新年を迎えて
群馬県保険医協会 会長 清水 信雄
会員の皆様におかれましては、すがすがしい新年をお迎えのことと存じます。
私事ですが、当会会長に就任して3年半が経とうとしています。
会長に就任後、皆様から「以前と比べてつまらない」、「事勿れ主義になっているのでは?」、「自身の主張がない」と私の発言に叱咤激励を度々頂戴するようになりました。皆様からのこうしたお言葉は、仰せの通りと非を認めざるを得ません。会長という立場では、なかなか主観的見解、つまり個人としての本音を出しにくくなったことも事実です。その分と言ってはなんですが、他の理事の方々が積極的且つ自由闊達な議論のできる環境づくりに努めてきたつもりですし、今後もそうしたいと考えております。
さて、昨年は世界中が凡そ100年に一度と言われるCOVID-19の感染禍に見舞われました。殊に医療従事者にとっては、まだ把握しきれぬ敵に対し、自らが感染のリスクに晒されながら、そして疑心暗鬼になりながらも医療の実施や、患者住民に適切な感染対策を提示しなければならず、かつてないほど厳しい状況に置かれました。
その使命感とご尽力に対し、心より敬意を評します。
ただその中でも、患者との距離が最も近く、さらに歯の切削やエアロゾル、唾液との接触等、感染につながるリスクが最も高いとされている歯科において、これまで医療現場でのクラスター等の感染報告がなかったことは、奇しくも歯科医療機関、及びスタッフの適切な感染対策の実践が改めて確認されたものと考えています。
昨年夏には、県知事に対し、医療現場での医療物資の供給体制の確保等、要望書を提出いたしました。いずれにしても、政府や自治体には、住民の命と健康に不可欠な医療が機能不全に陥ることのないよう、そして住民の不安が煽られないよう、適切な対応を切望する次第です。
このように、医療はときの政治や行政と深く関わっていることは論を待ちません。
昨年は、7年8ヶ月に及んだ第二次安倍政権が突如幕を閉じ、新たに菅政権に交代しました。前政権では「モリカケ」「サクラ」と、その経緯に関わる記録が改ざんされ、またうやむやにされました。新政権でも、日本学術会議の任命をめぐり、やはり経緯についての国民への説明はなされていません。この間、政府の、国民に知る権利に対する不誠実な姿勢はなんら変わっていません。
政府の施策に対する国民や専門組織からの意見、異論を封じ込めては、悪い意味での唯我独尊、「裸の王様」になりかねません。政府には、国民の生活を守るという責務を再確認し、国民の生の声を真摯に受け止めるよう強く働きかけていきます。
一方、当会においてもコロナ禍と事務局体制の不備から、残念ながら現在は以前のような協会活動が十分できているとは言えません。
このことは、会員の皆様に心より申し訳ないという思いでいっぱいです。事務局体制については、新たに局員を採用し、徐々にではありますが整備が図れつつある状態です。
こうした状況下で何ができるのか、何をしなくてはいけないか、日々自問している次第です。
まずはコロナ禍を乗り越え、少しずつでも確実に、会員の方々のお役に立てるよう、そして地域住民の健康の維持増進に寄与できるよう、努力してゆく所存です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
■群馬保険医新聞2021年1月15日号