【論壇】2009年をふり返って

【2009. 12月 15日】

【論壇】2009年をふり返って

    
    三つのチェンジ!
     
                           小板橋 毅
 
 2009年をふり返ってみます。3つのチェンジの年でした。
 まず世界規模でのチェンジは、オバマ合衆国大統領の就任と核廃絶宣言、ノーベル平和賞の受賞決定です。国内でのチェンジは衆議院議員選挙での民主党の大勝利と鳩山民主党政権の誕生でした。そして、群馬県保険医協会内の大きなチェンジは、全国の保険医協会に先駆けて初の女性会長が誕生したことです。

 オバマ大統領の就任
 1月20日、アメリカ合衆国大統領就任式でバラク・フセイン・オバマ・ジュニア氏は建国以来初めての有色人種出身の米国大統領となりました。08年初頭から始まった大統領予備選挙でヒラリー・クリントンとの熾烈な選挙戦に勝利し、同年8月28日には民主党大統領候補指名受諾演説をおこないました。
 この頃、私が最も心配したのはオバマ暗殺の危険が迫っていることでした。歴史的にみても、米国の最右翼勢力はいつも暗殺という手段で対抗勢力を抹殺してきました。昔のリンカーン大統領暗殺まで遡らずとも、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件は、医学部一年生であった私に強烈なショックを与え、生々しい記憶として残っています。それに続くロバート・ケネディ暗殺やケネディ家暗殺ミステリーは米国の暗黒面を物語っています。
 敗戦国の少年に刷り込まれていた米国の民主主義先進国、裕福な自動車社会、電気冷蔵庫やテレビに代表される電化家庭、広い庭付きの邸宅、チョコレートやキャンディ、ステーキ等々、米国の素晴らしさを数々の暗殺記事が壊していったのです。
 今回は有色人種のオバマ候補が、美しい元ファースト レディで白人女性であるヒラリー・クリントンを選挙で打ち負かしています。さらに、共和党の白人候補ジョン・マケインと大統領選挙を戦っています。KKKをはじめ米国の白人右翼の暗殺標的として、オバマ氏は最優力であろうと私は慄えていました。
 しかし就任から11カ月経過した今も、オバマ大統領は元気に世界中を飛び回っています。4年間の大統領在任中は常に暗殺の脅威に曝されているとはいえ、右翼を怒らせる核廃棄宣言やイラク撤退発言および医療制度改革など、オバマ氏らしい勇気ある発言を続けています。このまま暗殺なしに職務を全う出来れば、人種差別が改善し米国の民主主義が発展をとげたと称賛したいと思います。
 プラハでの未来への核廃絶宣言に対して、10月9日ノルウェーのノーベル賞委員会はオバマ氏の「核なき世界」に向けた国際社会への働きかけを評価してノーベル平和賞を授与すると発表しました。未来への希望を語ることや願望の宣言がノーベル平和賞に値するのかと奇異に思いましたが、世界唯一の原爆投下命令を下したトルーマンと同じ米国の第44代大統領が「核なき世界を目指す」と宣言することには重大な価値があると考えます。

 鳩山政権の誕生
 8月30日の衆議院選挙で民主党が単独過半数を上回る当選者を獲得、自民党は惨敗して大勢の有名議員が落選し野党に転落しました。鳩山党首を総理大臣にして三党合意を基盤に連立内閣を組閣。従来の自民党政治をチェンジしたさまざまな変革が期待されています。
 まず、毎年国の予算から社会保障費2200億円を削減する方針が中止されます。今の医療崩壊を食い止め立て直すには、この政策変更に加えて、国費充当が必要です。福祉予算の基礎的考え方を経済一辺倒から国民生活中心に切り替えなければなりません。
 私たちは民主党議員を中心に、国会議員との合同勉強会を頻回に開催することが必要です。特に医療政策について重要な役割をになう長妻厚生労働大臣に対しては、保団連や保険医協会から強力に意見発信しつづけていくことが大きな意味をもってきます。
 長妻大臣は1960(昭和35)年、東京練馬の生まれ。都立練馬高校、慶応大学法学部卒。NECに入社してコンピュータの営業、次に日本経済ビジネス誌記者として金融、行政、政治を担当しました。政界入りは2000年(平成12)年で、現在衆議院議員四期目です。年金に詳しいが医療には詳しくないと言われています。

 柳川会長に期待
 7月16日群馬県保険医協会総会にて柳川洋子先生が新会長に選出されました。全国初の女性保険医協会長です。柳川先生は08年11月、副会長として関東甲信越ブロック会長会議に出席しました。他県会長の評価も高く、理事の間でも次期会長候補として自然に受容されていました。
 会長就任早々、9月には鶴谷群馬県医師会長、川越群馬県歯科医師会長と会談して友好協力関係の強化に努め、また県内の医師、歯科医師に入会を積極的に働きかけています。また政界にもアプローチして、12月には群馬選出の衆議院議員・宮崎岳志氏、三宅雪子氏との懇談会を計画しました。
 歯科医療崩壊対策の根幹は、保険診療の充実と点数倍増です。一人の歯科医師が欧米なみに1日10人診療すれば採算がとれる点数設定が必要です。そう考えれば、歯科医師数も決して過剰とは言えません。
 保険医協会の休業保障共済制度については、これまでどおり存続できる可能性が出てきました。引き続き国会への強い働きかけが必要です。
 女性医師と女性歯科医師が安心して働ける労働環境を形成する運動は柳川会長の最も得意とする分野です。今後の発展が期待されます。
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 2010年、群馬県保険医協会は柳川会長の下、地域医療再生のために国会議員を交えたシンポジウムや講演会、市民参加型討論会などを計画していきます。さらに、政策決定に直結した議員たちには医療現場の声を次々と届けていくつもりです。(前会長)
■群馬保険医新聞 2009年12月号