子宮がん検診にHPV検査を

【2007. 10月 15日】

  子宮がん検診に HPV検査を

                  理事 今井 昭満

 

 群馬県内の子宮がん検診は、近年ほとんどの市町村で2年に1度の隔年検診となっている。年1度の検診が隔年になった根拠は、厚生労働省の「がん検診に関する検討会」で見直しが加えられた平成16年3月の中間報告。その内容は、子宮頚がんの若年齢化を考慮して対象年齢を20歳まで引き下げ、子宮頚がんは2年に1度、子宮体がんは原則として検診対象からはずす、というものだった。はたしてこれで、子宮がん検診は万全と言えるのだろうか。

 本論に入る前に最近の子宮がんをめぐるポイントを整理してみると、

①子宮頚がん発生の若年齢化が進んでいる

②子宮頚がんと子宮体がんの発生比率は6対4で、体がんは明らかに増加傾向にある

③子宮頚がんの発生には高リスク・ヒトパピローマウイルス(HPV)がほぼ100%関わっている

④子宮頚がんの中で進行が早い頚部腺がんが20%を占めていること等々である。

  隔年検診では追いつかない

 まず隔年の細胞診検査だけで異形上皮、初期がんを発見し、子宮がんによる死亡を減らすことができるか考えてみよう。

 年に1度というが、検診を受ける月によっては2年近い間隔をおくこともある。たとえば去年4月に検診を受けた人が、今年は年度末近い2月に受けたとすると、その間隔は1年10か月になる。これが隔年検診の場合なら2年10か月の空白期間が生まれることになる。もし都合で一度検診の機会を逃してしまえば、次の検診は4年から4年10か月後ということになるわけだ。

子宮頚がんは扁平上皮がんと腺がんに分けられるが、頚部腺がんは近年増加傾向にあり、子宮頚部がんの20%を占めるようになった。頸部腺がんは進行が早く、発生1年以内に浸潤がんになるといわれている。隔年検診では、たとえ発見されたとしても、手遅れになる危険がある。

  HPV感染と子宮頚がんの発生

最近、子宮頚がんの発生にHPV感染がほぼ100%関係していることがわかってきた。HPVに関しては、群馬大学腫瘍センター長・鹿沼達哉先生が「診察室」(本紙8月号)に詳しく述べられている。

すなわち、HPVの中でも16型、18型を中心とする高リスクタイプの感染が、子宮頚がん発生に極めて深く係わっていることが明らかになっている。

すでに欧米では、子宮頚がん検診に高リスクHPV感染の検査をとりいれ、陽性者に対しては検診間隔を短くするシステムができている。

HPV感染検査もせず、子宮がん検診を一律に隔年に定めたいまのやり方は、「早期発見」という検診本来の目的に反している。

  特に2、30代の早期発見を目標に

 近年、20代の子宮頚がんが増加し問題になっている。初交の低年齢化に関係があると考えられている。性行為により高リスクHPVに感染することで、がん発生の危険性が高まるためである。

最近の統計では、中学3年生女子の性交経験率は10%、高校3年生女子では50%が性交を経験していた。欧米では、初交から3年経ったら、子宮頚がん検診を受けるよう勧告している。

若年者の頚部がんは、妊孕性を残すことが最大のポイントだ。少なくとも高度異形上皮から上皮内がんの段階で発見し、円錐切除術等の処置で妊娠できる能力を残すことが重要になる。それにはなんといっても早期発見が決め手になる。

 欧米では80%が検診を受けている

 子宮がん検診の受診率は全国平均で20%前後、80%前後の欧米とは大差がある。現実に毎年検診をうけている人のがん発見率は低く、はじめて検診を受けた人に異常がみつかることが多い。いかに受診者を増やすかということが最大の課題である。行政と現場の医療関係者と、大学の研究者が協力して、受診率向上を真剣に考えなければ、検診制度の存在そのものの意義が問われることになる。

 年1回、HPV感染検査も組み込んで

 以上、子宮がん検診の現状について述べてきたが、結論として、群馬県での理想的な検診を考えてみたい。

 欧米では、すでにHPV検査プラス細胞診による検診が主流となっており、日本においても、金沢市では年1回の細胞診とともに、希望者全員にHPV検査を施行している。群馬でも高リスクタイプのHPV感染検査と細胞診を組み合わせ、検診間隔は1年に一度に戻すことが望ましい。

子宮体がんに関しては、すでに述べたとおり近年増加傾向が続いており、今までどおり、希望者及び出血等の症状が認められる人には公費で検診扱いとすべきである。

HPV検査をとりいれた場合、陽性者がパニックに陥らないよう医療サイドからの十分なフォローアップが必要なことは言うまでもない。また、検診率の向上、とりわけ20代、30代の検診率をひきあげることが急務となっている。

 

■群馬保険医新聞 2007年9月号