【論壇】新政権に期待する
◆ 政権交代
民主党が308議席を獲得して圧勝した。自民党の惨敗となった総選挙。この歴史的な出来事に、自民党議員は「何か分からない風が吹いて来て…」と口にする。この風こそ現政権に「ノー」をつきつけた国民の意思表示だと思う。
「ばらまきだ」「財源のことを考えない無責任な政策だ」等々、自公から批判を浴びせられ続けた民主党のマニフェスト。この内容を吟味してみると、実は私たちがこれまで取り組んできた大きなテーマがかなりの部分含まれていることに気づく。
・後期高齢者医療制度の廃止
・国保への財政支援の強化
・レセプトオンライン義務化の撤回
・地域医療確保の診療報酬引き上げ
・医師養成の質と数の拡充
・歯の健康保持推進法の制定
・療養病床廃止削減計画の中止
・自治体病院、公的病院の存続
・障害者自立支援法の廃止
・医療計画の抜本見直し 等々
これらはどれ一つとっても、国民の側だけでなく我々保険医を取り巻く環境の整備・改善にもつながる。自公の押し進めて来た社会保障政策の矛盾を鋭く指摘し、これから進むべき明るい方向を示しているように思われる。
各項目の具体的内容については別に譲るが、9月9日発表された民主・社民・国民新党三党の「連立政権樹立に当たっての政策合意」には、社会保障制度の充実として、2200億円削減の中止や後期高齢者医療制度の廃止が明記された。9月17日、長妻昭厚労相は初閣議後の記者会見でも後期高齢者医療制度廃止を表明した。
マニフェストに掲げられた新政権の社会保障「改革」がどう具体化されるのか、私たちは監視を怠らず、これからも積極的に提言していくことが必要だ。
◆5分ルール
ここで特に言いたいのは、外来管理加算5分ルールのこと。08年4月の診療報酬改定によって、再診時の外来管理加算算定には「診察・説明には5分以上の時間が必要」という要件が導入された。外来のスタイルは診療科、疾患によって一様ではない。また開業医が作り上げて来た患者との信頼関係を背景に、さまざまな診察の形があるのは当然である。画一的な時間設定は現場を無視した机上の空論の典型ではないだろうか。
「医療の質は時間で計れない」という多くの医療人の声に耳を傾け、このルールの撤廃を求めたい。
◆休業保障制度
もうひとつ、忘れてならないのは私たちの誇る共済制度「休業保障制度」のことである。06年に施行された新保険業法によって、その存続が風前の灯になっている。純粋な助け合い精神で運営してきた私たちの共済制度が、アメリカや財界からの要求で保険市場の標的にされている。保団連は直ちに対策を講じ、全国的な行動を展開しているが、先行きは楽観できない。
昨年3月、新保険業法の経過措置延長を求める法案が民主党など四野党共同で提出された。今や与党となった民主政権に、あらためて共済制度の正当な評価と、制度存続に向けての英断をもって納得のいくゴールを期待したい。
◆大きなチャンス
私たちは国民の合意を背景に、医師会、歯科医師会との連携をこれまで以上に強めたい。また新政権に対しては、新しい感覚で大胆かつ緻密な展開を期待したい。
これでもか、これでもかとズタズタにされてきた地域医療を立て直すチャンスである。私たちも今まで以上に粘り強く着実に行動する決意である。そして大幅な診療報酬の引き上げと、患者負担の軽減を目指して運動の輪を広げなくてはと心を新たにしている。(副会長・木村 康)
■群馬保険医新聞2009年10月号