2012年度の診療報酬改定で後発医薬品の利用促進を目的に導入された「一般名処方加算」(2点)についての影響が取りざたされている。 一般名処方加算は、医師が一般名による記載を含む処方箋を交付した場合に適用される点数で、患者と薬剤師との間で先発医薬品か後発医薬品を選ぶことができる。医療費抑制を視野に後発医薬品の利用促進を狙った政策だが、日本医師会の調査結果によると「一般名処方加算」(2点)を算定しているのは、院外処方の診療所の61%、院内処方の診療所を含めた全体では34・8%である。同加算の新設を機に、一般名処方が普及している現状が伺えるが「院外処方であっても30・9%は加算を算定していない」とされている。 2014年4月、インターネットの医療情報サイトが行った調査によると、「外来診療における一般名処方の方針」を問う質問で最も多かったのは、「基本的に一般名処方はしない」で、48・6%となった。「後発医薬品の種類を検討して、可能な限り一般名処方しない」とあわせて、59%が一般名処方に消極的であった。「後発医薬品の種類を検討して、可能な限り一般名処方する」は22・1%、「基本的に一般名処方」は18・9%となった。 「一般名処方に起因するトラブル経験の有無」について「ある」は16・5%で2割に満たなかったが、トラブルの具体的内容が挙げられている。
〇医療機関や医師の対応
・内服名が後発品だと、もとの薬が調べられないことがある。 ・薬品名が長かったり、似かよっていて、間違って処方しかけたことがある。 ・救急に来た患者の処方薬を調べた際、一般名処方であったため、すぐに内容を把握できなかった薬剤があった。 ・一般処方の名前を覚えるのは困難であり、処方ミスの元凶である。医師の負担をさらに増強するものである。
〇事務方の間違え
・他医で後発品を処方された患者が受診した時に、どのような薬なのか分からない。 ・一般名処方の場合、個々の薬剤の金額など医師は分からないので、時間がかかることがある。 ・一般名が分かりにくい。先発品の商品名が分かりやすい。後発品メーカーは副作用が出ても先発品のせいにして、副作用報告が来ない。
〇薬局の対応
・効果に偏りのある製品が出ていることが多いので、ジェネリックを出す場合でも、必ずメーカーを指定して、確認している。薬局任せにすると、品質まで考えないで、置き換えている可能性が高い。 ・薬品効能が違った薬品が処方された。 ・薬事承認を受けていないジェネリックがあり、勝手に変更されて査定を受けた。 ・薬局によっては、いつも違う薬剤が出される。 ・先発薬がなく、後発品が数種あった場合には、どんな選択がなされるのか不明。 ・先発品からジェネリックに調剤薬局で変えられて、効かなかったと言われた。調剤薬局の説明不足を感じる。 ・服用量が少なくて済む薬剤を処方していたのに、いつの間にか多量に服薬する同効薬の後発品に変更されていた。 ・正確に記載を行ったにもかかわらず、「不明」として薬局から問い合わせがあり、時間を取られる。
〇薬効、患者の対応
・先発品と比較して、効果が劣るように思われる。薬物動態が先発品と異なるように思われる。 ・別のジェネリック医薬品に薬剤が変わった際、患者に副作用が出た。 ・精神安定剤をジェネリックに変えたら、てんかん発作の予防・抑制効果が悪くなったと文句が出た。 ・患者が覚えている薬剤名と異なり、納得しないこともある。 ・患者と薬の確認をするときに話が合わない。 ・薬にこだわりの強い高齢者は、先発品に固執する場合がある。 ・外用剤の場合、基材の配合により同じ薬品でも、効果が明らかに異なる製剤がある。
以上のようなトラブルの具体的な報告は、決して無視できない事象であり、個々の診療所でも経験されていると思われる。一般名処方の開始による現場の混乱、調剤が煩雑になり、ミスが多くなると懸念する声もあり、それに伴う類似医薬品との取り違えなどの可能性も考えられるとの指摘もある。 薬剤費抑制のために必要な施策として、政府が推進している「後発医薬品使用」であるが、医薬品の有効性、副作用についての検討、基準などについての指針をはっきりと示してもらいたい。単に薬価が低いだけで、安全基準が無視されているような薬品の投与は、誰も望まない。
(広報部 太田美つ子)
■群馬保険医新聞2014年6月号