【論壇】そのゴミは本当に感染性廃棄物なのか

【2022. 9月 15日】

 我が国における医療廃棄物は概括にいえば

(1)特別管理廃棄物(感染性)

(2)産業廃棄物(非感染性)

(3)一般廃棄物(非感染性)

の3つに分類される。(1)はさらに特別管理産業廃棄物および特別管理一般廃棄物に分けられる。特別管理廃棄物とは産業廃棄物および一般廃棄物をさらに厳格に処理をするものであり、その分コスト高となる廃棄物である。

 現在、感染性産業廃棄物以外の特別管理産業廃棄物については、その定義が具体的に定められている。一方、感染性産業廃棄物の定義は「感染性廃棄物とは、医療関係機関等から生じ、人が感染し、若しくは感染するおそれのある病原体が含まれ、若しくは付着している廃棄物又はこれらのおそれのある廃棄物を言う」と具体的とは言い難く、これでは判断に迷ってしまう。

 平成12年12月に環境省は、行政改革推進本部規制改革委員会から「『廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル』(環境省等)(以下マニュアルという)は、感染性廃棄物の判断の多くを医師等に委ねていて判断基準が客観性を欠いている」等の指摘を受け、平成16年3月に感染性廃棄物の判断基準の客観性の向上等を加味した改訂を行った。(大阪府の医療廃棄物Q&Aより)

 以降は最新版のマニュアル(令和4年6月)の内容に沿って話を進める。感染性か否かを分別するための評価項目は、3段階からなっている。ステップ1は「形状」の観点で、①血液等の体液そのもの、②病理廃棄物、③病原微生物に関連した試験、検査等に使用されたもの、④血液等が付着している鋭利なもの、の以上である。なお、鋭利なものは血液付着の有無に関わらず感染性廃棄物とするよう注釈がついている。ステップ2「排出場所」の観点は、①感染症病床等、手術室、緊急外来室、集中治療室、検査室において治療、検査等に使用され、排出されたもの、②実験室・研究室で微生物実験に使用され、排出されたもの、の以上である。ステップ3「感染症の種類」の観点は、①感染症法の一~三類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症の治療、検査等に使用され、排出されたもの、②感染症法の四、五類感染症の治療、検査などに使用され、排出された医療器材、ディスポーザブル製品、衛生材料等(ただし、紙おむつについては、特定の感染症に係るもの等に限る。)、の以上である。「これらステップのいずれの観点からも判断ができない場合、血液等その他の付着の程度やこれらが付着した廃棄物の形状、性状の違いにより、専門知識を有する者(医師、歯科医師、獣医師)によって感染の恐れがあると判断される場合は感染性廃棄物とする」となっている。

 感染性廃棄物が増える大きな要因の一つに、客観的な評価が困難な物品(代表としてグローブやガーゼなど)の存在がある。これらが感染性廃棄物となるケースについて考えてみたい。例えば、これらが手術室から排出されれば、血液付着の有無に関わらずステップ2に該当し、感染性廃棄物となる。また、HBV感染症患者の治療にこれらが使用されたならば血液付着の有無に関わらずステップ3に該当し、感染性廃棄物となる。悩ましいのはステップ2または3に該当しないケースである。基本的に専門知識を有する者により感染の恐れを判断するのだが、その判断の目安が大阪府の医療廃棄物Q&Aに示されている。「多量の血液が付着していることにより血液がこぼれ落ちて周囲を汚染するおそれがあるものを感染性廃棄物とし、血液の付着の程度が少量であるものや乾燥しているものは、非感染性廃棄物とする」とし、「唾液、排泄物、嘔吐物等は、血液と比較して感染性は低いが、それらが多量に混入していれば感染性廃棄物とする」としている。なお、グローブは感染性がないと判断されればあくまでも産業廃棄物である。

 もう一つの要因は、運搬業者側にある。一般的に感染性廃棄物に比べ非感染性廃棄物の運搬費は当然安価となるが、特別管理産業廃棄物の運搬業者によっては非感染性のグローブ等の産業廃棄物を感染性廃棄物と区別せず、同価格で運搬を行っているケースがあると聞く。これではグローブ=感染性廃棄物と思い込んでしまうのも無理はない。コストを考えても別の産業廃棄物(非感染性)運搬業者に委託するしかないだろう。

 感染性廃棄物はいつ、どこで、誰に、どのようにして感染の脅威を与えるかを考えれば、患者や医療従事者に対して講じる交差感染の防止を主眼とした感染対策と同列ではなく、適切な梱包と厳重な保管が重要となってくる。しかしながら、50リットルまたは80リットルダンボールに15キログラムを上限とする固定価格制をとっている特別管理廃棄物運搬業者が多いと聞く。処分場の取り決め事なのだから致し方ないだろうが、これでは「食品の詰め放題」と同様の心理が働き、感染性廃棄物を上限の15キログラムまで潰すだけ潰して詰め込むことに繋がる非常に危険なシステムではなかろうか。マニュアルにも、「内容物の詰めすぎにより、容器の蓋の脱落、注射針の容器外側への突き抜け、内容物の容器外部への飛散・流出等が生じるおそれがあるため、容器に感染性廃棄物を詰め過ぎない(容器容量の8割程度)ように注意する」とある。

 コロナ禍の現在、急激な勢いで感染性廃棄物は増え続けている。運搬業者の中には感染性廃棄物の量が多すぎて、新規の取引は受け付けないところもあると聞く。このままでは運搬・処理価格の高騰や廃棄物運搬の引受拒否のような事態を招く恐れがある。廃棄物を減らすための取り組みの一つに「3R(Reduce・Reuse・Recycle)」があるが、我々が今すぐにできることは、院内より排出された廃棄物をマニュアルに則って分別し、感染性廃棄物をできるかぎり減らすことだろう。ゴミは機械的に「ゴミ箱」に廃棄するのではなく、感染性廃棄物か否か、産業廃棄物か否かを常に意識し、ゴミ箱のみならず運搬業者も適宜仕分けて排出することこそが、感染性廃棄物を減らすためには大変重要なことなのだろう。

(研究部・歯科部長 狩野証夫)

■群馬保険医新聞2022年9月15日号

会員限定「ニトリル手袋」取次ぎのご案内

【2022. 9月 02日】

会員のみなさまへのサービスの一環として、ニトリル手袋の取次ぎ(卸価格提供)を行っております。今回、品質・価格等を鑑み、NBR-600からNBR-2600へ取扱商品を変更いたしました。ご注文は下記申込書に必要事項をご入力いただき、FAX(027-220-1126)で群馬県保険医協会までお送りください。

申込方法/こちらを印刷し、FAX(027-220-1126)でお申込みください。→申込書

■三興化学工業株式会社 エクセレント ニトリル手袋 NBR-2600 →商品チラシ

 1ケース価格(200枚×10箱) 9,350円(税込)1枚当たり4.675円(2022年9月1日現在) 

ごあいさつ

【2022. 8月 18日】

群馬県保険医協会 会長 小澤 聖史

 2022年7月14日の第52回群馬県保険医協会定期総会にて、清水会長に代わり新会長に選任されました。

 私より適任の方が多くいる中、副会長や理事、皆様方の推薦を得て、少しでもお役に立てればと考え、力不足ではありますが会長を引き受けさせていただきました。

 保険医協会は医師会、歯科医師会と違い、医科・歯科一体の組織であることが大きな特徴です。その特徴を最大限に生かせるように、医療問題に取り組む所存です。

 その中で他職種との協力も必要と考えています。以前歯科技工士会の皆様と懇談をしたときに、医師・歯科医師だけでなく医療を支える多くの方々と意見交換をする必要性を感じました。今後は他職種との連携を踏まえ、様々な方と交流していきたいと思います。

 医療対策では、最近少なくなってきている医科向けの講演活動も再開させたいと考えています。会員の皆さんもこの方の講演が聴きたいというリクエストがありましたら事務局までお知らせ下さい。

 個別指導対策では、弁護士の紹介や帯同の実績を積み上げ、よりよい指導対策を行えるようにしていきたいと考えています。そのためには弁護士の先生との勉強会や講演会を開催していく事が必要と考えています。

