日本の総人口は2008年の1億2808万人を境に減少に転じ、2019年9月の総人口は、概算値で1億2615万人となっている(総務省統計局「人口推計」)。
日本は未曽有の超少子高齢化時代を迎えており、2020年に起こると予想される問題の多くは、この人口減少と年齢別人口のアンバランスさが大きく関わっている。人手不足、IT問題、不動産等、さまざまな分野で起こることが懸念されている。また、2020年、女性の人口においては、50歳以上がそれ以下を追い抜くとされている。すなわち妊娠、出産できる人口が減ってきているのである。
一人の女性が一生のうちに生む子どもの数の平均を示す「合計特殊出生率」という指標がある。「合計特殊出生率」は「15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの」で、次の2つの種類がある。
A「期間」合計特殊出生率
ある期間(1年間)の出生状況に着目したもので、その年における各年齢(15~49歳)の女性の出生率を合計したもの。女性人口の年齢構成の違いを除いた「その年の出生率」であり、年次比較、国際比較、地域比較に用いられている。
B「コーホート」合計特殊出生率
ある世代の出生状況に着目したもので、同一世代生まれ(コーホート)の女性の各年齢(15~49歳)の出生率を過去から積み上げたもの。「その世代の出生率」である。
実際に「一人の女性が一生の間に生む子どもの数」はBのコーホート合計特殊出生率であるが、この値はその世代が50歳に到達するまで得られないため、それに相当するものとしてAの期間合計特殊出生率が一般に用いられている。なお、各年齢別の出生率が世代(コーホート)によらず同じであれば、この二つの「合計特殊出生率」は同じ値になる。ただし、晩婚化・晩産化が進行している状況等、各世代の結婚や出産の行動に違いがあり、各年齢の出生率が世代により異なる場合には、別々の世代の年齢別出生率の合計であるAの期間合計特殊出生率は、同一世代のBのコーホート合計特殊出生率の値と異なることに注意が必要である。
2016年、安倍政権は一億総活躍プランの中で、「国民希望出生率1・8」の構想を打ち出した。国民希望出生率とは、若い世代の結婚・出産希望が叶った場合に推計される合計特殊出生率である。
1・8とは、2015年に行われた第15回出生動向基本調査を用いて出された数値だが、それを達成することは非常に困難である。人口が減らないためには合計特殊出生率が2・07である必要があるとされており、1・8では人口減少を止めることはできない。2018年の合計特殊出生率は1・42であり、過去最低の2005年より回復しているものの、年間出生数で見ると18年の方が少ない
今年6月、厚労省が発表した人口動態統計によると、2018年の平均初婚年齢は、夫31・1歳、妻29・4歳で、夫妻ともに前年と同年齢となったが、結婚年齢が高くなる晩婚化は進行している。1980年には、夫が27・8歳、妻が25・2歳であったので、約40年で、夫は3・3歳、妻は4・2歳、平均初婚年齢が上昇している。これにより初産年齢も高齢化し、第1子が30・7歳、第2子が32・6歳、第3子が33・6歳となり、上昇傾向が続いている(内閣府「少子化社会対策白書」2016年版)。
初産の平均年齢が上昇している原因として、次のようなものが挙げられる。
1)女性の社会進出
男女平等化に伴い女性の社会進出が増加し、同時に男性と同じような働き方(長時間残業や出張、転勤など)を求められている。
これは、働きたい女性がなかなか結婚に踏み出せない原因のひとつである。仕事に対する責任の増加により晩婚化が進み、出産年齢も上がってきている。また、出産後も保育園の待機児童問題などのために、仕事からいったん離れると同じように復帰することは困難と考え、ますます結婚、出産から遠ざかってしまう。
2)子育て・教育費用の増加
子育て・教育費用の増加も問題の一つに挙げられる。
子育てにかかるお金だけでなく、子育ての大変さを考慮して、子どもを持つことをためらったり、先送りにしてしまったりする夫婦もいる。核家族化が進み、夫婦だけで子どもを育てなくてはならないため、育児に対する漠然とした不安が夫婦にのしかかるのである。
最近の群馬県の出生数も激減してきている。
2017年の出生数は1万3279人であり、合計特殊出生率は1・47であった。働き方改革の後には若い人が安心して結婚、妊娠、出産ができる社会構築が急務である。
(副会長・小澤聖史)
■群馬保険医新聞2019年10月号