■第39回定期総会議案書

【2009. 7月 24日】

 ■第39回定期総会議案書

 ◎2008年度の活動をふりかえって

 2008年夏、米国発のサブプライム問題を引き金に世界は空前の景気悪化、同時不況に陥った。
自動車、デジタル家電など対米輸出に偏った産業構造の日本経済は、世界でも目立って甚大な影響を蒙り、未曾有の経済不況に陥った。経営不振に苦しむ企業は、派遣切り、リストラ、賃金カットを行い、雇用不安が広がった。
 〈構造改革〉路線により年金、医療、介護など社会保障制度が長期にわたり切り下げられていることと相まって、貧困と生活不安が国民生活をさいなみ、うつ病の蔓延、自殺者が年間三万人を越える等、事態は深刻化している。
          *
 世界の「工場」が中国、インドなど新興諸国に移ってすでに久しい。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)が台頭した新たな国際環境に対し、先進諸国は経済の差別化・ブランド化で対応、内政では社会保障を拡充して世界経済の変動に臨んでいる。しかし先進国の中で唯一日本のみが構造改革の名の下で人件費と社会保障とを切り下げ、無理やり新興諸国と張り合う道をとり続けている。
          *
  2008年秋、米国大統領選挙でバラク・オバマ氏が当選した。イラクからの米軍撤収、核兵器の廃絶、医療保険の充実などを公約とした氏の勝利を「レーガン以来30年も続いた新自由主義は挫折した」と歓迎する国際的世論が巻き起こった。
 日本では10月、社会保険庁が解体され、公法人の全国健康保険協会が発足した。政管健保の名称から政府の文字が消え「協会けんぽ」となった。社会保障は本来、国の責任で行われるべきものだが、これにより医療保険は都道府県単位に編成されたのである。
 改定医療法にもとづいて〈医療改革〉は着実に進行している。医療安全対策、医療機能情報の提供の義務化など、行政主導による新たな責任と義務が課せられ医療機関を慌てさせた。今後は2011年、レセプトのオンライン請求が義務化される。2012年には介護療養型医療施設が全廃される予定である。
          *
 2008年、群馬県保険医協会は、会員の協力により医療費の総枠拡大、社会保障費二2200億円削減の中止などを国に要請してきた。また県民に対し医療、社会保障について共に考えることを呼びかけてきた。
 第39回定期総会にあたり昨年度の活動を振り返ってみる。

《医療保険制度改善運動》
・後期高齢者医療制度/中止・撤回を求める署名運動を08年5月と8月(患者向けリーフレット・ポケットティッシュ配布)に実施。会員152人の協力で、4736筆の署名を10月国会に提出した。12月には患者・医療団体合同の日比谷野音集会に参加。
・10月19日の中央行動「STOP! 医療・介護崩壊、増やせ社会保障費!」に五人参加。
・11月、医師増員を求める医師・医学生の請願署名運動に賛同、会員に協力を呼びかけた。
・レセプトオンライン義務化/12月に患者むけパンフレットを配布、23医院が待合室での活用に協力。神奈川協会が立ちあげた撤回訴訟(〇九年一月提訴)の原告団参加を呼びかけ群馬から15人が参加した。三月の国会内報告会にも参加した。
・09年4月、医療費総枠拡大・省令による各種義務化の撤回を求めて、首相と厚労相に要請文を送った。
●研究部
・08年改定で新設された「在宅療養支援歯科診療所」の施設基準届出に必要な講習会として在宅歯科医療講習会を開催した。
 9月4日、在宅歯科医療講習会①(35人参加)
   講師/山川治先生(前橋赤十字病院非常勤歯科医師)
      石原宏一先生(日本口腔外科学会会員)
 10月2日、在宅歯科医療講習会②(28人参加)
講師/金子明久先生(埼玉県保険医協会副理事長)
・10月、保団連医療研究集会(宮城)に参加し発表した。
・1月以降は、昨年に引き続き「医療崩壊」をテーマに研究会を開催した。
 1月22日(40人参加)
  「前橋赤十字病院における病診連携」
  講師/宮﨑瑞穗先生(前橋赤十字病院院長)
     須賀一夫氏(同 地域医療連携課長)
 2月28日(48人参加)
 「医療機関のトラブル対策」
 講師/尾内康彦氏(大阪府保険医協会事務局次長)
 3月19日(24人参加)
 「本当の医療崩壊はこれから始まる!」
 講師/真鍋重夫先生(県健康づくり財団医療局長)
・2月、研究会「歯科エックス線画像と個人識別」を開催。(102人参加)
 講師/小菅栄子先生(群馬県検視警察医)
    青木孝文教授(東北大学情報科学研究科)
●地域対策部
・「健康テレホンサービス」は23年目を迎えた。市町村広報でのプログラム紹介も継続され、年間利用度数は2512本。上毛新聞社のホームページ raijin.com に健康講話を提供、ウェブ上の健康相談も継続して取り組んだ。モニター通信は通巻二四五号を数えた。
・電話で直接対応する「健康相談」を月2回開催した。
・食生活を考える会は特定保健用食品(トクホ)をテーマに毎月例会を開催した。
●審査指導対策部
・個別指導の呼び出し、レセプトの返戻への対応、また請求方法など、会員からの相談に応えた。
・11月、社保庁解体により新たに開設された厚生局群馬
 事務所を訪問。
・12月、会員からの要望「診療報酬の振込時に患者ごと  
 に金額が分かる振込み明細書」実現のため、県支払基金
 と県国保連を訪問、懇談した。
・4月、個別指導時の録音や弁護士の帯同等に関し、厚生局群馬事務所に要望書を提出。訪問、懇談した。
●経営対策部
・雇用問題、開業相談、税務調査に関する相談にあわせ、「医院経営と雇用管理」「保険医の経営と税務」「保険医の税務調査」「新規開業医の手引き」など保団連発行の冊子を普及した。
●広報部
・隔月開催する部会で主要テーマを検討。「医療崩壊」を年間テーマとし、小児科医引きあげ問題、産科医逮捕事件、特定健診制度、ワクチン行政、総合医、臨床研修制度見直しなどについて各方面の声を集めた。
●共済部
・各種共済制度は健全に運用された。保険医年金は加入者518人となり、126人に年金を給付中。休業保障は35人の病気休業を保障。2529万円を給付した。グループ生命保険の加入者は673人となり、今期3人、6000万円の死亡保険金を給付。また前年度保険料の51.47%を配当還元した。
・新保険業法の施行により「保険医休業保障」など助け合いを目的とする自主共済が不当な規制を受けている問題に対しては、同法の適用除外を求める請願署名活動を1月に実施し、集約した544筆を県内出身の国会議員を通して衆参両院議長に提出した。
●文化部
・第17回保険医写真展は7月9日~17日まで開催、自由部門86点、課題部門「はたらく」17点、撮影旅行部門19点の応募があった。
・第8回撮影バス旅行(八千穂高原)を6月1日に実施、20人が参加した。
●会員拡大部
・協会活動の宣伝に重点を置き、新規開業医に案内、年四回の歯科版発行に併せ全県の開業医に群馬保険医新聞を配布しPRに努めた。
・理事、事務局が協力して会員拡大を推進した。

