【論壇】衆議院選挙

【2017. 11月 15日】

衆議院解散総選挙が終わった。大義なき解散といわれ、その結果は自公が3分の2超の議席を獲得して大勝した。
選挙前までは、日本の政治は内政、外交ともに驚くべき退嬰と閉塞感に埋没していた。森友・加計問題で政治が歪んだメカニズムで意思決定されていることが明らかになっても、日本の民主主義が「共謀罪法」によって窒息させられる可能性があっても、「株価さえ上がれば結構だ」という判断で、アベノミクス支持は動かないのである。
その株価は、日銀が株式市場から直接株を買い、国民が積み上げてきた年金基金を運用するGPIFが、「株価変動のリスクを取った運用」へとルールを変更してまで、基金の4分の1を国内株式市場で運用するという「健全な資本主義」とはいえぬ異様な構造で成り立っている。公的資金を投入して株式市場を支えているわけで、この53兆円の公的資金が市場からすれば、現在の2万円を超える日経平均は間違いなく大幅に下がる、官製相場に支えられた歪んだ資本主義にしてしまったのである。この自堕落な構造に強い疑問を抱き、マネーゲームに幻惑された経済社会ではなく、公生で健全な経済にこだわらねばならないはずだ。
戦後民主主義を経験した人々は、簡単に国権主義、国家主義に共鳴するのではなく、民主主義の光と影を咀嚼したうえで、国民の意志を大切にすることが求められている。
現在の日本は、近隣との緊張を背景に、自衛隊と警察権力を強化する方向に回帰し始めている。「安保法制」から「共謀罪法」に至る流れは、国家権力による統合を志向しており、根底には「国民の自由な意思表示、行動を信じない」という思考が横たわっている。政治は権力であり、権力の統合が社会を安定させると考えているのである。また日本人の生活観は、多くの人々が漠然とした閉塞状況に覆われている。世帯の資産は1極集中で格差が広がっており、金融資産を持たない世帯が増加し、高額の資産を持つ層が増えている。
生活保護世帯は1998年の60万世帯から2016年には163万世帯に増加し、奨学金貸与者数は1998年の50万人から2013年には144万人と3倍近く増加している。
そういった情勢の中での衆議院選挙であったが、与野党の勢力は変わらなかった。比例代表の得票数を見ると、希望の党は約967万票で、前回の衆議院選(2014年)の民主党の977万票と同程度だ。共産党と日本維新の会が大幅に減らす中、立憲民主党が約1108万票を得た。希望と立憲民主を合わせれば、自民(約1855万票)を上回る。国民は政権交代可能な勢力を欲している。それも保守二大政党ではない。
安倍政権の政策は、要約すれば、大きいもの、強いもの、富めるものをより大きく、強く、富ませる。大企業が儲かれば、その利益が中小企業や庶民に滴り落ちる「トリクルダウン」を目指した。これに対して野党の結集軸になりうるのは小さいもの、弱い者、貧しい者にスポットライトを当てる政治であるはずだが、野党の結集はなかった。野党第一党の民主党が3分割したことで、与党の大勝を許した。
一強多弱の政治が続くのだろう。その先は……?

(広報部 深井尚武)