 協会は発足当時からひとつの政党に偏ることなく、思想信条は自由という立場を貫き通しています。今後もこの信条を貫き通していくことは当然のことであり、一つ一つの法案に対し是々非々で対応していきたいと考えています。

 政府の医療費削減の政策が続く中、新型コロナウイルス感染症がパンデミックとなりました。感染症に対しての準備不足、病床の減少政策による入院制限など様々な問題が露見し、市民のみならず、医療従事者も多くの犠牲を払い疲弊してきています。今こそすべての人が医療問題に向き合い、医療を支え、皆保険制度を継続していけるように取り組んでまいります。  

 会員の皆様、理事会の皆様、事務局の皆様と一緒に群馬県保険医協会を盛り上げていく所存です。皆様一人一人のご協力をお願いいたします。

■群馬保険医新聞2022年8月15日号

【論壇】18歳成人について

【2022. 7月 19日】

 今年の4月より、民法改正によって成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。1876年(明治9年)太政官布告で定められてから、146年ぶりの成人年齢の変更となりました。なぜ引き下げられたのでしょうか。三つの理由をあげたいと思います。

 一つ目は、若者の社会参加を促進する目的で始まった憲法改正の手続きでした。2007年に国民投票法が制定され、憲法改正の賛否を問う国民投票にあたっては、18歳以上の国民に投票権が与えられることになりました。これにより、2016年には公職選挙法が改正され、選挙権年齢が18歳以上に拡大されました。これに伴い、他の権利や義務が発生する民法の成人年齢の引き下げが行われました。

 二つ目は、少年による凶悪事件が発生するたびに起こる、少年法への批判からでした。成人は、罪を犯すと刑事事件として起訴されますが、少年は保護・更生させることが大事と考えられてきました。しかし、民法改正に伴い、少年法も変わりました。法律の対象年齢は従来の20歳未満のままですが、18歳と19歳の少年は「特定少年」と位置付け、検察官に送られる罪の幅を拡大し、成人の犯罪の扱いに近付けました。起訴されれば、実名や顔写真など本人を特定できる報道も可能となりました。

 三つ目は、男女の結婚年齢の統一です。明治時代に民法で男性は17歳以上、女性は15歳以上と定められ、戦後の民法改正で男性18歳以上、女性16歳以上と引き上げられました。1996年には法制審議会より結婚年齢の男女統一の答申があり、さらに2003年、国連の女子差別撤廃委員会から「差別的」として改正するように勧告されるなど様々な議論がなされ、ようやく2022年4月より民法の成人年齢と結婚年齢が18歳に統一され男女差が解消されました。

 さて、海外での成人年齢はどうなっているのでしょうか。国や地域によって18から21歳とばらつきがあり、中には14歳とかなり低い年齢を基準にしている国もあります。欧米の多くの成人年齢は21歳でしたが、1970年代にベトナム戦争への軍隊派兵や徴兵制度の関係から、18歳に引き下げられました。日本でも、明治の近代化とともに、近代国家制度である学校と軍隊が成人年齢を規定しました。明治6年に制定された徴兵令で満20歳が徴兵年齢とされた為、第2次世界大戦以前の日本の庶民が成人を意識するのは徴兵検査であったともいわれます。ロシアとウクライナが戦争を起こしている現在、複雑な心境になります。

 成人とは何でしょうか。成年または成人年齢は、法的には、単独で法律行為が行えるようになる年齢のことです。民法が定めている成人年齢は、「一人で契約をすることができる年齢」であり、「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味があります。成年に達すると、親の同意を得なくても、自分の意思で様々な契約ができるようになります。

 一般社会においては、成人とは身体的、精神的に十分に成熟している年齢の人間を指すことが多いです。戦前は身体の成熟と社会での成人の認知はほぼ一致していました。しかし戦後は経済成長とともに高学歴化が進み、現在成人年齢とされる20歳では約7割の若者は在学していて、経済的には自立していません。社会で一人前と認められるのも、結婚をする年齢も30歳前後となってきています。一方、身体的な成熟は早くなっているので、子どもから大人への移行期である青年期が長くなりました。また、「成人」も多様化しています。経済成長が止まり、終身雇用制度が崩れ社会の価値観が多様になっています。学校教育も多様な「個性」を尊重し、伸ばす「支援」が求められています。

 憲法改正のための手続きを定める法律に端を発して18歳成人の議論がされました。 既に経済的に自立した若者は、18歳成人は親を煩わすことなく、会社等の運営ができ喜ばしいことのようです。しかし、心配なこともあります。親の知らないうちに高校生が結婚することも可能ですし、社会経験が少ない若者が高額な契約をさせられることもあります。若者を消費者被害などからどう守っていくか。本人たちの自覚に加え、家庭や学校の支えも大事なのではないでしょうか。今回の18歳成人は成人になる若者だけでなく、既に成人になっているものも、社会や政治に関心を向けるきっかけになったと思います。

(文化部長 北條みどり)

■群馬県保険医協会2022年7月15日号

歯科の施設基準に係る届出書(2022年度版)

【2022. 7月 05日】

※ご不明な点等につきましては、事務局社保担当までご連絡ください。TEL:027-220-1125

【歯初診】

歯初診 別添7

歯初診 様式2の6(届出添付書類)

歯初診 様式2の7(7月報告書)

【外来環】

外来環加算1 別添7

外来環加算2 別添7

外来環 様式4(届出添付書類)

【か強診】

か強診 別添2

か強診 様式17の2(届出添付書類)

【歯援診】

歯援診1 別添2

歯援診2 別添2

歯援診 様式18(届出添付書類)

歯援診 様式18の2(7月報告書)

【届出に関するよくあるご質問】

施設基準の届出に関するよくあるご質問

【群馬県届出医療機関名簿】

群馬県届出医療機関名簿一覧

-厚労省HPから転載-

【論壇】民主主義と命と健康

【2022. 6月 15日】

 ウクライナ危機といわれるこの戦争はいつまで続くのか。一向に先が見えない。この間にも、一般市民を含む日に何十何百という命が失われている。

 21世紀にこんな殺戮が行われようとは、ほとんどの日本国民は想像だにしなかったのではないだろうか。

 私は1954年生まれだが、小学生の頃、21世紀という時代は『鉄腕アトム』のような、ロボットと人間が共存する平和な社会になるだろうとワクワクしたものだ。

 しかし現実は、社会進歩の時計が逆回転するような事態が勃発している。

 今、世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が収束できずにいる。ウクライナでも、もちろん例外ではなかろう。

 しかし、ウクライナ国民にとってはそれどころではない。敵の爆撃を避けるため、地下で身を寄せ合いながら怯えている人々の映像が流された。しかも密閉された薄暗い空間でマスクもしない状態。当然ウイルスは蔓延しているはずである。しかし、命あっての物種。快適な環境、充実した生活、生き甲斐のある人生、そんなことは二の次三の次。とにかく生きること、国を守ること、それこそが一番で、人間らしい生活は後回しにされる。

 今回のロシアの侵攻を、プーチン大統領は「NATOの脅威に対抗するため」と正当化しているが、それが真意なのかはわかりかねる。ロシア国民も同じ考えかどうかはともかく、何れにしてもそのためにとんでもない惨事が起こっている現実がある。

 欧米各国が協調してロシアに非難や制裁を科しているのは当然だと思う。しかし冷静になってみると、責められるべきはロシアだけか。

 2003年、当時の米ブッシュ政権は、イラクの大量破壊兵器保有を口実に先制攻撃を加え、民間人を含む多大な犠牲者を出した。当時の日本の小泉政権は、アメリカのこの行動をいつになく即座に支持した。

 また、もともとはイギリスに責任のあるイスラエル・パレスチナ紛争では、軍備に圧倒的に勝るイスラエルが、幾度となくパレスチナを砲撃し、今も多大な犠牲者を出している。

 これらの紛争も多大な市民の犠牲者を出しているにも関わらず、国際社会が協調して批判や制裁を科したことはなかった。アメリカがどちら寄りの立場を取っているのかが大きく影響していると考えられる。

