【論壇】コロナとワクチン接種

【2021. 5月 17日】

◆コロナ感染封じ込め

 新型コロナ感染が全世界で蔓延している中、ニュージーランド、台湾、ベトナムなどでは新規感染者が殆どいない。 これらの国々では、入国制限や感染者の徹底的追跡などで、ワクチン接種率は低いものの感染を封じ込めている。

◆ワクチン効果で感染抑制

 入国制限などをそれほど行わなかった結果感染者の多かったイギリス、アメリカなどの国では、ワクチン接種率上昇とともに、感染者数が減少している。特にイスラエルでは、これまでに人口の54%が2回のワクチン接種を終え、新規感染者は今年1月の1万人超から、4月には100人前後に激減した。

◆ワクチンの発症予防効果

 イスラエルで使用のワクチンは、日本と同じファイザー製であり、その発症予防効果は95%と報告されている。 メッセンジャーRNAを利用した新しい方式のワクチンで、1回接種により感染を80%、2回接種により90%抑制し、効果が出るまで接種後2週間必要とある。

 ◆日本の低いワクチン接種率

 人口に対する接種率は、イギリス50%、アメリカ43%、フランス21%に比べ、日本はいまだ2%にとどまり、先進国の中で最も低い。 これは、ワクチンを自国製造出来ない事の他に、供給の不手際が原因だろう。政府はEUからの供給不足が原因としているが、4月19日までにEUから5230万回分輸出されているはずが、 国内の医療関係者にはまだ300万回分しか投与されていない状況で、5000万回分はどこに眠っているのか。医療関係者へのワクチン接種は2月から始まっているが、開業医の私の所へは4月26日にやっと1回目ワクチンが届いた。

◆ワクチンの配布計画

 高齢者向けワクチンは、4月26日の週にはすべての市区町村へ1箱(195バイアル入り、1バイアル5回接種で975回分)ずつ配布され、6月末までには全高齢者分(3600万回分)が送付されるという。しかし、この配送されるワクチンの数量、日程がはっきりせずで、高齢者のワクチン2回接種の計画未策定の市町村が千以上ある。

◆集団接種の予約

 4月19日から配布されたワクチンは高齢者の1%分しかなく、八王子市では予約電話が殺到して開始1時間半で定員に達したとのニュースがあった。その結果、ワクチン不足が鮮明となり、高齢者の不安心理があおられ、多くの市町村でワクチン予約に殺到している。また、集団接種会場で、来なかった人の分を廃棄したとのニュースもあり、設営の大変さ、キャンセルがあった時の対応の難しさもわかった。

◆個別接種でも、予約で混乱

 私のいる伊勢崎市では、開業医での個別接種を主とし、かかりつけ医の有無で、医療機関を分けている。4月19日から高齢者へ配布されたワクチン予約券では、電話で予約して下さいと書かれていたため、翌日から多くの開業医に問い合わせ電話が殺到した。市では、ワクチン接種開始を5月中旬としているが、入荷予定がはっきりせず、応急対応として、予約希望を受け付けて、ワクチン入荷後に接種日を連絡する事とした。

◆ワクチン2回目との間隔

 ワクチンの案内には3週後に2回目を打つ様に書かれているが、それを守ると4週後から、新規の人のワクチンを打てなくなる。アメリカやヨーロッパでも、ファイザー製ワクチンは3から6週の間隔をあけてうつとされており、間隔の大小で効果に差はない。また、2回目を早く打った方が個人の感染予防には効果はあるが、他の人との公平性を考えれば間隔は3から6週とすべきだろう。

◆ワクチンの有効利用

 玉村町では突然のキャンセル時のワクチン廃棄を減らすため、もったいないバンクで希望者を募集したが、それ以前にファイザー製ワクチン1バイアルからとれる量を現在の5人分、6人分ではなく、7人分とれる方法にするべきではないか。アメリカのFDAでも、バイアルに含まれる余分量も使用可能といっている。ある病院ではインスリン用注射器を使い、7人分とったという報告もあるが、インスリン用注射器は入院中の患者に看護師が打つ時くらいしか使わず、私の様な開業医では在庫すらない。

動画はこちらから…https://youtu.be/eploLCuoh_Y

◆テルモFNシリンジで7人分

新型インフルエンザの流行した2009年はワクチン不足があり、その時にできたFNシリンジは無駄となる量が0・002㎖と少ない。ワクチン0・3㎖とるのに、通常のシリンジでは5本、政府の配布したもので6本だが、FNシリンジでは7本とれる。針長13㎜だが、当院看護師の上腕皮下脂肪厚を測定し8㎜で,普通の人には針を根元まで刺し筋注可能であり、100㎏位の肥満の人には、5㎜ほど注射器毎押し込めば筋注可能だ。テルモでは、針が16㎜と長い注射器もコロナワクチン用に3月より製造開始したが、政府はこの様な注射器増産に金を出すべきだし、医療者は使うとよいだろう。政府が現状で配布している注射器、針ではワクチンをムダにすることになり、もったいない。 

「7本ね もったいないよ ワクチンが」

(副会長 長沼 誠一)

■群馬保険医新聞5月15日号