【論壇】医学部入試―合格率の男女差と女性医師支援

【2018. 9月 15日】

文部科学省の私立大学支援事業をめぐる汚職事件で、東京医科大学が不正入試の事実を認めた中で、女子であるというだけで一律減点され、大学の女子合格者がおおむね3割に抑えられるなど、不当に差別されていたことが明らかになった。「女性医師は結婚、出産等で離職し、復職しないケースが多い。男子医師の数を揃えてマンパワーを確保したかった」などと、その理由を挙げている。
この問題を受け、文部科学省は、8月に医学部医学科を置く81校を対象に緊急調査を実施し、今年度から2013年度まで6年分の入試での受験者数、合格者数のほか、特定の受験者への加点や性別、年齢による合否判定での差異の有無を尋ねた。9月4日に公表された速報結果によると、過去6年間の入試では、全国の国公私立大医学部の約8割に当たる63大学で、男子の合格率が女子より高かった。一方、東京医大以外で女子受験生の得点操作などの不正を行っていたと回答した大学はなかったという。

歯科では、歯科医師過剰と数の総量規制が命題となっている。こうした中、結婚、出産、育児等を機に離職する可能性がある女性歯科医師は男子歯科医師に比べ、過剰の対象から割り引かれ、歯学部では女子学生はむしろ歓迎される傾向にある。
医療施設に従事する歯科医師数は、平成28年度の段階で60歳未満の全ての年齢層で前年を割り込んでいる。総数でみても、男性の歯科医師数は7万8160人(前年比370人、0・5%減)、女性は2万3391人(956人、4・3%増)と、男性は減少し、増えているのは女性歯科医師だ。その結果、若年層では女性の構成比が年々増大し、30~39歳では34・9%が、30歳未満では、44・6%が女性だ。特に矯正歯科と小児歯科は、女性歯科医師数の伸びが顕著だが、出産、育児により専門医の更新を諦める例も多い。

働き方改革においては、病院勤務の医師が最も過酷な状況に置かれている。医療従事者の過労死や自殺が依然として後を絶たない。また医療機関の労働環境は、最低限の働き方を定める労働基準法さえ遵守できていない現状が明らかになってきている。全国の病院の中には、医師の違法残業、残業代未払いなどの理由で労働基準監督署の是正勧告を受けているところもある。また労働基準法の時間外労働の上限規制は、医師については医師法の応召義務等の特殊性から現行法の適用除外となっている。

女性医師は、産前産後の休暇が取得しにくいとされている。キャリア形成、専門医、認定医の資格もとりづらい。子育て支援も十分でない。短時間勤務や当直の免除等を柔軟に認めるなど、環境を整備することが先決だ。その努力を怠り、大学病院などで男性医師の方が使いやすいなどといった理由で医学部入試の得点が操作されていたとしたら、それは女性の活躍の場を奪うものであり、許されることではないだろう。
(広報部・深井尚武)

■群馬保険医新聞2019年9月15日