 常識的にみて、プーチン政権の行動が異常であることに疑う余地はない。ただし、どこからみた常識なのかはまた別の評価となろう。ここでは、民主主義的観点としておく。

 民主主義とは「権力、あるいは権利が人民(国民)にある」とする政治原理をいう。現代では、人間の自由や平等を尊重する立場をも示すとされている。

 人民(国民)が自由な判断をするには、その判断基準となる正しい情報が得られなければならない。徴兵制を敷くロシアでは、その対象となる若者が、行き先も知らされないまま今回の戦場に駆り出され、既に何万という兵士が帰らぬ人となったと聞く。徴兵された兵士に民主主義は適用されないのか。

 権力が一人に集中すると、その言動に明らかな問題があっても、周囲は自らの命や地位を守るため、権力者に対して不快な情報を隠し、あるいは偽の情報を伝えるようになる。いわゆる「裸の王様」状態である。これにより、権力者は己の俯瞰的な状況を見誤ることになる。そして権力者以外の誰かが犠牲となる。今のロシアがまさにこの状態にあるが、わが国でも程度の差こそあれ、似たような状況があった。

 「森友・加計問題」「桜を見る会」等、社会人の誰が考えても疑惑の残る事柄が、それを指摘する記者からの質問に対しても、権力者周辺の「批判に当たらない」との木で鼻をくくったような答弁で受け流されてしまったことは記憶に新しい。

 これは、民主主義にとって実に危険な兆候である。

 さて、私は以前から、医療人としての戦争反対の根拠を

・多くの命を奪う大量殺戮

・負傷者の激増による医療体制の逼迫

・(その一方で)戦費捻出のための医療費等削減

としてきた。

 そしてわが国でも、ロシアの脅威を軍事拡充の口実にする意見もあるが、これには断固反対である。

 今、日本がそのような方向に進めば、現在少なからず日本と対立関係にある国々の感情を逆撫ですることになり、不要な緊張関係を増長させることになるからである。

 そして、もう一つ私が実感していることは

・外交は最大の防衛

である。

 外交を選択肢に入れなかったプーチン大統領の失策と罪はとてつもなく大きい。

(総務部長 清水信雄)

■群馬県保険医協会2022年6月15日号

【論壇】歯科の施術基準 質の担保と政策誘導 活用で患者サービス向上を!

【2022. 5月 16日】

 歯科における施設基準は、補綴物維持管理料の導入から始まりました。

 補綴物維持管理料とは、その施設基準を届け出た医療機関において、歯に冠を被せた場合などに、実質的にその後2年分 成功報酬を前払いする仕組みです。1本の歯に冠を被せた場合(単冠)は、100点(導入当初は150点)が補綴物維持管理料となります。但し、冠を被せた日(装着日)から2年間は、保険診療の対象となる場合は理由の如何にかかわらず、冠を入れた医療機関で再製作する場合の費用は医療機関の負担となります。

 この管理料の導入当初、点数の根拠は冠が口腔内に維持される平均的な期間をもとに単冠の場合は150点と説明されていましたが、後に補綴物維持管理料が普及したとの理由で100点に減額されました。これは、政策誘導として当初高めに設定したが、普及したので減額したという訳です。

 また、補綴物維持管理料の施設基準を届け出ない医療機関は2年以内の再製作の費用を請求できますが、その請求額は7割と低く抑えられ、しかも、この導入の際に補綴物の維持管理とは無関係な点数格差も導入されました。補綴物維持管理料の施設基準を届けていない歯科医療機関は歯の根の治療の際の加圧根充処置(現在の点数では大臼歯の場合210点など)は算定できないこととされました。

 この補綴物維持管理料は、質を担保するためという側面もありますが、「状態の悪い歯に保険の費用を使用するな!」という医療費抑制の意味合いもありそうです。

 その後、歯科の施設基準は次々と導入され、今では50以上になります。

 施設基準は明らかな政策誘導です。確かに医療の質を担保するという側面、必要な医療機器の普及を図るという側面等があります。

 例えば、手術用顕微鏡加算の施設基準を届け出ている医療機関で、歯科用CTで得られた診断結果を踏まえて手術用顕微鏡を用いて、特に複雑な歯の根の治療を行った場合は400点の加算が算定できるという仕組みは、治療の質の向上につながるかもしれませんし、必要な機器購入の費用確保につながるかもしれません。

 しかし、施設基準を届けている、いないに関わらず、同じように提供できる医療内容に明らかな点数格差を設けられています。その最たるものが今春の改定で廃止されたSPTⅡ(歯周病安定期治療Ⅱ)かもしれません。このSPTⅡはかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)のみが算定できることになっていました。20本以上の歯がある場合、か強診が算定できるSPTⅡは830点(毎月算定可能)、か強診以外が算定するSPTⅠは350点(原則3ヶ月に1回算定)でした。

 歯周病安定期治療(SPT)とは中等度以上などの歯周病に対して治療を行い、概ねコントロールできているが、炎症が一部残っている場合に継続的に管理していくことを指します。この治療に関しては、か強診でなければ提供できないような中身はありません。

 保団連の2022年診療報酬改定への要求の中では、「同じ医療行為を行っても、1物2価とした問題点が残ったままになっている。歯科医療担当者にとっても、患者・国民にとっても不幸な矛盾であり、解消すべき問題点である。」とされています。

 2022年診療報酬改定に対する宇佐美保団連歯科代表の談話では「歯周病安定期治療では、か強診が算定できるSPTⅡがSPTⅠの算定要件に揃えるかたちで一本化された。」SPTの一本化については、算定要件の整理を求めた保団連要求が実現した。しかし、SPTⅡにあった「算定期間の短縮」や「Ⅰに比べて高い点数」といった特徴は、例外規定やか強診加算などに形を変えた。改定前と変わらず、機能評価のあり方に不明瞭な点が問題として残存しており、引き続き、検討・改善が必要である。」とされています。

 1物2価の解消は望ましいのですが、高い点数を低い点数に統合したことを「成果」と誇るのは受け入れがたいと感じる会員は少なくないと思います。中医協の中では、か強診に『プレミア価格』を設定することに支払い側が反対しているので、今後も『改善』が続くものと思われます。

 施設基準は今後も政策誘導の手段として活用されていくものと思われますが、安易な拡大については反対しつつ、手続きの簡素化、役割の終わったものの廃止など、医療機関の負担軽減を図ってもらいたいと思います。また、施設基準を活用して、医院経営の改善と患者サービス向上につなげるがことも必要な対応と思います。

(審査指導対策部歯科 半澤 正)

■群馬保険医新聞2022年5月15日号

第51回保団連夏季セミナー開催のご案内

【2022. 5月 13日】

 保団連では、新自由主義による経済・社会・医療など転換と新型コロナ感染症への対応、来たる参議院選挙、後半期の運動に向けた、保団連方針への確信を深める場として夏季セミナーを開催しております。

 当会会員の方(会員限定)でご参加希望の方は、ご希望日・ご希望講座を群馬協会事務局までご連絡ください。TEL:027-220-1125 FAX:027-220-1126 mail:kyoukai-4970@gunma-hoken-i.com

申込期限日:2022年5月31日(火)

■第51回保団連夏季セミナー

1.日 時

  2022年7月2日(土)18:30~21:00

      7月3日(日) 9:30~15:30 

2.参加形式

    WEB参加 

3.費用

 無 料(群馬協会会員限定:WEB参加費用5,000円は協会にて負担いたします。)

4. 主な内容

【7月2日(土) 第1日目】

  18:30 ~21:00 <全体会司会 森元主税副会長>                               

・主催者挨拶 住江 憲勇 会長

・基調提案 「コロナ危機を打開し医療再建・充実を(仮)」中島 幸裕 副会長                  

・記念講演 「医療・社会保障を基軸とする政治転換に向けて」(仮)中野晃一 氏(上智大学国際教養学部教授)

東京大学文学部哲学科、オックスフォード大学哲学・政治コース卒業。プリンストン大学で博士号(政治学)。専門は比較政治学、日本政治、政治思想。

「立憲デモクラシーの会」の呼びかけ人の1人。野党統一候補の擁立を後押しした市民団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」の中心となる。

【7月3日(日) 第2日目】 

  9:30 ~12:00 <講座>  

※ すべて7月3日(日)の午前中に並行して行う企画

・講座1 「コロナ禍を踏まえた財政・金融政策(仮」」 

  講師: 建部正義氏(中央大学名誉教授)

