【第175回定例研究会】
医療機関のトラブル対策
―とくに増え続けるモンスターペイシェントに対して
◎誠実さと度胸で対応、第三者介入で冷静に
トラブルに対し冷静な対処が出来ず、あと後、不安や恐怖に怯えた方も多いのではないだろうか。医療機関のトラブル対策として2月28日、県生涯学習センターに大阪府保険医協会事務局次長・尾内康彦氏を招き、トラブルの中でも対患者、特にモンスターペイシェント対策に関して話を聞いた。
同氏は3年間で病院・診療所のトラブル相談を1000件以上受ける医療機関トラブル対策のスペシャリスト。話のポイントをいくつか挙げてみると…。
尾内康彦氏
〈講演要旨〉
1、以前は病院にモンスターペイシェント(以下、MP)が多かったが、現在は小さな診療所でもMPが発生するようになっており、MPを対岸の火事と受けとめている時代は終わった。
これには医療費の患者負担が昔に比べ大きくなり、病院・診療所を問わず、サービス向上を求める患者が多くなったという背景がある。求めるレベルの応えを得られなかった時、一部の患者がモンスター化する。
医療の発展とともに、患者の質も変わってきている。昔とは違うということを認識し診療しなければならない。MPが発生した背景を考えなければならないということだ。
2、発生したクレームが正当なクレームかどうかを確認・区別すること。何から始まったのかきっかけを確認する。大声をあげられたりすると委縮しがちだが、そのようなときにこそ冷静に状況を分析しなければならない。単なる誤解からきているクレームかもしれないからだ。怒りを収めたいがあまり、すぐに患者の思う通りに行動するのは危険である。
3、MPに対しての最大の武器は「誠実さ」と「度胸」。話術等のテクニックでその場のクレームを一時的に抑えられても、長い効果は期待できない。誠実に全ての患者に尽くしていればこそ、クレームに対しても懇切ていねいな説明ができる。患者が、その場限りの対応だと感じれば、手のつけられない状態になるだろう。また、誠実に対応してこそ、暴れているMPに立ち向かう「度胸」が持てる。
4、絶対に避けたいのは、「自分たちだけでなんとか解決しよう、できるはず」という思い込み。第三者が介入することにより、患者の意見を整理し、自身も冷静さを取り戻すことができて解決に結びつく。単独で処理をしようとした場合こそ、警察や弁護士のお世話になることが多い。
5、経営サイドがしっかりしていないと、従業員が大変な目に遭うということを念頭に置かなければならない。全スタッフでMP対策意識の統一を図り、備えることが重要である。
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MP対策をいくつか述べたが、もともと弱い立場の患者を「モンスター」と呼ぶのは本来好ましいものではないと考えている。
■群馬保険医新聞2009年3月号