■女性人口の減少
2019年10月の群馬県保険医協会新聞の論壇に、2020年女性人口問題について書いている。
そこで、日本は未曽有の超少子高齢化時代を迎えており、2020年に起こると予想される問題の多くは、この人口減少と年齢別人口で見たときのアンバランスさが大きく関わっている事を書いた。
少子化問題は、そのまま人材不足、IT問題、不動産、様々な分野で起こることに繋がる問題である。
人口減少問題において女性の人口減少は特に問題である。妊娠、出産できる人口が減ってきているということであり、直接少子化問題に影響を与える。
平均初婚年齢は、2018年で、夫が31・1歳、妻が29・4歳と上昇傾向を続けており、結婚年齢が高くなる晩婚化が進行している。1980年には、夫が27・8歳、妻が25・2歳であったので、ほぼ40年間で、夫は3・3歳、妻は4・2歳、平均初婚年齢が上昇していることになる。
これにより初産年齢も高齢化し、「内閣府 令和2年版少子化社会対策白書」によると、2011年に平均30歳を突破し、2018年には第1子が30・7歳、第2子が32・7歳、第3子が33・7歳となり、上昇傾向が続いている。
初産の平均年齢が上昇している原因として、
①女性の社会進出
男女平等化に伴い女性の社会進出が増加し、同時に男性と同じような働き方(長時間残業や出張、転勤など)を求められている。
これは、働きたい女性がなかなか結婚に踏み出せない原因のひとつである。仕事に対する責任の増加により晩婚化が進み、出産年齢も上がって来ている。又出産しても、保育園問題などのために再び仕事に戻ることが困難になっている。
そのため仕事からいったん離れると同じように仕事に復帰することができなくなると考え益々結婚、出産から遠ざかってしまう。
②子育て・教育費用の増加
子育て・教育費用の増加も問題のひとつにあげられる。
子育てにかかるお金だけでなく、子育ての大変さを考慮して、子どもを持つことをためらったり、先送りにしてしまったりする夫婦もいる。核家族化が進み、夫婦だけで子供を育てなくてはならないため、育児に対する漠然とした不安が夫婦にのしかかるなどが挙げられる。
■出生数の減少
最近の統計で群馬県の出生数も激減してきている事がわかった。
上毛カルタで、力合わせる〇〇万でその人の時代がわかるという。わたしの頃は160万であったが、娘の時は200万だという。
しかし今は群馬県の人口は減少してきていて200万を切ってきている。
平成29年の出生数は13279人であり、合計特殊出生率は1・47であった。
働き方改革の後には若い人が安心して結婚、妊娠、出産ができる社会構築が急務である。
■妊娠届出数の減少
ここ一年のコロナ問題はこの少子化問題にも暗い影を落としている。
厚生労働省では、このたび、新型コロナウイルス感染症の流行が妊娠活動等に及ぼす影響を把握することを目的として、平成30年1月から令和2年7月までの妊娠届出数の状況について自治体に照会しまとめている。
新型コロナウイルス感染症の流行が本格化した本年4月以降の届出件数と、前年同月との比較をしている。
令和2年4月の妊娠届出数の減少比は前年度比で0・4%減。
令和2年5月の妊娠届出数の減少比は前年度比で17・1%減。
令和2年6月の妊娠届出数の減少比は前年度比で5・4%減。
令和2年7月の妊娠届出数の減少比は前年度比で10・9%減であった。
令和2年1~7月の7ヶ月の累計妊娠届出数の減少比は前年度比で5・1%減であった。
■群馬県の分娩予約数の減少
日本産科婦人科学会(日産婦)の全国調査で来年の分娩予約件数の激減がわかった。
埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪の6都府県の「都市部」での平均減少率は24%で、これらの地域以外の「地方」の平均減少率は37%であった。
群馬県は地方平均減少率37%を上回る43%減であることがわかった。これはコロナ問題による出産控えと、コロナによる里帰り分娩の減少が原因と考えられる。この分娩予約数の激減は県下の産婦人科を直撃し、そのまま小児科の問題へと変化していく。
■少子化対策
菅首相は就任後初めての記者会見で少子化対策について「出産を希望する世帯を広く支援し、ハードルを少しでも下げていくために、不妊治療への保険適用を実現する。安心して子どもを産み育てることができる社会、女性が健康に活躍することができる社会や環境をしっかり整備していきたい」と述べている。
2022年4月から不妊治療に公的医療保険を適用する方針を固めているが、出産費用の無料化、幼稚園、保育園、小学校から高校までの教育費の無料化、高校生までの医療費の無料化等出産から子育てまで安心してできる大胆な対策も必要ではないだろうか。
(副会長 小澤聖史)
■群馬保険医新聞2021年2月15日号