年頭所感
群馬県保険医協会会長 木村 康
新年のご挨拶を申し上げます。
昨年は、政治の場でも社会生活においても大きな変革を予感させる落ち着かない一年だったように思います。
衆参両院で、自民・公明に過半数を与えた有権者の思いは、前政権に対する失望から、建設的な政治と確実な景気回復への期待にあったのだろうと思います。矢継ぎ早に繰り出される政治的なテーマには戸惑いを覚えます。
TPP、社会保障制度改革、消費増税、いずれも私たち保険医にとって死活問題として関わってくる大きな問題です。混合診療全面解禁、営利企業の医療への参入は、国民皆保険制度を根底から崩すに違いありません。そして社会保障制度の本質は、自らの健康は自ら守り維持する「自助」が基本だというのです。不足の部分を「共助」が支え、さらに困難な場合にようやく「公助」で補完するといいます。私たち国民に与えられた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」や「国がそれを保障する」という憲法の理念からも大きくかけ離れてしまうことを心配します。
消費増税の問題も深刻です。日本医師会をはじめ、医療界全体にとって、「損税」問題の解決が大きな課題となって迫って来ていると思われます。税制上の欠陥である「損税」は、税制で解決するのが合理的であり、医療の公益性と社会保障の観点から、医療にかかる消費税を免除する「ゼロ税率」の実現が最も現実的で整合性のある答えではないでしょうか。
さらに昨年末に成立し、世論を大きく揺れ動かした、特定秘密保護法には、医師としてということより、国民の一人として大変驚かされ、不安と恐ろしさを感じています。医療の分野では、私たち医師が「特定秘密の取扱者」になった場合、日常診療における患者やその家族とのやり取り、あるいはその記録などの個人情報を、国に強制的に提出させられる可能性はないのでしょうか。患者が公安関係や自衛隊に勤める人だったらどうなのでしょうか。法律の詳細な内容が不明というのでは、どう対処したら良いのか皆目見当がつかず、いろいろなことを考えてしまいます。
今年こそ、これらの諸問題が、世論を反映した形で確実な前進を遂げることを期待し、群馬県保険医協会として、医療関係者だけでなく、広く国民、県民の皆さんと協力しながら努力を積み重ねていきたいと思います。
本年も群馬県保険医協会をよろしくお願い致します。
■群馬保険医新聞2014年1月号