【論壇】ホメオパシー療法 代替医療はどうあるべきか

【2010. 11月 16日】

ホメオパシー療法 代替医療はどうあるべきか

 

 助産師のアドバイスでホメオパシーのレメディー(砂糖玉)のみ投与された乳児が、ビタミンK欠乏性出血症で死亡した。今年5月、山口地裁で起こされた訴訟が報道され、ホメオパシー問題が一挙に浮上した。

 ●ホメオパシーとは

 ホメオパシーとは代替医療に含まれ、約200年前にドイツの医師ハーネマンによって創始された治療法である。ある症状を起こす物質を非常に薄めた状態で砂糖玉にしみこませて服用すると、その症状が治癒するという理論に基づいている。ホメオパシー薬は一般にレメディと呼ばれ、3000種以上あり、約65%が植物から、そのほか動物や鉱物などから作られている。
 なぜ、レメディが効くのか、科学的にはまだ解明されていないが、治療効果の科学的な検証については、世界で170以上の無作為対照試験や、多くの研究論文が報告されている。ホメオパシーに治療効果があると主張する論文が出されたこともあるが、その後の検証により、その効果はプラセボと同じ、すなわち心理的な効果であり、治療としての有効性がないことが科学的に証明された。
 レメディ自体は危険がなくても、その使い方には注意が必要だ。投与中に悪化する(アグラベーション)状態が見られる場合は、ホメオパシーをいったん中止し、病状を見極めることが大切である。また、レメディを服用することによって、そのレメディが本来持っている病気や症状を引き起こしてしまう(プルービング)現象が起きることもあり、危険な場合もある。

 ●医師たちの反応

 日本では、レメディについてこれまで野放し状態だった。山口の事件後、日本学術会議、日本統合医療学会等が相次いで声明を発表。いずれも、医療は科学的エビデンスのある西洋医学を中心に進めるべきで、その機会を逸する可能性があるホメオパシーを治療に取り入れるべきではない、というものだった。
 代替医療は、その安全性、有効性、さらに経済性の3点について調査研究する必要があり、ガイドラインを設けて規制すべきであると発表している。 

 ●バッシングは逆効果

 一方、精神科医の斎藤環氏はホメオパシーに対するバッシングに危惧を抱いていると述べている。その要旨は、
 …どれほど過激なバッシングを展開しても、「信者」の態度変更にはつながりにくいこと。場合によっては逆効果のこともある。人が治療に求めるベクトルには「みんなと同じように標準的な水準治療を受けたい」という願望と、「私だけに効く特別な治療を受けたい」という願望の二種類あって、代替医療は、いわばテーラーメードの医療。
 この種の医療は、単なる治療である以上に、強力な自己承認の契機でもあり得るため、宗教やオカルトへの親和性が高く、こうした治療へのニーズはなくならないだろう。代替医療を非科学的として排除するのでなく、共存の道を探ることが望ましい(10月3日付、毎日新聞)…というものだった。

 ●現代医療への不信

 患者の立場を考えながら治療体系を選択するのはなかなか難しい。ホメオパシーに頼る人々には、現代医療に対する不信、不安、失望感などがあることを意識にとめておきたい。
 そのうえで、代替療法一つ一つについて、その効果の信憑性を科学的に検証し、体系化していくことが必要だ。西洋医学とどう組み合わせれば有効かの研究がまたれる。先鞭を切った欧米の各研究機関と研究成果を共有し、各大学の医学部での教育、研究、診療を急ぐべきである。
 そして、今後は患者の個別的症状に合わせて、バランス良く西洋医学と代替療法を取り入れ、ニーズに合わせて提供できる総合病院、民間医療施設が出来ることを期待したい。
   (副会長・太田美つ子)

 
■群馬保険医新聞2010年11月号