       (担当役員:馬場副会長、太田理事、馬場(一)理事)

・講座2 「憲法9条が謳う平和主義を国際外交から考える(仮)」 

  講師:柳澤協二氏(元内閣官房副長官補)
                       (担当役員:永瀬理事、矢野理事)

・講座3 「医学界のジェンダー平等を考える

  -医学界の男女格差と「男並み」を支える女性の無償労働」(仮)

       講師:安川康介 氏(米国内科・感染症専門医)

                (担当役員:斉藤副会長、細部理事、玉川理事)

※講師依頼中のため、今後変更する可能性もあります 

・講座4 「2022年度改定に向けて、歯科医療のこれからを考える」 

  講師:田辺 隆氏(保団連副会長)

          (担当役員:宇佐美歯科代表、池理事、新井理事)

13:00 ~ 15:30 <シンポジウム>

テーマ  コロナ禍で問われる医療者と患者の向き合い方(仮)

【趣旨】

 2022年診療報酬改定は、新興感染症への対応、医療従事者の処遇改善など山積する課題へ対処し、コロナ禍から医療の再建・充実に向けて診療報酬の大幅引き上げを目指すべきであった。

 しかし、岸田政権は、リフィル処方箋、オンライン診療の導入など患者の受診行動の変容や医療のあり方を大きく変容させ、医療費抑制につながる改定に終始し、コロナ対応と地域医療を同時に支える医療機関経営への底支えする改定とは程遠い状況にある。

 私たち医療者は6度の感染の波に翻弄されながら、日常医療と同時に発熱外来、検査、ワクチンなどコロナ対応で役割が求められた。コロナ禍を踏まえて患者とのより良き関係づくりを作るために私たちが向き合うべき課題とは何かを考える。

【基調提案、パネリスト】

基調提案:邉見公雄氏(地域医療・介護研究会JAPAN、全自病協名誉会長)

パネリスト

〇在宅医療の現場から 橘田亜由美氏(東大阪生協病院院長)

○外来医療の現場から 林裕章氏(林外科医院副院長・保団連理事)

○入院医療の現場から 山田秀樹氏(立川相互病院副院長)

         (担当役員:竹田副会長、森元副会長、吉中理事、井上理事)

【会員限定】歯科の施設基準に係る講習会(WEB)開催 2022年度診療報酬改定・標準予防策、新興感染症対応・歯初診・外来環・か強診・歯援診対応

【2022. 5月 02日】

日 時 2022年7月3日(日) 9:00~13:00

形 態 WEB講習会(ZOOM使用)

対 象 会員本人のみ

参加費 無料

定 員 90人(先着)

【第1部】 9:00~10:35 ●院内感染防止対策 ●医療事故対応●偶発症に対する緊急時対応

講師 狩野証夫氏  狩野歯科口腔外科医院院長 医学博士 口腔外科専門医・口腔外科指導医 顎顔面インプラント指導医/顎関節症専門医/群馬県保険医協会理事

【第2部】10:50~11:20 ●歯科の重症化予防に資する継続管理

講師 狩野証夫氏

11:20~13:00 ●高齢者の心身の特性●認知症に関する内容●口腔機能の管理

講師 種村達哉氏  医療法人上毛会伊勢崎福島病院 歯科医長/日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士/ 日本静脈経腸栄養学会TNT研修終了/北関東摂食嚥下リハビリテーション研究会世話人

締 切 2022年6月8日(水)

下記申込書を印刷してFAXにてお申込みください。

ZOOMテストのご案内もご覧ください。

参加申込書(チラシ表)

ZOOMテストのご案内(チラシ裏)

※歯科会員のみなさまには、全国保険医新聞5月15日号に参加申込書を同封いたします。

【第30回保険医写真展】2022年8月3日(水)~7日(日)10:00~16:00前橋プラザ元気21 1階にぎわいホール(前橋市本町2-12-1)

【2022. 4月 26日】

出品応募期間は、5月13日(金)~6月20日(月)
●応募資格:群馬県内在住・在勤の保険医と家族・従業員
*保険医協会の会員でなくても上記資格を満たしていれば応募できます。
●応募規格:半切または四ツ切(ワイド四ツ切も可)
●募集点数:100点
●出品数:課題部門「乗り物」、自由部門合わせて一人3点まで
●出品料:1000円(出品点数にかかわりなく)
●パネル代:2500~3000円(税抜)
●送付先:〒371-0023前橋市本町2-15-10群馬県保険医協会

会員には、4月号の群馬保険医新聞に、案内を同封しました。

たくさんのご応募をお待ちしております。

※保険医写真展応募票が必要な方はこちらから…保険医写真展応募票

【正誤】医科「点数表改定のポイント2022年4月版」

【2022. 4月 21日】

全国保険医団体連合会が出版しております「医科点数表改定のポイント2022年4月版」正誤表を掲載させていただきます。

この他に訂正等ございましたら、恐れ入りますが群馬県保険医協会までご連絡ください。

<正誤4月21日現在>

【論壇】善き友

【2022. 4月 19日】

 徒然草第117段は推奨する友だちとして、「一にはものくるゝ友」を挙げている。互いの交流を促進し、円滑に進めるためにプレゼントは有意義である。根源的な経済活動である物々交換の発展形と言えるかもしれない。

 物品のやり取りが1対1の関係であれば簡単だが、そこに第三者が存在すると複雑である。医師歯科医師と医療業者との関係は第三者である患者に影響を及ぼす。医療行為の目的は患者の健康増進であり、治療法の選択は当然患者の利益が最優先される。

 薬剤の受け渡しについて考えてみると、薬を出す、あるいはもらうという表現があるように、薬剤を購入しているのは医療機関で、患者には買ったという意識が希薄である。持ち帰らない注射剤であればなおさらである。

 営利企業である製薬会社が医師歯科医師に物品を渡すのは、それが企業の利益につながると判断するからである。関係を構築した医師歯科医師が会社の利益になる行動をとるとの目論見がある。さらには執筆や講演などの対価として金銭の授受が生じれば、企業の成績向上は医師歯科医師自身の利益に直結する。そこには患者の利益にならない薬剤が選択される余地があり、企業及び医師歯科医師と患者の間には利益相反が存在する。放送局はスポンサーの不利益を避けるが、そのために視聴者は正確な情報を得難くなり損失を被る可能性があるのと同じ原理である。

 処方は医師歯科医師の役割であり、患者の薬剤選択の幅は狭い。そして日用品と違い患者にとって薬剤の優劣は判断しがたいので利益相反の影響を解消する仕組みが必要である。患者の本来の利益が保証される方策を考えてみる。

 一般的な取引ならば事前に利益相反する関係者の了承を得てから行うのがルールであるが、誰が患者となって来院するかわからないのであるから、医師歯科医師が将来の患者から了解を得ておくのは不可能である。しかしあらかじめ企業との関係が公表してあれば患者は受診前に閲覧できる。

 現在企業から医師への資金提供は各企業のインターネットサイトで公表されているが、ひとりの医師が複数の企業から受け取っているすべての資金を調べるのは容易でない。特定非営利活動法人Tansaと医療ガバナンス研究所による「マネーデータベース製薬会社と医師」のサイト(https://db.tansajp.org/)では2016年から2018年までの資金提供が検索でき、貴重な情報源である。しかしデータベースの構築には多大な労力が必要で、本来は国の制度として一元的な管理が望ましい。

 利益相反が避けられない医師歯科医師の診療を受けるのであれば、患者は利益相反のない他の医師歯科医師によるセカンドオピニオンを得てから治療を選択することも可能である。医師歯科医師に診療情報として企業からの資金提供を公表する義務はないが、患者にとって有意義であることが理解されれば自発的な公表が普及する可能性はある。

 医師会生涯教育制度の学習内容として講演会への出席が実績として評価される。多数の講演会が企業の資金提供により行われており、その内容は薬剤のプロモーションに近い場合がある。講演での情報提供に偏りがないか懸念を抱かざるを得ない。講演料や交通の便を供されているにも関わらず利益相反がないと申告する講師もあいかわらず存在し、企業を「よき友」としている意識が垣間見える。製薬企業がなければ医療は成り立たない。しかし患者あっての医療である。企業との必要な協力は惜しむべきでないが、内容を伴わず宣伝に利用されているような関係は医療不信の元になるであろう。疑問を抱かれるような資金は1円たりとも受け取らないようにしていきたい。

