女性医師の働く環境を考える/若き女医への応援歌

【2010. 3月 17日】

 ●女性医師の働く環境を考える
    若き女医への応援歌 -日経メディカル1月号を読んで-

                                 高崎市 西野仁美

 日経メディカルに「女医は医療を救えるか?」という刺激的なタイトルの特集が掲載されました。今回、その記事を元に、感想を投稿するようにというご依頼をいただきました。
 私(小児科)は高崎市郊外で夫(内科)と共に開業しつつ、3人の子どもを育ててきました。今、長男が研修医1年目、長女が医学部5年生となり、親としては頼もしく、将来を楽しみに思う反面、様々な心配が心をよぎります。
 義妹が茨城県医師会男女共同参画委員会委員長を仰せ付かり、女性医師支援事業として医学生や研修医対象のシンポジウムを実施したこと、再就職相談室を設置したこと、今後、病院長を対象にした講演会を開催することなどを聞いておりましたので、「群馬県ではどうなのかな」と思っていました。そこへ、昨年9月の群馬県保険医新聞に柳川洋子先生がお書きになった「働きやすい職場づくり・女性医師支援はこんなふうに・新政権の医療政策に期待」という記事を拝見し、うれしくなり、お礼の電話をしてしまいました。この原稿もそんなことがきっかけで依頼されたものかと思います。
 
 当たり前のことをまずやり始める
 
 私の女性医師支援策に関する感想は「必要性を認識していただくことと、まずやり始めることの二つが必要なだけだ」というものです。
 その際に、女性医師支援が医師不足解消とセットで考えられることが大切だと思います。日経メディカルの記事はタイトルこそ刺激的ですが、内容や提案は極めて具体的で、当たり前のことをやっていこうというものでした。つまり、勤務形態の見直し、保育支援、チーム医療の導入などです。
 柳川先生の記事にもあるように、産婦人科医会、小児科学会を初め、日本医師会も具体的な支援策を提案しており、実施例の成果も報告されつつあります。女性医師が働きやすいということは、すべての職員も働きやすくなるということがポイントかと思います。
 女性医師支援関連の予算が消化されなかったことから、新政権では半分に減額されたそうです。しかし予算がないと支援は進まないのでしょうか。シンポジウム開催のためにりっぱなポスターを作ったり、形を整えるだけの相談室を設置したりすること(そのような使い方に制限されるようです)より、まず、身近にいる女医の話をしっかり聞いてあげて欲しいです。そして、「様々な機会に共通の問題として話題にする」というのが、私の提案です。
 
 医師としても大事な出産・子育て時代
 
 私は小児科学会に「小児科専門医取得に出産育児経験を加点できるようにしてはどうか」との意見を提出してみました。新しい研修医制度導入により、専門医を獲得するまでの期間が長くなりました。結婚、出産、子育ての時期と重なります。何とか応援してあげたいとの思いからの提案でした。
 小児科学会では私の意見を委員会で検討してくださったそうですが、「産休を支える男性医師の負担に配慮が必要である、インターネットで在宅でも研修できるシステムが充実してきている…などから提案は取り入れられないが、今後もさまざまな支援策を充実させるよう努力したい」というお返事をいただきました。
 卒業式の季節になり30年前のことを思い出します。母校である東京女子医大の卒業式では、「一生医者を続けること」「理解ある伴侶を選ぶこと」というユニークな祝辞をいただきました。今になってしみじみと理解できます。
 
 たくましい子どもを育ててほしい

 アラフォーになって結婚出産を考える風潮もありますが、小児科医の立場からは、女医も若く元気なお母さんでいて欲しいし、母乳で育てて欲しいです。
 また、自分の経験から地方で子育てするメリットを強調したいと思います。自然に恵まれ、地域の様々な人々と交流しながら育てる環境は、たくましいプラス思考の子どもを育むものと確信しています。
 群馬県が「子育てするなら群馬で」をキャッチフレーズに学童保育の充実や医療費補助をしてくださっていることに加えて、「群馬に医師不足はない=女医が働ける」と言える県にしていただきたいものです。
 
 正しくは…勤務女医支援
 
 今回、知り合いの県議や市議の方に女性医師支援についてお話してみましたところ、「病院の医師不足解決には女性医師が働きやすい仕組みが必要」という切り口は思い浮かばなかったと言われました。「女医は他の業種より恵まれているのかと思っていた」ということです。「労働基準など適応されない」「産休など存在しない」という言葉にびっくりしていました。いろいろな機会を利用して、病院で働くことの現状と解決策をアピールしていくことが必要でしょう。
 「婚活」とか「少子化」という言葉が生まれ、初めてその言葉の周りにある様々な問題が凝縮されて浮き出てきました。医師不足と女医の抱える問題を象徴するようなキャッチフレーズとして「女性医師支援」という言葉は正しいイメージを伝えてきれていないような気がします。「勤務女医支援」とでも言い換えてみてはどうでしょうか?
 この投稿を、若い先生方への応援歌として書かせていただきました。(城山クリニック)
■群馬保険医新聞 2010年3月号