筋。違反するのをてぐすねひいて待っていては違反は無くならない。一部の許されぬ行為を取り締まるための法律で、善良な市民が心情的に大きなダメージを受けた。
医療における審査指導・監査問題にも同様のことが言えると思う。わかりにくい交通標識(療養担当規則)は、その発見(解釈)がむずかしい。

 ◎自主返還にノルマ
 今春の改定で審査指導の強化が周知徹底された。指導は全国で8000件、自主返還にもノルマが課せられているとなると、細かな規則によって現場の裁量権がますます脅かされる。
 個別指導の選定要件で明らかになっているのは集団的個別指導は高点数8%(レセプト点数が高い上位八%)、個別指導は「四%」(集団的個別指導の翌年度にレセプト点数が上位4%の場合に、翌々年度に個別指導)というルールである。
 しかし高点数の基準となる平均点数は県によってバラツキがある。地方厚生局の解釈が統一されていないのもおかしなことだ。全国平均で行うのが筋だろう。地域差があるような療担規則であってはならない。
 文頭の向本氏は、何も悪いことをやっていないのであれば、正々堂々と指導を受けてほしい、高点数は悪ではないと言っている。
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 群馬協会では、個別指導にあたり弁護士帯同と録音を勧めている。これは、医師・歯科医師の人権を守るために必要なことだと考えている。気になることがあれば、お気軽に相談を。(副会長・小山 敦) 

 
■群馬保険医新聞2010年9月号