<保険医新聞> 【論壇】連記式の矛盾

【2014. 11月 15日】

 平成27年3月末で電子レセプト請求について、猶予期限が切れ、4月から「免除」扱いの医療機関以外は全て電子請求に移行する。26年9月現在、電子レセプト請求状況は、医科97.2%、歯科76.7%である。歯科は期限までの数ヵ月で、電子化に移行できるのかと疑問視される。
 電子化については、各医療機関での費用負担をはじめ、会員からも問題が提起された。「厚労省は医療機関に対し、請求の効率化を理由に電子レセプト請求を推進しているが、医療費助成事業分の請求については、紙媒体での提出を求めている。この現状の改善を要求してほしい」というものである。 
 診療報酬の請求は、医科では多くの場合、事務職員によって行われているため、作業の複雑さ、煩雑さは医師に伝わりにくいようだ。一方歯科では、院長自身が行うことが多く、切実な問題として捉えられている。
 レセプト請求の電子化、特にオンライン請求が普及してきた今日、医療機関側にのみ煩雑な作業を押し付けたような医療費助成事業分の請求方式は、納得できない。
 例えば、中学卒業までの医療費が県と市町村の助成により無料の本県で、被用者保険(社保)の中学生が受診した場合の請求は、7割を社保支払基金に、市町村からの助成の3割分は、別途福祉医療費(連記式)明細書を作成し、国保連に提出するという非効率な作業が発生している。この問題は、単純に支払基金と国保連の連携がとれれば解決するものと考えられる。そこで支払基金に問い合わせると「基金からも国保連に要望を出しているが実現に至っていない。協会からも働きかけてもらえないか」との事情が伝えられた。支払基金のホームページに掲載されている医療費助成事業の審査支払業務の受託推進に関するパンフレット(*)によると、すでに東京、茨城、山梨など11都府県では、主たる医療費助成事業の支払事務を支払基金が受託し、併用レセプト1つで大半が請求できるようである。
 
 事務費手数料は適正か
 レセプト1件あたりの事務費手数料に注目した。オンライン96.30円、電子媒体97.60円、紙媒体99.40円、紙媒体+電子媒体100.70円。
高いか、安いか、違和感を感じる。連記式での請求では、2倍の手数料になるのでは、と推測してしまう。

 レセプト電子化で
 生じる問題点 
 オンライン請求においても支払側、請求側ともにパソコンやネット環境に設備投資が必要であり、コスト削減という言葉が適切かどうか疑問に感じる。27年4月より、電子レセプトに完全移行された場合の矛盾や問題点は、
〇医療費助成事業の請求が1本化されていない。
〇返戻は紙媒体である。
〇ネット上からのウイルス、ハッカーなどによる個人情報漏えいのリスク。
〇縦覧点検による審査の強化。
などがある。
 各審査支払機関の理念や方針には「良質なサービスの提供」「効率的な運営」「コストの削減」等とある。現在のレセプト電子化は、この理念とはかけ離れたものになっている。いつも通りの見切り発車の感は否めない。
 
  改善の要望をもう一つ加えると、毎月の請求に対して、支払基金、国保連からは、2ヵ月後にそれぞれ総額で振り込まれてくる。この明細が分からない。診療側は毎回診療ごとに、領収書、明細書を発行している。振り込まれた総額の明細書発行の義務化も訴えたい。

*「医療費助成事業の審査支払業務は支払基金におまかせください」
http://www.ssk.or.jp/kohoshi/files/pamph_04.pdf

(副会長・小山 敦)

■群馬保険医新聞2014年11月号