(経営対策部 本澤 龍生)

■群馬保険医新聞2022年4月15日号

【正誤】医科「常用点数早見表2022年4月版」

【2022. 4月 11日】

全国保険医団体連合会が出版しております「医科点数表改定のポイント2022年4月版」正誤表を掲載させていただきます。

この他に訂正等ございましたら、恐れ入りますが群馬県保険医協会までご連絡ください。

→診療所用<正誤3月29日現在>

→病院用<正誤3月29日現在>

第30回保険医写真展/第2回写真撮影会のご案内

【2022. 4月 08日】

【第2回写真撮影会】

2022年5月29日(日)雨天決行

場 所 中之条ガーデンズ 群馬県吾妻郡中之条町大字折田2411

    正面入口集合・解散

参加費(入園料、昼食弁当、交通傷害保険含む)

  大人       2,500円

  小人(小中学生) 2,000円

  幼児       1,500円

募集対象 群馬県在住・勤務の保険医と家族、従業員(会員でなくてもご参加いただけます。)

写真撮影会の参加申込みはこちらから → 写真撮影会申込書

※会員のみなさまには、全国保険医新聞4月5日号に写真撮影会申込書を同封いたしました。

【第30回保険医写真展】(作品募集)
2022年8月3日(水)~7日(日)
10:00~16:00
前橋プラザ元気21 1階にぎわいホール(前橋市本町2-12-1)

作品応募期間は、5月13日(金)~6月20日(月)
●応募資格:群馬県内在住・在勤の保険医と家族・従業員
*保険医協会の会員でなくても上記資格を満たしていれば応募できます。
●応募規格:半切または四ツ切(ワイド四ツ切も可)
●募集点数:100点
●出品数:課題部門「乗り物」、自由部門合わせて一人3点まで
●出品料:1,000円(出品点数にかかわりなく)
●パネル代:2,500~3,000円(税抜)
●送付先:〒371-0023前橋市本町2-15-10群馬県保険医協会

詳細は、添付ファイル「写真展応募票」をご参照ください。

たくさんのご応募をお待ちしております。

写真展の作品応募はこちらから → 写真展応募用紙

※会員のみなさまには、全国保険医新聞4月5日号に写真展応募票を同封いたしました。

【正誤】歯科「歯科診療報酬2022年改定の要点と解説」

【2022. 3月 29日】

全国保険医団体連合会が出版しております「歯科診療報酬2022年改定の要点と解説」正誤表を掲載させていただきます。

この他に訂正等ございましたら、恐れ入りますが群馬県保険医協会までご連絡ください。

<正誤3月25日現在>

新点数検討会質問用紙、アンケート用紙

【2022. 3月 29日】

■新点数検討会のアンケート用紙・質問用紙、こちらを印刷してFAXにてお送りください。 

アンケート・質問用紙

【会員限定】歯科の施設基準に係る講習会開催 ―歯初診・外来環・か強診・支援診―対応

【2022. 3月 22日】

日 時 2021年516日(日) 9:30~13:00

場 所 群馬県生涯学習センター 多目的ホール

前橋市文京町2-20-22 ☎027-224-5700

対 象 会員本人のみ

参加費 無料

定 員 90人(先着)

第1部】 9:30~10:50 ●院内感染防止対策 ●医療事故対応●偶発症に対する緊急時対応

講師 狩野証夫氏  狩野歯科口腔外科医院院長 医学博士 口腔外科専門医・口腔外科指導医/顎顔面インプラント指導医/顎関節症専門医/保険医協会理事

【第2部】11001130 ●歯科の重症化予防に資する継続管理

 講師 狩野証夫氏

11301300 ●高齢者の心身の特性●認知症に関する内容●口腔機能の管理

講師 種村達哉氏  医療法人上毛会伊勢崎福島病院 歯科医長/日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士/ 日本静脈経腸栄養学会TNT研修終了/北関東摂食嚥下リハビリテーション研究会世話人

締 切 4月30日(木)

こちらを印刷してFAXにてお申込みください。→参加申込書

※歯科会員のみなさまには、全国保険医新聞4月5日号に参加申込書を同封いたしました。

【論壇】コロナ禍におけるフレイル

【2022. 3月 15日】

 2020年に突如として起こった新型コロナウイルス感染症(COVID―19)。瞬く間に全世界に広まり、未だ終息の気配がみられぬまま今日に至っている。日々刻々ともたらされる感染状況を鑑みるに、以前のような日常生活を取り戻すことが容易ではないことは明らかである。

 この新型コロナウイルスは我々にマスクの着用、ソーシャルディスタンスなど新しい生活様式(ニューノーマル)をもたらし、また個々の感染対策、行動制限と併せて、医療体制の整備も進められている。

 但し、高齢者の視点でこの新型コロナウイルス感染症をみると、直接的医療とは違う側面がみえてくる。自粛生活の長期化による活動性の低下(生活の不活発)と社会性の低下である。更にこれらの事象を基盤とし、「フレイル」が進んでいる点である。

 新型コロナウイルス感染症による自粛生活により体を動かすことが少なくなり、筋肉の萎縮が進行して「フレイル」が起こり始める。閉塞感のある生活は社会とのつながりを乏しくし、メンタルヘルスへの影響も計り知れない。

 フレイルとは2014年に日本老年医学会により提唱され、健康な状態と要介護状態の中間の段階を指す。フレイルは身体的フレイル、精神・心理的フレイル及び社会的フレイルの3種類に分けられる。

  • 身体的フレイル…運動器の障害による運動機能低下(ロコモティブシンドローム)、筋力の低下(サルコペニア)更に栄養素の不足などが該当する。
  • 精神・心理的フレイル…うつ状態や軽度認知症の状態があたり、意欲の低下、他との交流の減少も状態を悪化させるといわれている。
  • 社会的フレイル…独居など加齢に伴い社会とのつながりが希薄化することを指す。

 高齢者の新型コロナウイルス感染症による重症化は、連日種々の媒体を通じて広く国民へ報道されているが、こうした感染に対する情報の氾濫や自粛生活の長期化などで、多くの高齢者が低活動かつ不活発な生活となっている。これによりサルコペニアの進行によるフレイルの状態悪化、移動能力低下をもたらし、認知機能、免疫力の低下などの負のサイクルをもたらす可能性がある。

 フレイルの対策としては、食・口腔機能面、身体活動、社会参加の3つの柱を軸に日常生活に継続して取り入れることが必要といわれている。高齢者に対し正しい情報に基づく行動や意識の変容をもたらすことで現状を「正しく恐れる」姿勢を促し、身体機能、日々の生活、地域のコミュニティの改善が必要ではないだろうか。

 所謂「コロナ禍」以前の2019年にわが国は2040年までに男女ともに健康寿命の3年以上の延伸を掲げた「健康寿命延伸プラン」を策定した。その取り組みの一つに「介護予防・フレイル対策・認知症予防」があり、「通いの場」の拡充に数値目標を設定している。

 「通いの場」はボランティア、趣味の活動などの社会参加のみならず、運動機能の向上、低栄養の予防、口腔機能の向上、認知機能の低下予防など多岐にわたる。

 厚生労働省の統計によると「通いの場」の数と参加率は、2013年度4・7%であったが、2019年度には12万8768ヵ所で6・7%と増加傾向にあった。

 しかし、2020年4月からの緊急事態宣言を受け、約9割が活動自粛となった。また、高齢者の心身の状態についての調査においてもコロナ前の2019年度とコロナ禍の2020年度では、外出機会の減少、うつの項目の該当者の増加がみられたとのことである。こうした状況を踏まえ、国ではWEBサイトを開設しオンラインの活用を進めている。

 依然厳しい感染状態が国内を覆っているが、感染予防のみを殊更協調するだけではなく、生活の不活発、人と人とのコミュニケーションの低下を防ぐことも重要であろう。

(会員拡大部 瀧川 正志)

■群馬保険医新聞2022年3月15日号

【論壇】コロナ禍が2年過ぎて

【2022. 2月 15日】

 未だ世の中は新型コロナウイルス関連のニュースで溢れている。それもそのはず、新型コロナウイルスが国内で確認されてから2年が過ぎたが、ワクチンの効果などで感染爆発まではいかないが、収束のめども未だ立っていない。

