コロナ禍における乳がん検診とブレスト・アウェアネス

【2021. 11月 15日】

 我が国の医療の現状は、2020年初頭に端を発した新型コロナウイルス感染症の流行により、多くの面で深刻な影響を受けている。その一つにがん診療がある。

 全国の癌診療拠点病院でも新型コロナウイルス感染症に対応するため、人員や設備などの医療資源を消費せざるを得ない状況であり、また院内感染拡大防止対策強化などの必要性から、がん手術件数は減少している。またがん検診の受診率も低下している。がん治療にとって早期発見・早期治療は極めて重要であるが、がん検診の受診率の低下はがん早期発見をより困難なものにしている。特にコロナ禍において早期癌の手術件数の減少率が大きくなっている。この傾向は、乳がんにおいても変わらない。

 日本乳がん検診学会では、コロナ禍での乳がん検診の受診を促すために「乳がん検診にあたっての新型コロナウイルス感染症(COVID―19)への対応の手引」(http://www.jabcs.jp/images/covid-guide202107.pdf)を発行している。内容は従来の基本的な新型コロナウイルス感染症対策を踏襲し、検診受診者、検診従事者双方について、当日の感染症状の有無、直近2週間の行動歴を確認して感染が疑われる場合は検診日時の変更などを指示している。また検診実施時には検診会場が混み合わないように注意するとともに、マスクの着用や手指および検査機器の消毒などの具体的な方法について説明している。その上で、乳がん検診で行われるマンモグラフィや乳腺超音波検査は、十分な感染対策を講じて実施すれば感染のリスクは高くないとしている。

 また、乳がん検診特有の問題点として、新型コロナウイルスワクチン接種の副反応による腋窩リンパ節腫大についても言及している。肩に新型コロナウイルスワクチン接種をした場合、同側の反応性腋窩リンパ節腫大が出現することがある。一方で乳がん検診では、腋窩リンパ節腫大は乳がんの転移が疑われ、要精査とされることがある。これを新型コロナウイルスワクチン接種による反応性腋窩リンパ節腫大と鑑別し、検診の偽陽性率を上げないために、乳がん検診受診者の新型コロナウイルスワクチン接種歴を確認することと、検診受診時期を新型コロナウイルスワクチン接種前か2回目の新型コロナウイルスワクチン接種後6~10週以降にすることを推奨している。また国民への啓発として新型コロナウイルスワクチン接種後の反応性リンパ節腫大は病気ではなく、自然な反応であることを知らせることも勧めている。

 これまでに述べた様な、コロナ禍における具体的な乳がん検診の指針の他に、乳がんの早期発見に有用とされる「ブレスト・アウェアネス」という概念についても解説がされている。現在は乳がん検診として、多くのエビデンスにより有効性が証明されているマンモグラフィ検診と定期的に行う自己検診とを併用することが推奨されている。ブレスト・アウェアネスは、それに留まらず、各個人が日常的に自身の乳房を意識することにより、乳がんの早期発見につなげていく生活習慣であり、具体的な方法として以下の項目を挙げている。

① 自分の乳房の状態を知る

② 乳房の変化に気をつける

③ 変化にきづいたらすぐ医師に相談する

④ 40 歳になったら 2 年に 1 回乳がん検診を受ける

 ブレスト・アウェアネスは、女性一人一人がこうした生活習慣を意識し、実践することで乳がんの早期発見につなげていくことを目的としている。

 数年来、乳がん罹患率は我が国の女性における悪性新生物では第1位であり、更に増加を続けている。一方で、乳がんは検診による死亡率減少効果が証明されており、早期発見のメリットが大きいことも知られている。コロナ禍では乳がんの検診・治療ともに制限を受けている状況であるが、様々な検診の工夫や各個人に対する啓発により、少しでも乳がんによる死亡率を下げていくことが望まれる。

(研究部・医科 部長 竹尾 健) 

■群馬保険医新聞2021年11月15日号