《歯科会》
・歯科会を毎月開催し、歯科版を季刊発行した。
・11月、第15回体験アイデア発表交流会を開催した。
スタッフ発表六演題。特別講演は王宝禮先生「歯科衛生士に必要なお薬、サプリメントの知識」。参加110人。
・3月、ビスフォスフォネート系薬剤による顎骨壊死問題に対し、ビスフォスフォネート委員会が発足。六月保団連代議員会にて同問題に関し発言する予定。
・4月、「スーパーボンド実習付き説明会」を開催。
講師/サンメディカル(株)営業部。参加32人。
・保団連の若手医師・歯科医師の集い(大阪)に参加した。

《院内だより共同編集事業》
・病気についての指導、患者とのコミュニケーションをはかるため院内だよりを隔月発行、通巻134号を数えた。22医療機関が参加、四月に編集会議を開催し年間の執筆テーマを検討している。
 2009年度の活動方針

 経済の深刻な行き詰まりに直面し、ようやく〈構造改革〉路線の失敗を見直す機運が出てきた。医療費削減のみを追求する現在の〈医療改革〉は、至急見直しが必要であり、低医療費政策をやめ、社会保障充実の方向に国の進路を転換しなければならない。
 社会保障分野への投資は消費を高め、雇用を生み出し、日本経済を牽引する、と多くの識者が主張している。わが国の医療制度は医療人のみならず国民の誇りでもある。これを死滅させることなく、世界のモデルとして普及するためにもわれわれは知恵を出し合わなくてはならない。   
 かくて2009年度は、県内各界の人々、行政、議員らと医療制度について語り合う年としたい。社会保障制度を守り育てる立場から、低医療費政策の誤りと弊害を知らせ、あるべき医療制度を模索する活動に取り組んでいく。
 県内の医師・歯科医師を結束させ、良質な診療を行っていれば報われる環境づくりを目指す。
 そのために会員の拡大に務め、理事、世話人の増員、事務局も刷新し執行体制の強化を図る。

 今年度は次の課題に取り組んでいく。
1、医療費削減政策の限界と破綻した現状を明らかにし、
 県民に知らせる。
1、後期高齢者医療制度に反対し、廃止を求める。
1、レセプトオンライン義務化に反対する。
1、登録医制、診療報酬の定額払い制に反対する。
1、保険外併用療養(混合診療)の拡大に反対する。
1、保険診療で経営が安定し、良質の医療が確保できる
 診療報酬を求めて運動する。
1、「歯科崩壊」の現状解明と保険請求の透明性の拡大
 を重視した活動を行う。
1、物価、人件費の高騰にみあった「一点単価」の引き
 上げを要求する。
1、保険診療に関する情報収集に努め、医学的常識と医
 師の裁量を尊重した審査、指導、レセプト審査の公開
 を要求する。
1、女性医師支援の運動を継続する。
1、女性の医師・歯科医師交流会を計画する。
1、ヒブワクチンの定期予防接種早期導入を県、市町村
 に要望する。
1、健康テレホン、院内だより、食生活を考える会の活
 動を継続する。
1、各種共済制度の普及をすすめる。
1、平和を守る活動に取り組み、「核戦争防止群馬県医
 師の会」を支援する。