 悲観的な展望はさておき、この2年の様々な経験などから、徐々にではあるが新型コロナウイルスの特性が明らかになってきた。といっても画期的な治療薬はまだ普及している状態とはいえず、現状では新型コロナウイルスワクチン頼みとなっている。

 3回目のワクチン接種。いわゆるブースター接種を早急に行うことが、今できる唯一の方法ともいえる。だが、そのワクチンさえも変異株出現により、効果が少なくなってきており、このことも収束が遅くなっている要因でもある。

 この原稿を書いている1月下旬の段階では世界的にオミクロン株の感染拡大が凄まじく、アメリカ、フランスなど複数の国では連日数十万人の感染者が出ている。また、日本でも感染が急激に拡大し、日々ニュースの上位に位置している。

 これまで諸外国に比べて感染予防が励行されてきたのは、日本人の真面目さにあると思う。手洗い、マスクの着用、アルコール消毒などほとんどの人が徹底し、社会全体で感染が拡大しないように一人ひとりがかなり気を付けているからだと思う。

 その反面、同調圧力が多く、マスクをつけないで外出しようものなら、周囲から後ろ指をさされる。そのため、周囲に人がいない屋外でもマスク着用、一人で車を運転している時でもマスクをつけて運転するなど、行き過ぎの面もあるのではないだろうか?

 特に感染してしまった人が周囲に「ご迷惑をおかけして…」などと謝罪する姿は、感染者が悪者のような印象さえ受ける。芸能人など感染者が謝罪することは、基本的に止めた方がよいのではないか。

 源流を辿ると元は新型の風邪なので、風邪を引いだけで周囲から糾弾されたり、噂が拡がり今いるコミュニティーから追い出されるようなことがあってはならない。コロナに感染すること自体には何の罪もない。

 現状、新型コロナウイルスにはインフルエンザのような特効薬がなく、基本的には対症療法のため、ハイリスクな人が重症化すると死亡率はインフルエンザよりも高い確率である。

 新型コロナ以前のインフルエンザは毎年約1000万人が感染していたが、コロナ後ほとんど感染者がいなくなった。これはコロナウイルスの流行により、インフルエンザウイルスが一時的にではあるが駆逐に近い形になっているか、徹底したコロナの感染予防により、インフルエンザウイルスの感染拡大要因が非常に少なくなったためか、またはその両方が原因であるかである。

 インフルエンザは季節性ウイルスであり、冬の寒い季節に特に注意を払えば、他の季節は普通に生活ができる。そのため、今までそれほどクローズアップされていなかったと思う。それに対して新型コロナウイルスの質の悪いところは、1年中感染力が強いことや接触、飛沫感染のみならず空気感染する可能性が高いことである。

 ウイルスの基本的変異には、感染力が増大して毒性が下がることがある。この法則が仮に成り立つとすれば、今のオミクロン株や次の変異株あたりで普通の風邪に格下げされる可能性もあるのでないか。

 コロナ禍における日本のこれからの政策は、欧米のように感染拡大はある程度許容し経済を回していくか、中国、オーストラリアのように感染対策を厳重に行い、感染を拡大させない事を目指すか岐路に立たされている。いずれにせよ日本社会はどのように新型コロナウイルスと向き合い、どのように日本全体でウイルス対策と経済対策を講じていくかが今後の最大の課題だと思う。

 最後にマスコミの報道は視聴率を上げるために構成を組む。そのため感染が収束しているときは経済が困窮するから行動制限を広げろと言い、

 感染が拡がると何曜日過去最高とか、前週の何倍とか、特に視聴者が興味を引くような数字を強調して放送している。スタジオやロケでの収録はノーマスクでしているにもかかわらず、街中で飲食している姿を放送し、あたかも感染拡大防止を促しているような放送をしているが、まずはマスコミやTV等の出演者がマスク付けて収録すべきではないか。その矛盾には触れられていないが、そうなることを願いたい。

 人は自分の信じたいものを信じて、信じたくないものは信じないので、あちこちから入る情報をよく吟味して冷静な判断の基に日々行動することがとても大切である。

(地域対策部長 亀山 正)

■群馬保険医新聞2022年2月15日号

新年を迎えて

【2022. 1月 25日】

群馬県保険医協会 会長 清水 信雄

 会員の皆様におかれましては、すがすがしい新年をお迎えのことと存じます。

 さて2年もの間、COVID―19に翻弄される生活が続いています。生活を著しく制限され、社会活動そして経済活動も低迷した日々を送っています。これまで格段の意識もせず当然であったことができなくなり、あるいはそれをするのに何倍もの意識と注意を払わなくてはならなくなりました。結果、平和な日常のありがたさをいやが上にも実感することになりました。

 急増したCOVID―19の重度感染者に対する治療のため、病院等の医療機関は、本来の医療機能自体が逼迫するという事態を経験しました。通常の診療が行えなくなる状況、重症患者の処置も思うに任せず、緊急患者も受け入れられなくなる—こんな状況を誰が想像したでしょうか。

 さらには、感染を恐れての受診控えにより、持病が悪化したケースも数多く報告されました。ここでも、医療の大切さと医療体制の脆弱さを実感せざるを得ませんでした。新たな変異株の懸念もありますが、新規感染者数の増加がやや沈静化している今こそ、これまでの経験を生かし、次の危機に対し生活様式や社会活動、そして医療体制を備えなければなりません。

 今回のコロナ禍において、感染症対策の要であった保健所の機能も逼迫しました。1994年に全国で847所あった保健所数は逓減の一途を辿り、2020年では469所にまで減少しました。行政改革で削減された保健所機能の強化も喫緊の課題といえましょう。

 人びとの日常生活においては、常にマスクを着用しているため、表情を読み取りずらくなっています。特に、口元の表情を敏感に感じながら情緒を身につける乳幼児への影響が懸念されています。その他、表情の乏しさ、コミュニケーションの低下といったマスクの弊害も少なくありません。 

 さて、私たち医療従事者には、住民の健康維持のお手伝いという大きな使命があります。自然科学者としてEBMそしてNBMにより、日々その実践に努めています。これまで正体が分からず、ややもすると疑心暗鬼を生じやすかったCOVID―19も、その感染力や感染経路についてある程度解明され、それにより対策も講じやすくなってきました。過剰な恐れは人間社会に機能障害を引き起こし、一方で無防備による感染拡大も同様の結果を招きます。医療機関が率先して、あるべき有効な感染予防対策を講じ、住民や患者に対し正しい情報発信を行い、結果として医療機関が安全であることの証明を実践して行きましょう。 

 ひとたび感染が拡大すると医療機関はリスクに晒されてます。医療機関の機能不全はそのまま患者の健康のリスクにつながることを肝に銘じ、患者住民の健康維持に寄与していきましょう。そして自らの健康管理にもどうかご留意ください。

 折しも、今年は診療報酬改訂の年でもあります。2024年度から本格稼働する「医師働き方改革」に向けた最後の改訂です。

 しかし、昨年12月8日の中医協総会では、支払側は「(診療報酬を)引き上げる環境にない」との主張をしています。このままでは、コロナ禍で疲弊している医療機関の労働環境、経営環境の改善にはなす術がありません。引き続き、保険医協会及び保団連は、署名活動や国会行動を行い、医療体制の窮状を粘り強く政府に訴えていきます。

 今年も、保険医協会をよろしくお願いいたします。

■群馬保険医新聞2022年1月15日号

歯科の施設基準に係る届出書

【2022. 1月 25日】

※ご不明な点等につきましては、事務局社保担当までご連絡ください。TEL:027-220-1125

【歯初診】

歯初診 別添7

歯初診 様式2の6

歯初診 様式2の7(7月報告書)

【外来環】

外来環加算1 別添7

外来環加算2 別添7

外来環 様式4(届出添付書類)

