新年のあいさつ

【2022. 1月 25日】

新年を迎えて

群馬県保険医協会 会長 清水 信雄

 会員の皆様におかれましては、すがすがしい新年をお迎えのことと存じます。

 さて2年もの間、COVID―19に翻弄される生活が続いています。生活を著しく制限され、社会活動そして経済活動も低迷した日々を送っています。これまで格段の意識もせず当然であったことができなくなり、あるいはそれをするのに何倍もの意識と注意を払わなくてはならなくなりました。結果、平和な日常のありがたさをいやが上にも実感することになりました。

 急増したCOVID―19の重度感染者に対する治療のため、病院等の医療機関は、本来の医療機能自体が逼迫するという事態を経験しました。通常の診療が行えなくなる状況、重症患者の処置も思うに任せず、緊急患者も受け入れられなくなる—こんな状況を誰が想像したでしょうか。

 さらには、感染を恐れての受診控えにより、持病が悪化したケースも数多く報告されました。ここでも、医療の大切さと医療体制の脆弱さを実感せざるを得ませんでした。新たな変異株の懸念もありますが、新規感染者数の増加がやや沈静化している今こそ、これまでの経験を生かし、次の危機に対し生活様式や社会活動、そして医療体制を備えなければなりません。

 今回のコロナ禍において、感染症対策の要であった保健所の機能も逼迫しました。1994年に全国で847所あった保健所数は逓減の一途を辿り、2020年では469所にまで減少しました。行政改革で削減された保健所機能の強化も喫緊の課題といえましょう。

 人びとの日常生活においては、常にマスクを着用しているため、表情を読み取りずらくなっています。特に、口元の表情を敏感に感じながら情緒を身につける乳幼児への影響が懸念されています。その他、表情の乏しさ、コミュニケーションの低下といったマスクの弊害も少なくありません。 

 さて、私たち医療従事者には、住民の健康維持のお手伝いという大きな使命があります。自然科学者としてEBMそしてNBMにより、日々その実践に努めています。これまで正体が分からず、ややもすると疑心暗鬼を生じやすかったCOVID―19も、その感染力や感染経路についてある程度解明され、それにより対策も講じやすくなってきました。過剰な恐れは人間社会に機能障害を引き起こし、一方で無防備による感染拡大も同様の結果を招きます。医療機関が率先して、あるべき有効な感染予防対策を講じ、住民や患者に対し正しい情報発信を行い、結果として医療機関が安全であることの証明を実践して行きましょう。 

 ひとたび感染が拡大すると医療機関はリスクに晒されてます。医療機関の機能不全はそのまま患者の健康のリスクにつながることを肝に銘じ、患者住民の健康維持に寄与していきましょう。そして自らの健康管理にもどうかご留意ください。

 折しも、今年は診療報酬改訂の年でもあります。2024年度から本格稼働する「医師働き方改革」に向けた最後の改訂です。

 しかし、昨年12月8日の中医協総会では、支払側は「(診療報酬を)引き上げる環境にない」との主張をしています。このままでは、コロナ禍で疲弊している医療機関の労働環境、経営環境の改善にはなす術がありません。引き続き、保険医協会及び保団連は、署名活動や国会行動を行い、医療体制の窮状を粘り強く政府に訴えていきます。

 今年も、保険医協会をよろしくお願いいたします。

■群馬保険医新聞2022年1月15日号