【論壇】マイナンバーカード

【2021. 6月 16日】

 皆さんは住基カードを覚えているだろうか?住基カードとは正式名称を住民基本台帳カード(じゅうみんきほんだいちょうカード)といい、市町村又は特別区が発行する、個人の住所、氏名、生年月日、性別、住民票コード等が記録されたICカードであった。

 2003年(平成15年)8月25日に開始され、2015年(平成27年)12月限りで発行終了。約830万枚交付されている。普及率は10%に満たない物で、このとき政府は2000億以上の税金を投入していた。ちなみに、私は確定申告をインターネットでするときに必要であったため、住基カードを所有していた。

 このときの10%に満たない什器カードの総括もされないまま、新たにマイナンバーカードが登場した。

 マイナンバーカードは、2016年1月から発行開始され、顔写真付きの「本人確認書類」として利用できるものである。最近このカードの普及のため、マイナンバーポイントという一人につき上限5000円分のポイントを支給するという大判振る舞いを行った。これには総額2500億円相当の予算がとられている。

 そして今回政府はマイナンバーカードを保険証と合体させ普及させようとしている。

 一般的に医療機関では患者さんが加入する医療保険を確認して、保険医療をしているが、この保険証の確認が資格確認である。

 従来の資格確認の方法は、患者の健康保険証を受け取り、記号・番号・⽒名・⽣年⽉⽇・住所などを医療機関システムに入力する、というものであるが、この方法では「入力の手間がかかる」「患者を待たせてしまう」などの難点があった。

 これをICチップから情報を読み取ろうというのが、今回のオンライン資格確認である。

 この資格確認には・資格確認機器・資格確認端末・顔認証付きカードリーダーソフトが必要である。資格確認機会として、①患者の顔を撮影できるカメラがあること②マイナンバーカードの券面情報を取得する機能があること③マイナンバーカードの読込が可能なICカードリーダーが搭載されていること④入力操作用を行えるタッチパネル等が搭載されていることが要件とされており、今年3月までに要望すればICEカードリーダーの無償提供、導入費用、に対して42・9万円まで補助が出ていた。

オンライン資格確認導入のメリットは

1.資格過誤によるレセプト返戻の作業削減

2.保険証の入力の手間削減

3.来院・来局前に事前確認できる一括照会

4.限度額適用認定証等の連携

5.薬剤情報・特定健診情報の閲覧ができる

6.災害などの緊急時に薬剤情報・特定健診情報の閲覧ができる事が挙げられる

などが挙げられる。

 当院の事務に確認すると、患者の保険資格情報がその場で確認できることは資格過誤によるレセプト返戻や窓口業務が減りとても助かる、とのことであった。

 また、最新の保険資格を自動的に医療機関システムに取り込んでくれるので、医療事務の手間や間違い等が減り、とても期待できるとのことであった。

オンライン資格確認の3つのデメリット

1.セキュリティ対策

2.事務対応の煩雑化

3.自治体の公費や地方単独事業との引き継ぎがない

などが挙げられる。

 やはり個人情報の流出に対しての懸念は拭えない。マイナンバーカードを紛失したときの対応も今のうちに十分対策を考えておく必要がある。

 今年3月スタート予定だったこのオンライン資格確認もすでに7ヶ月延期されている。これはシステムの基盤となるデータの正確性に致命的な不備、具体的にはマイナンバーが他人のものと取り違えて登録されるというミスが多発していたためだという。過去の住基カードの失敗で学んだ対策は、今度は生かされるのであろうか。

 今回の保険証と一体化は、厚生労働省も本気のようで医師会からも導入に肯定的な意見が聞かれ始めている。当院でも導入に向けて準備を進めている。導入に当たり試しに私もこのマイナンバーカードを申請してみたが、二ヶ月たった今もまだ手元にない。

 マイナンバーカードの普及は急務であろうが、おまけをつけなくては普及しないカードは本当に必要なのだろうか?

保険証と一本化して本当に大丈夫であろうか?

導入したものの、使い物にならず、使用しない機械ばかりが増えないように祈るばかりである。

(副会長 小澤 聖史)

■群馬保険医新聞6月15日号