【論壇】 歯科の診療報酬改定― 初再診料を医科並みに

【2010. 2月 18日】

【論壇】
 歯科の診療報酬改定……初再診料を医科並みに

 
 ◎実質ゼロ改定
 政府は、2010年度の診療報酬改定率を総額で0.19%引き上げる方針を決めた。プラス改定は2000年以来、10年ぶりとアピールしているが、2006年の改定でマイナス3.19%が実施されたことから見れば、今回の引き上げ率はあまりにも低い。
 小泉政権のとった医療費削減政策は病院、診療所の経営を圧迫し、救急医療等に携わる医師たちに過酷な勤務体制を強いている。歯科医療においては「ワーキングプア」を生み出した。
 政権交代で、民主党はこれ以上の医療費削減はしないと表明、診療報酬総額アップを政府に求めた。そして出てきたプラス0.19%だが、実態は財務省のいうゼロ改定だと指摘する声がある。後発品の普及に関連して、オモテには出ていない薬価の引き下げが明らかになったからだ。それを含めれば、引き上げ率は0.027%と限りなくゼロに近い。

 

 ◎歯科医療は限界
 歯科の診療報酬改定は、本体部分の内訳を比較すると医科の1.74%に対して2.09%と医科改定率を上回った。これは32年ぶりのことである。あまりにもひどい歯科医療の実情が認められたということだろう。
 しかし今回確保された財源5700億円のうち、歯科に当てられるのは600億円で、一診療所あたり月5000円と計算する人もいる。

 

 ◎技工士の育成が急務
 中央社会医療協議会(中医協)が1月15日にパブリックコメントの募集を始めた。その検討材料となる「現時点の骨子」から、歯科医療についての項目を拾ってみたい。
 まず、「歯科医療の充実について」。

1、障害者の歯科治療を受け入れている病院歯科等の機能評価…障害者の治療は一般の患者に比べて本人と家族に対する説明、協力が必要だ。

2、歯科疾患や義歯の管理に係る情報提供の見直し…過去二回の改定で文書による情報提供が増えている。口頭でも十分という項目が多い。文書作成に時間がかかり、本来の診療時間に影響を与えていることが問題になっている。

3、歯科技工士を活用する歯科医療機関の評価…高齢化社会で義歯やブリッジの需要は増えている。質の良い補綴物を提供するには歯科技工士の技術と労働への正当な評価が必要だ。報酬のあまりの低さに歯科技工士を雇用できない歯科医院が多い。職を捨てるフリーの歯科技工士もあとを絶たない。技工士の確保、育成は焦眉の問題だ。

4、歯科医療技術評価の検討…重要度、難易度、必要時間にかかわらず歯科固有の技術は長いあいだ放置されていた。日常診療でおこなわれる技術の正当な引き上げを求めたい。
 

 
 ◎在宅歯科診療の見直し
 また、「在宅歯科医療の推進について」の項では、
1、歯科訪問診療の評価体系をわかりやすいものにする
2、在宅歯科医療のきめこまかい歯科疾患管理を評価
3、在宅診療が困難な患者を受け入れる病院歯科等の機能を評価
4、在宅診療における情報提供、地域連携の評価を見直す
などが示された。

 …需要の多い在宅歯科治療が敬遠されてきたのはなぜか。設備、機材、人員、時間的負担等が診療報酬に反映されていなかったからである。
   

 改定のたびに現場はふりまわされている。改定内容が3月後半に発表され、4月1日実施ではどうしても時間的な無理がある。歯科の場合、管理指導における書類形式が変わるごとに在庫を破棄することになり、エコにも反する。
 現場の混乱を招くような改定ではなく、今回は初診料と再診料を医科並みにするだけの改定を望みたい。(副会長・小山 敦)

 

■群馬保険医新聞 2010年2月号