支払基金に明細を求める
平成18年診療報酬改定において各医療機関に詳細がわかる領収書の発行が義務づけられた。これは中医協における発言、「国民は医療の内容を知る権利があり、それによって医療の適正化、効率化を促す」がもとになっていると記憶している。
ならば医療機関が毎月提出するレセプトがきちんと処理されているかどうかを知ることも、医療費の効率化に必要なことではないだろうか。
しかしながら、毎月医療機関の口座に振り込まれる社保、国保の診療報酬の確認は支払額の合計金額のみであり、明細書が無い。これが現段階では通常の処理とのことである。
返戻や過誤調整があると、医療機関で請求した額から差異が生じる。それが正しく支払われているかどうかは、医療機関側から確認しようがない。
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医療費の効率化を掲げている社会保険庁は、診療報酬の振込みに対し、是非支払基金に「詳細のわかる振込通知書」の送付を義務づけるべきである。医療機関が望むと望まないとに関わらず、全医療機関へ明細書を発行すべきである。
レセプトオンライン化を考慮すれば、たいした労力も必要とせずに可能なことであろう。オンライン化による医療費効率化を図るという方針にも沿っている。(蛇足ではあるが、保険医協会はレセプトオンライン化の「義務化」に反対の立場を取っている。)
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中医協(平成19年発8月8日)において、委員である勝村氏はこう言っている。「…前回改定の方針には、医療費の個別単価などの詳細な内容がわかる明細書を発行すべきだと書いてあったわけです。つまり、それが実現しないと、国民はこの中医協の場で決めている診療報酬点数が、どういう価値観でつけられたのかや、医療を受けるたびにそれぞれの点数を実感として認識することができません。それをせずにして、国民の視点で診療報酬の議論をしていこうと言ったり、公聴会をしよう、パブコメをしようと言っても、もう一つ、結局、専門家の人たちばかりの公聴会とかパブコメになってしまうではないかと、明細書の発行をずっとお願いしてきたわけですが、前回改定前にこの社会保障審議会の中で『基本方針』とされていながらも、やはりまだ実現していなかった点というのは、今回のたたき台にはやはりきちんと入れてほしいという意味で、やり残していることから先にやるような視点なども、今後の議論のたたき台の中にぜひ入れていただきたいと思います。」
これをそのまま支払い基金と医療機関に置き換えると、「診療報酬振込みの個別単価などの詳細な内容がわかる明細書を発行すべきだと主張します。つまり、それが実現しないと、診療機関はこの支払基金の場で支払いを決めている診療報酬金額が、どういう価値観でつけられたのかや、支払いを受けるたびにそれぞれの報酬を実感として認識することができません。それをせずにして―中略―いただきたいと思います。」となる。
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昨今の杜撰な年金の管理や税金の無駄遣いを目の当たりにすると、支払基金の振込金額にも疑問を抱くことはごく当然で、宙に浮いたレセプトやレセプト不明問題などがあっても不思議ではない。
医療機関に明細のわかる領収書発行を義務化したのだから、当然支払基金からの診療報酬振込金額も患者、処置内容、振込金額のわかる明細書発行を義務化すべきである。この論拠には何か矛盾があるだろうか。(亀山 正)
■群馬保険医新聞8月号 歯科版