マイナンバーカード等によるオンライン資格確認の運用が10月20日から始まったが、厚労省によると現時点で運用開始した医療機関・薬局は11,676施設(5.1%)。顔認証付きカードリーダーの申込数は128,984(56.3%)あるが、パソコンやルーターなどハードウェアの整備やシステム改修の遅れなどから、準備完了は20,362施設(8.9%)に留まっている。
健康保険組合連合会副会長の佐野氏は「2023年3月末までに、概ね全ての医療機関・薬局での導入を目指す」という目標達成に向け、タイムスケジュールを入れたアクションプラン策定を要望している。
まずオンライン資格確認の仕組みについて述べてみる。
オンライン資格確認は、患者が持参するマイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等を利用し、患者の直近の資格情報が確認出来る仕組みである。方法として、健康保険証を用いた場合とマイナンバーカードを用いた場合の二通りの方法が示されている。
この資格確認システム導入によるメリットは、
①保険証の入力手間の削減
②資格過誤によるレセプト返戻の作業削減
③来院・来局前に事前確認できる一括照会
④限度額適用認定証等の連携
⑤薬剤情報・特定健診等情報の閲覧
⑥災害時における薬剤情報・特定健診等情報の閲覧
などが挙げられる。
また、オンライン資格確認で考えられる問題点・デメリットは、
①設備導入・維持の負担
カードリーダーの設置だけでなく、保険資格情報が登録されている支払基金・国保中央会にアクセスするための端末とインターネット回線などを新たに備える必要があること。国は導入費用の補助(診療所では上限約43万円)をしているが、導入後の定期的なメンテナンスや改修等の維持費用は対象としていない。
②資格確認の実務的な負担、カードの使用に不慣れな患者への対応やカードの紛失・取り違えの危険
マイナンバーカードで資格確認をする場合、患者自身がカードリーダーにマイナンバーカードをかざし、カードリーダーに自分の顔を認証させることで確認するので対応に負担がかかる。また、マイナンバーカードの紛失・取り違えリスクなどの危険性もあり、医療機関では健康保険証にマイナンバーカードを用いることに否定的な意見が多数をしめている。
③個人情報漏洩の危険性
オンライン資格確認システムはインターネット回線を用いることから、セキュリティ対策は万全とは言えず、情報漏洩、ウイルス、ハッキング等の危険性がある。
④患者の自己情報コントロール権の侵害
オンライン資格確認システムは、今後「データヘルスの基盤」となり、薬剤情報・特定健診等情報に加えて、手術、移植、透析、医療機関名といった項目が対象となる予定である。患者の生涯にわたる医療・保険情報が全国の医療機関で利用されることになると、医療における患者のプライバシーは無くなり、患者の自己情報コントロール権が侵害されることに繋がり兼ねない。
マイナンバーカードを保険証に紐づけての運用は、個人情報漏洩や紛失・盗難リスクの対応策の議論が不十分のまま推し進めてよいのか不安が大きくなるばかりである。オンライン資格確認は義務ではなく、あくまでも医療機関の「任意」であり十分に検討した上で慎重に判断する必要がある。
また、システムの不具合発生時、災害等による停電時にはオンライン資格確認を行うことは出来ず、保険証の確認が必要になる。つまり、オンライン資格確認を導入するか否かにかかわらず、患者には保険証を持参してもらう必要があり、案内・情報提供が欠かせない。
(共済部長 太田美つ子)
■群馬県保険医新聞2021年12月15日号