<保険医新聞> 【論壇】〝言論の自由〟を奪うもの

【2014. 9月 15日】

 最近、「言いづらく」なっていないだろうか。
 無意識のうちに、自己抑制をかけるだけでなく、特定の行動を不本意にも強要される感覚を持たされる、というのが「言論の自由」の対局にあるものと考える。
 ものが言えない社会―その到達点は戦争であり、または独裁政治なのであろう。昭和初期の満州事変、太平洋戦争の反省から、私たちの両親、祖父母は新しい憲法のもとで、新しい日本をつくる努力をしてきた。
 多くの大事な思想や行動の中でも、最近脅かされているものの一つに「言論の自由」がある。
 広島の原爆を描いた漫画「はだしのゲン」の図書館での閲覧・貸出禁止を教育委員会やその中心的な立場の人が求めたことは、ニュースになった松江市以外でも全国的に、その圧力が加わっていたようだ。国の在り方、方向を、国内外に明確にしている憲法を守るための学習会や講演会、集会を開くことを目的とした公共施設の借用が、「賛否などの議論が分かれている」との理由で拒否されるという事態も起きた。憲法を守る義務のある公務員が、「憲法を尊重し、それに基づく国づくり」を支持する住民の意思にブレーキをかけるのは、決して本意ではないと信じたいが、特定の地域だけでない事態に「言論の自由」の危機を感じる。
 また、NHKの最高意思決定機関である経営委員会の委員から、政権を批判することを否定する発言がされているのも極めて危険な事態だ。「自由な言論」は、「自由な発想や思想」の発露である。多くの国民の発想や思想の形成に大きな影響を与えるNHKの在り方については、関心を強めねばならない。

 一方で、思想文化の影響は、私たち自身の思想や行動にも表れることを意識しなければならない。私たちを縛るのは、決して法令ばかりではない。先に述べたことが重要だと言いながらも、意見の異なるものを排除しようという思いにかられ、態度を示すこともある。
本紙でも、意見の対立するテーマを扱うことが多い。「従軍慰安婦」問題もその一つであり、異なる意見に耳を傾け、互いに主張できるメディアに成長していけることを願っている。
 また、事実を追求し、住民の健康や生命の維持に貢献すべき医師・歯科医師団体の使命として、HPVワクチン問題や福島第一原発事故に限らず、放射性物質と健康被害の問題も扱っていきたい。
 「言論の自由」を守るためにも、自ら実践しながら訴える必要がある。
   
   (副会長・深沢尚伊)

■群馬保険医新聞2014年9月号