【届出に関するよくあるご質問】

施設基準等の届出に関するよくあるご質問

-厚労省HPから転載-

WEB参加 医療経営セミナー 相続事業承継(特集①、特集②)のご案内

【2022. 1月 21日】
栃木県保険医協会主催のWEB参加医療経営セミナー相続事業承継特集①、特集②のご案内です。本セミナーには群馬協会の会員の先生もご参加いただけます。
  • 相続事業承継特集① ~事例から「気づく」・「わかる」相続の勘どころ~
  • 日時/2022年2月16日(水)、17日(木)19:00~20:30
  • 場所/WEB(ZOOM使用)
  • 参加費/無料
  • 締切/2022年2月9日(水)
  • 申込方法/こちらを印刷してFAXにてお申込みください。→参加申込書
  • ※会員のみなさまには、群馬保険医新聞1月15日号に参加申込書を同封いたしました。
  • 講師:ソニー生命株式会社 コンサルティングプランナー 佐藤 喜博氏

  • 相続事業承継特集② ~後継者不在のクリニック、M&Aの現場から学ぶこと~
  • 日時/2022年2月22日(火)、24日(木)19:00~20:00
  • 場所/WEB(ZOOM使用)
  • 参加費/無料
  • 締切/2022年2月15日(火)
  • 申込方法/こちらを印刷してFAXにてお申込みください。→参加申込書
  • ※会員のみなさまには、群馬保険医新聞1月15日号に参加申込書を同封いたしました。
  • 講師:株式会社リクルート 事業承継総合センター グループマネージャー 三木 武人氏

事務局年末年始休務のお知らせ

【2021. 12月 22日】

平素は各種ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

群馬県保険医協会では、2021年12月28日(火)12:00を持ちまして本年の業務を終了とさせていただきます。(28日(火)午後は大掃除を行うため、業務対応ができません。)

ご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解くださりますようお願い申し上げます。

【年末年始休務期間】

 2021年12月29日(水)から2022年1月5日(水)まで

新年は2022年1月6日(木)9:30より、平常通り業務いたします。

来年も変わらぬご協力をよろしくお願い申し上げます

事務局

【論壇】オンライン資格確認

【2021. 12月 15日】

 マイナンバーカード等によるオンライン資格確認の運用が10月20日から始まったが、厚労省によると現時点で運用開始した医療機関・薬局は11,676施設(5.1%)。顔認証付きカードリーダーの申込数は128,984(56.3%)あるが、パソコンやルーターなどハードウェアの整備やシステム改修の遅れなどから、準備完了は20,362施設(8.9%)に留まっている。

 健康保険組合連合会副会長の佐野氏は「2023年3月末までに、概ね全ての医療機関・薬局での導入を目指す」という目標達成に向け、タイムスケジュールを入れたアクションプラン策定を要望している。

 まずオンライン資格確認の仕組みについて述べてみる。

 オンライン資格確認は、患者が持参するマイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等を利用し、患者の直近の資格情報が確認出来る仕組みである。方法として、健康保険証を用いた場合とマイナンバーカードを用いた場合の二通りの方法が示されている。

 この資格確認システム導入によるメリットは、

①保険証の入力手間の削減 

②資格過誤によるレセプト返戻の作業削減 

③来院・来局前に事前確認できる一括照会

④限度額適用認定証等の連携 

⑤薬剤情報・特定健診等情報の閲覧

⑥災害時における薬剤情報・特定健診等情報の閲覧 

などが挙げられる。

 また、オンライン資格確認で考えられる問題点・デメリットは、

①設備導入・維持の負担 

 カードリーダーの設置だけでなく、保険資格情報が登録されている支払基金・国保中央会にアクセスするための端末とインターネット回線などを新たに備える必要があること。国は導入費用の補助(診療所では上限約43万円)をしているが、導入後の定期的なメンテナンスや改修等の維持費用は対象としていない。

②資格確認の実務的な負担、カードの使用に不慣れな患者への対応やカードの紛失・取り違えの危険 

 マイナンバーカードで資格確認をする場合、患者自身がカードリーダーにマイナンバーカードをかざし、カードリーダーに自分の顔を認証させることで確認するので対応に負担がかかる。また、マイナンバーカードの紛失・取り違えリスクなどの危険性もあり、医療機関では健康保険証にマイナンバーカードを用いることに否定的な意見が多数をしめている。

③個人情報漏洩の危険性 

 オンライン資格確認システムはインターネット回線を用いることから、セキュリティ対策は万全とは言えず、情報漏洩、ウイルス、ハッキング等の危険性がある。

④患者の自己情報コントロール権の侵害 

 オンライン資格確認システムは、今後「データヘルスの基盤」となり、薬剤情報・特定健診等情報に加えて、手術、移植、透析、医療機関名といった項目が対象となる予定である。患者の生涯にわたる医療・保険情報が全国の医療機関で利用されることになると、医療における患者のプライバシーは無くなり、患者の自己情報コントロール権が侵害されることに繋がり兼ねない。

 マイナンバーカードを保険証に紐づけての運用は、個人情報漏洩や紛失・盗難リスクの対応策の議論が不十分のまま推し進めてよいのか不安が大きくなるばかりである。オンライン資格確認は義務ではなく、あくまでも医療機関の「任意」であり十分に検討した上で慎重に判断する必要がある。

 また、システムの不具合発生時、災害等による停電時にはオンライン資格確認を行うことは出来ず、保険証の確認が必要になる。つまり、オンライン資格確認を導入するか否かにかかわらず、患者には保険証を持参してもらう必要があり、案内・情報提供が欠かせない。

(共済部長 太田美つ子)

■群馬県保険医新聞2021年12月15日号

第18回WEB「医療安全の確保」講習会開催のご案内

【2021. 12月 01日】
第18回 WEB「医療安全の確保」講習会
  • 日時/2022年1月23日(日) 9:20~11:30
  • 場所/WEB(ZOOM使用)
  • 対象/会員 ※会員医療機関の従業員も可
  • 参加費/無料
  • 定員/80人(先着)
  • 締切/2022年1月14日(金)
  • 申込方法/こちらを印刷してFAXにてお申込みください。→参加申込書
  • ※会員のみなさまには、全国保険医新聞12月5日号に参加申込書を同封いたしました。
  • ■第一部/「感染症対策の実際」
  • 講師/徳江 豊氏 群馬大学医学部附属病院 感染制御部 部長
  • ■第二部/「現場の医療安全管理」―医療事故対応を中心に-
  • 講師/小松 康宏氏 群馬大学医学部附属病院 医療の質・安全管理部 部長
  • ■第三部/「歯科治療時における偶発症や有病者への対応」
  • 講師/栗原 淳氏 前橋赤十字病院 歯科口腔外科 部長

【論壇】コロナ禍における乳がん検診とブレスト・アウェアネス

【2021. 11月 15日】

 我が国の医療の現状は、2020年初頭に端を発した新型コロナウイルス感染症の流行により、多くの面で深刻な影響を受けている。その一つにがん診療がある。

 全国の癌診療拠点病院でも新型コロナウイルス感染症に対応するため、人員や設備などの医療資源を消費せざるを得ない状況であり、また院内感染拡大防止対策強化などの必要性から、がん手術件数は減少している。またがん検診の受診率も低下している。がん治療にとって早期発見・早期治療は極めて重要であるが、がん検診の受診率の低下はがん早期発見をより困難なものにしている。特にコロナ禍において早期癌の手術件数の減少率が大きくなっている。この傾向は、乳がんにおいても変わらない。

 日本乳がん検診学会では、コロナ禍での乳がん検診の受診を促すために「乳がん検診にあたっての新型コロナウイルス感染症(COVID―19)への対応の手引」(http://www.jabcs.jp/images/covid-guide202107.pdf)を発行している。内容は従来の基本的な新型コロナウイルス感染症対策を踏襲し、検診受診者、検診従事者双方について、当日の感染症状の有無、直近2週間の行動歴を確認して感染が疑われる場合は検診日時の変更などを指示している。また検診実施時には検診会場が混み合わないように注意するとともに、マスクの着用や手指および検査機器の消毒などの具体的な方法について説明している。その上で、乳がん検診で行われるマンモグラフィや乳腺超音波検査は、十分な感染対策を講じて実施すれば感染のリスクは高くないとしている。

