新政権に期待
民主党308議席、自民党119議席、8月の総選挙は民主党の大勝、自民党の惨敗に終わった。この結果、自民党は1955年の結党以来守ってきた第一党の座から転落、民主党を軸にした社民党、国民新党の連立政権が発足した。
日本を取り巻く環境は激変している。中国の興隆を受け、日本のプレゼンスは低下し、少子高齢化や若年層を中心とした格差拡大は国の根幹を揺るがしている。政権交代により、日本の政治はようやく再出発しようとしている。さて、日本は前へ進めるのだろうか。
身軽さが身上
今回の総選挙は政治の世界に地殻変動を起こした。しかしそれで終わりではない。あらゆる「自民党的な権威主義と便宜主義」に国民の目が注がれている。霞ヶ関しかり、財界しかり。官僚も財界首脳もこれから構造的な変革の渦に巻きこまれていくだろう。今度の政変は社会全体の変動の端緒である。
自民党政治は「一国一城の主」が群雄割拠し、拒否権を乱発したりしたために、なかなか物事が進みにくかった。それに対して民主党は、執行部=鳩山、小沢、菅、岡田=の4人が「これで行こう」と決めれば、すみやかに行動できる。
日本の医療政策は当初から医療体制の統制を目指す厚労省と、医師の裁量の自由を確保したいとする医師会との対立で特徴づけられてきた。また歯科医療を方向づける厚労省の歯科関連官僚は、人数も少なく、局長以上の高級官僚はいない。
脱官僚政治を掲げる民主党の政策は戦略会議で決定される。その段階で、いかに国民の利になる法案ができるかが焦点となる。
歯科医療改革
民主党マニフェストから歯科部門を見てみたい。
まず歯科医療改革として、「歯の健康の保持の推進に関する法律を成立させる」とある。いわゆる「口腔保健法」である。
また身体障害者福祉法を改正し、身障者手帳の交付申請に必要な診断書を歯科医師にも認めること、寝たきりの高齢者や障害者が歯科検診・医療を受けられるようにするとしている。
歯科技工物については、安価な輸入品が増加していることから品質管理体制を見直し、歯科技工士の技術料や歯科基本料の見直しを検討すると表明している。
点数の大幅アップを
現行の租税特別法は診療報酬を上げる代わりに特別措置として26条が適用されてきた。社会保険診療報酬に対する事業非課税の特別措置が撤廃されると、所得1000万円の場合は約50万円、1500万円の場合で約75万円の増税になる。
歯科医療は一般医療と違い、個人経営の診療所が全体の9割を超えている。その数およそ七万。都市部であれば、どこの駅前でもすぐに歯科診療所の看板を見つけることができる。コンビニより多い。
だが、「小泉構造改革」まっただなかの2006年度診療報酬改定や、長引く経済不況、価格弾力性の強い歯科医療の特徴などが互いに作用増幅して、歯科医療は今まさに崩壊の危機にさらされている。20%の歯科医がワーキングプアだ。歯科技工士、歯科衛生士学校は定員割れの状態で、歯科大学、大学歯学部の経営難も深刻さを増している。
新政権に望むのは、保険点数の大幅アップと、歯科受給問題の解決だ。アメリカ並みの一日20人前後の患者で経営が成り立つ保険点数の引き上げが必要だ。
(高崎市・深井歯科医院)
■群馬保険医新聞2009年10月号