【論壇】ジェネリック医薬品について

【2009. 9月 24日】

【論壇】 
●ジェネリック医薬品について

先発品との違いを明確に
 厚労省の発表では、平成15年度の国民医療費は約31兆5000億円だった。65歳以上が約50%を占めており、このまま増え続けると、平成37年には現在の倍以上、69兆円に達すると見込まれている。
 巨額な医療費が国の財政を圧迫しつつある中、医療費抑制対策のひとつとして、先発医薬品の20~70%の価格のジェネリック医薬品が注目されている。平成18年度の診療報酬改定、薬価制度改定で、ジェネリック医薬品の使用促進対策が検討された。
 具体的には、全国の独立行政法人国立病院機構管轄病院に対する使用促進、診療報酬における処方加算等の導入、ジェネリック医薬品の処方使用促進のための処方箋様式の変更などである。厚労省は、今年7月1日付で、使用促進規定の周知徹底を求める通知を全国の地方厚生局に出している。

 ◎使用実態
 我が国の主なジェネリック医薬品製造業者の売上高は、平成12年度は約565億円だが、平成16年度には約872億円と、わずか4年で54%もの売上増となった。世界各国のジェネリック医薬品の市場シェアを数量ベースで比較すると、日本は平成11年度に10.8%だったものが、平成15年度には16.8%までのびている。アメリカ、イギリスでは5割を超え、ドイツも4割となっている。これらの国々と比較すると日本はまだ低い水準にある。
 金額ベースのシェアでは、日本5.2%、アメリカ12%、イギリス23.7%、ドイツ22.7%となっており、数量シェアに比して低い割合となった。このデータからも安価なジェネリック医薬品の使用促進は、患者負担の軽減や医療保険財政の改善に役立つと報告されている。

 ◎使用されない理由
 平成15年、保団連はジェネリック医薬品の使用実態・意識調査を実施した。「先発医薬品と変わりがない=41.1%」「有効性について先発医薬品より劣る=17.3%」「先発医薬品より副作用頻度が高い=4.0%」の回答があった。先発医薬品とジェネリック医薬品は、添加剤や未知混入物に違いがあるので、治療効果や副作用についても種々報告されている。
 ジェネリック医薬品では「有効性の試験」はあるが「安全性の試験」はない。そのため安全性のデータが存在せず、製品情報も極端に少ない。「有効性の試験」といっても二つの医薬品が完全に同じであると言い切れるものではなく、統計学的に差がないというだけである。
 アメリカでは「ジェネリック医薬品と先発医薬品は同等ではない」ことを前提に議論が始まり、それぞれの医薬品にランク付けを行っている。日本ではTVコマーシャルのごとく「ジェネリック医薬品と先発医薬品は同等である」ことが前提になっている。こうした国による対応の違いも、大きな誤解や混乱を招く要因となっている。
 
 ◎使用促進への課題
 「個別指導の場を利用してジェネリック医薬品の使用徹底を図るのは問題」として、埼玉県保険医協会が声明を発表した。ジェネリック医薬品の安全性と有効性が確認され、情報提供や安定供給の体制が確立していれば使用促進も納得がゆく。しかし一般名は同じでも、先発医薬品とジェネリック医薬品では、適応に違いがある。ジェネリック医薬品を処方すると適応外処方になることもある。
 様々な問題を抱えるジェネリック医薬品について、国民が正しく理解できるよう、厚労省、医療現場、後発企業は一体となって議論を重ね、環境を整備していくことが、これからの日本の医療のあり方を考える上でも重要である。(副会長・太田美つ子)

■群馬保険医新聞2009年9月号