【特集】働きやすい職場づくり

【2009. 9月 24日】

 働きやすい職場づくり

 女性医師支援はこんなふうに…

   厚生労働科学研究班がパンフレット作成
 
 今春の医師国家試験合格者の34.2%が女性だった。これからも女性医師は増えつづけると予想されている。特に医師不足が深刻な産婦人科は女性医師が多く、20歳代に限ってみれば約七割を占めている。しかしいったん出産・子育てなどで離職すると復職できないケースが多く、産婦人科医全体で女性医師が占める割合は23.5%に激減する。これが産婦人科医不足の大きな要因にもなっている。子育てをしながら働きつづけることができる職場環境づくりが急がれる。
 何から始めたらいいのか…女性医師の離職防止策を実践している病院(主に産婦人科)での調査をもとに、日本産婦人科医会常任理事の安達知子氏(愛育病院産婦人科部長)らがA4判6ページのパンフレットを作成した。
 安達氏は「他に先駆けて女性医師支援策を実践している好事例を集め、モデルケースとして示した。今回は復職支援ではなく、今働いている人に、妊娠・出産・育児中でも働き続けてもらうという点に絞った(m3.com)」と語っている。

新政権の医療政策に期待

              会長 柳川洋子

 ◎パンフレットを見て
 まず表紙に、「子育て中の女性医師に優しい職場は、勤務する全ての人が働きやすい職場です」というサブタイトルがありますが、まさに目標とすべき職場環境を言い表していると思います。
 
 ◎チーム医療の導入
 ステップ1の「勤務環境の見直し」で示されたチーム制は非常に重要だと思います。交代勤務、変則勤務を導入して過重労働となっている勤務環境を改善できれば患者の安全性にもつながるでしょう。
 それには医師の確保という難問が立ちはだかっていますが、地域の開業医や退職した医師をチームに加える際には、交代医師の身分を保証すること、医療の質と安全の保持、医療事故に対する保険なども明確にする必要があると思います。
 また、当直、オンコールに正当な対価を支払うこと、労働時間の改善は今すぐにでも取りかかるべきでしょう。経験の浅いアルバイトの医師が、実力もあり実労働時間も多い当直の勤務医より時間給がずっと高いという現象は、勤務医の意欲を殺ぐことになりますから、さらなる検討が必要です。
 
 ◎保育は柔軟な対応を
 ステップ2の妊娠、出産、育児中の女性医師への具体的支援では、院内保育所が利用しやすいシステムかを見直すという内容です。
 医師の仕事は予定通りにいかないのがむしろ普通です。保育時間は柔軟に対応することを求められますが、保育士の確保、保育士の労働時間の問題もありますから、やはり人手とお金がかかることと覚悟してかかる必要があるでしょう。
 入所時期を年度初めに限るなどというのはお役所仕事と言わざるを得ず、是非改めていただきたい。病児保育も前日予約が条件では、利用しづらいと思います。子どもというものは前日まで元気でも、急な発病で今日の予定が全部ご破算になるということが多いのです。何とかやりくりをして対応する姿勢が必要です。
 勤務形態の工夫も必要とされていることばかりで、是非実現出来るよう努力したいことです。一定期間の当直免除や短時間正規雇用には、不満を持つ医師もいます。実際にこの制度を活用した女性医師をいびり出した話を聞いたことがあります。結局は自分の首を絞めることになるのですから、長い目と広い心で若い医師を育ててあげてください。

 ◎不公平感を感じさせない
 ステップ3にある、周りのスタッフに不公平感を感じさせない配慮も欠かせません。定期的な職場での啓蒙、検討会等で理解を得る機会を作るのも院長の重要な仕事です。また、短期間でも男性職員が育児休暇を取るようにしてみてはどうでしょうか。子育ては、社会全体で支援するのだという共感が得られることと思います。
                                 *
 「このパンフレットは夢のようで、医療費抑制政策のもとでは、絵に描いた餅」という声も聞こえてきます。しかし、どうやっても実現しなければという切実な思いで、改善に向けてスタートしましょう。新政権の、医療費抑制政策の「方向転換」に期待したいと思います。

 

国の女性医師支援事業
 
    予算化されても使われず…
 
 上記パンフレットにも紹介された補助金事業だが、7月に行われた保団連女性部(板井八重子部長)と厚労省医政局担当事務官との懇談で、昨年度の予算執行率の低さが目を引いた。
 厚労省の女性医師支援対策として、平成20年度は約9億8000万円が予算化されたが、「医師交代勤務等導入促進事業」は予算執行率が18.6%、「復職支援事業」では執行率7.4%という低さだった。 
 事業の負担割合が国、都道府県、事業者それぞれ3分の1になっていることから、「国の負担をもっとあげられないか」と指摘する声も。21年度には「短時間正規雇用支援事業」も加わり、予算額は32億3600万円と急増しているが、もっと使われる制度への工夫が必要である。

 ◎群馬県では…
 同事業について、群馬県は全国に先駆けて取り組んでいた。今年6月現在、「交代勤務」支援事業については2病院が、「短時間正規雇用」では3病院が申請している。
 「再就業支援事業」については、これまでも本紙で紹介してきたが、平成18年度から事業を開始し、内科2、麻酔科1、整形外科1、計4人の女性医師が教育研修、就業援助を受けて現場に復帰した。
 これらの事業についての問いあわせは、群馬県健康福祉部医務課(医師確保対策室)電話027・226・2540まで。

婦人科医らがモデルケースとして作ったパンフレット                       http://www.jaog.or.jp/diagram/notes/jyoseiDR_2008.pdf

 ■群馬保険医新聞2009年9月号