【声】ビスフォスフォネート系薬剤の副作用を患者に伝えて

【2009. 4月 21日】

  

   ビスフォスフォネート系薬剤の副作用を患者に伝えて

                                前橋市 大国 仁
 3月16日に地上を離れ、国際宇宙ステーションで日本人初の長期滞在を行っている若田光一さん(45)は、現在、骨粗鬆症治療薬(ビスフォスフォネート=BP)を使って、骨量減少予防対策の実験(日米共同研究)をしているとのことです。
 無重量状態では1日2時間運動して骨に負荷をかけても、骨粗鬆症患者の10倍の速さで骨密度が減ってしまうため、短期間で薬効が調べられるそうです。しかし過酷な3カ月の実験ですから何が起こるかわかりません。
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 BP剤使用患者に抜歯その他の歯科治療をすると、難治性の顎骨骨髄炎や顎骨壊死を起こすことがあります。大腿骨・椎骨、その他全身の骨には全てプラスに作用するのに、なぜ顎骨だけマイナスに作用するのか、原因はまだはっきりとはわかっていません。
 BP剤の使用を確認し、可能性を患者に説明し、同意を得てから歯科処置を行うようにしていますが、いくら説明責任を果たしたとしても、もし自分の患者が…と思うと、歯科医は通常の抜歯でも今まで通りとはいかず、慎重にならざるを得ません。抜歯だけでなく、入れ歯の当たりによる潰瘍から顎骨壊死が起こったという症例も報告されています。
 BP剤を骨粗鬆症や寝たきり予防の特効薬とするのはよくわかります。「きわめて有用な薬である」からです。ですが「副作用はどんな薬にもある。僅かな発現頻度であるから」と簡単に片付けない方が良いと思います。
 アメリカでは相当な額の訴訟問題に発展しています。年内を目処に日本でのガイドラインが出される予定と聞きます。「作った者」「認可した者」「投薬した者」「処置した者」すべてが意思疎通をはかり、システムとしてのリスク管理ができれば最良と思います。
 現時点やれることとしては[BP剤の注意記載の義務化]でも良いでしょう。歯科領域特有の副作用の可能性について説明がなされ、投薬が開始されるようになることを望みます。
 ○因果関係がはっきりしてい ない。
 ○なぜ顎骨だけに起こるのか 原因がわからない。
 ○休薬措置も治療法も確立さ れていない。
 まだ不確定要素が多過ぎるので、早急に対応を考えるべき薬剤だと思います。或いはもう少し待つのも良いかもしれません。窒素概念ではない新しいBP剤の開発も進行中だそうですので。(大谷歯科医院)

■群馬保険医新聞2009年4月号