 また、乳がん検診特有の問題点として、新型コロナウイルスワクチン接種の副反応による腋窩リンパ節腫大についても言及している。肩に新型コロナウイルスワクチン接種をした場合、同側の反応性腋窩リンパ節腫大が出現することがある。一方で乳がん検診では、腋窩リンパ節腫大は乳がんの転移が疑われ、要精査とされることがある。これを新型コロナウイルスワクチン接種による反応性腋窩リンパ節腫大と鑑別し、検診の偽陽性率を上げないために、乳がん検診受診者の新型コロナウイルスワクチン接種歴を確認することと、検診受診時期を新型コロナウイルスワクチン接種前か2回目の新型コロナウイルスワクチン接種後6~10週以降にすることを推奨している。また国民への啓発として新型コロナウイルスワクチン接種後の反応性リンパ節腫大は病気ではなく、自然な反応であることを知らせることも勧めている。

 これまでに述べた様な、コロナ禍における具体的な乳がん検診の指針の他に、乳がんの早期発見に有用とされる「ブレスト・アウェアネス」という概念についても解説がされている。現在は乳がん検診として、多くのエビデンスにより有効性が証明されているマンモグラフィ検診と定期的に行う自己検診とを併用することが推奨されている。ブレスト・アウェアネスは、それに留まらず、各個人が日常的に自身の乳房を意識することにより、乳がんの早期発見につなげていく生活習慣であり、具体的な方法として以下の項目を挙げている。

① 自分の乳房の状態を知る

② 乳房の変化に気をつける

③ 変化にきづいたらすぐ医師に相談する

④ 40 歳になったら 2 年に 1 回乳がん検診を受ける

 ブレスト・アウェアネスは、女性一人一人がこうした生活習慣を意識し、実践することで乳がんの早期発見につなげていくことを目的としている。

 数年来、乳がん罹患率は我が国の女性における悪性新生物では第1位であり、更に増加を続けている。一方で、乳がんは検診による死亡率減少効果が証明されており、早期発見のメリットが大きいことも知られている。コロナ禍では乳がんの検診・治療ともに制限を受けている状況であるが、様々な検診の工夫や各個人に対する啓発により、少しでも乳がんによる死亡率を下げていくことが望まれる。

(研究部・医科 部長 竹尾 健) 

■群馬保険医新聞2021年11月15日号

【論壇】中絶の変遷と課題

【2021. 10月 18日】

 日本における中絶件数は60年前の年間106万件から年々減少していき、2020年には14万件と大幅に減少している。出生数もこの間に160万人から84万人へと減少しているが、中絶はそれを上回る減少率である。これには戦後の生活難の改善やコンドームの普及から始まり、現代ではセックスレスの増加や晩婚化により希望する子供の数を超えないことなどが要因として考えられる。にもかかわらず妊娠した女性の約15%が苦悩しながら中絶をしいている現状を鑑みると、まだまだ対策が必要である。

 避妊方法について検討すると、パール指数(100人の女性が1年間で妊娠する人数)でみたときコンドームを適切に使用した時の指数は2だが、実際は15程度である。こうした実態から、コンドームは不確実な避妊方法だと言える。それに比べてピルや子宮内避妊具のパール指数は0.3と低い。早い時期から性教育を行うことで、こうした確実な避妊法を普及させていかなければならない。また、育児の負担が大きくて出産を躊躇するケースも増えている。24時間・365日受け入れ可能な託児所を増やすなど、育児と仕事が両立可能な環境を整えることは中絶を減らすだけでなく、少子化対策としても喫緊の課題だ。

 中絶に関する法律は1948年に優生保護法が成立し、1996年に現在の母体保護法に改正された。優生保護法には『優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する』と書かれており、こうした優生思想のもとに国主導で多くの強制不妊手術が行われた苦い歴史がある。また、中絶可能な妊娠週数も周産期医療の進歩ともに、当初の妊娠8カ月未満から現在は妊娠22週未満へと変わった。

 実際に中絶の方法も変化しつつある。12週未満の妊娠初期において従来はキュレットや胎盤鉗子を用いる掻爬法(D&C)が行われていたが、数年前から子宮穿孔リスクが低い手動真空吸引法(MVA)が広まりつつある。また、ミフェプリストンとミソプロストールの内服による中絶法も治験が行われている。9割以上で胎嚢を排出できる一方で、強い腹痛や出血、排出に時間がかかる、追加処置が必要となるなどのケースもあり、適応や管理法などについてさらなる検討が必要である。

 出生前診断の分野では遺伝子技術の発展により、8年前から母体血中の胎児DNAを検査するNIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)が行われている。妊娠10週から検査ができ、認定施設ではダウン症を含む3種のトリソミーについて検査できる。確定診断には羊水検査が必要であり、遺伝カウンセリングも義務付けられている。約100の認定施設で、年間1万件以上の検査が実施されている。

 しかし、無認可で検査している施設がそれ以上にあると報告されており、産婦人科以外の施設も少なくない。そこでは性別を含む様々な検査が行われ、さらに説明が不十分なことも問題となっている。 

 こうした背景には晩婚化により第一子出産年齢が平均30.7歳に上がり、染色体異常のリスクが以前よりも高まっていることも関係している。30%の妊婦がNIPTに興味をもっているとのアンケート結果もあり、認定基準を緩めて認定施設を増やすこと及びルールの厳格化を並行して進めていくことが求められる。

 出生前診断は『最適な分娩方法と療育環境を検討すること』が本来の目的だったが、検査で陽性となった妊婦の約9割が中絶を選択している。母体保護法では胎児の障害や性別を理由とした中絶は認めておらず、矛盾が生じている。

 まずは妊婦の抱える不安を和らげるためにも、障害者福祉の充実や差別の解消といった社会環境の改善に取り組んでいかなければならない。さらに優生思想に流されないよう慎重になりながらも、母体保護法のありかたを含めた幅広い議論をすべき段階に来ている。

(環境平和部長 白石 知己)

■群馬保険医新聞2021年10月15日号

9月30日を期限とされている2020年度診療報酬改定に伴う施設基準の経過措置の取り扱いについて

【2021. 9月 24日】

9月30日を期限とされている2020年度診療報酬改定に伴う施設基準の経過措置について、重点医療機関等(※)以外では 9月末で終了する との通知が9月17日に発出されました。

・令和2年度診療報酬改定において経過措置を設けた施設基準の取扱いについて

重点医療機関等以外の医療機関が経過措置に該当する点数を10月1日以降引き続き算定する場合、10月18日までに施設基準の届出が必要 となります。

なお、点数の算定は10月1日からとなりますのでご留意ください。

※重点医療機関等…都道府県から新型コロナウイルス感染症患者・疑い患者の受入病棟を割り当てられた医療機関。 

○重点医療機関 ○協力医療機関 ○その他の医療機関

取扱いの詳細につきましては、下記をご確認ください。

・令和2年度診療報酬改定において経過措置を設けた施設基準の経過措置の延長について

【論壇】対COVID-19

【2021. 9月 16日】

「コロナは続く どこまで続く」

 新型コロナウイルスは、一国で抑えられたとしても、他国との関係を絶たない限り、また新たな変異株の襲来により再燃を繰り返すことでしょう。適応出来る人は生き残り、そうでない人は淘汰されるという、シンプルな自然の掟に、しばらく晒されるのです。

 再燃を繰り返しながら、徐々に自然免疫を獲得し、相対的に弱毒化し、やがてインフルエンザ的なものに落ち着いて行くのだろうと想像されます。

「自分の命は自分で守る」

 新型コロナウイルスと対峙する時、根本的な対処法はワクチンでも薬でもなく『宿主の強化』であると思います。

 言葉通りにステイホームをしていると、フレイルが加速して余計に重症化リスクの上昇を招きます。人混みを避けるという原則を守りつつ、出来るだけ外に出て活動的な生活を送る工夫が大切になります。

 朝のウォーキングで太陽を浴び、ビタミンDやセロトニンを増やし、休日は家族で釣りやハイキング、森林浴をし、野外でお弁当をひろげ、楽しい時間を過ごす。喫煙・深酒を戒め、肥満を解消し、基礎疾患の改善に取り組む。適度な運動と休養と睡眠。無理をしない。楽しくストレスの少ない生活を送れるようにする。

「抵抗力や免疫力を上げる食事を心がける」

 杏林予防医学研究所長の山田豊文先生は著書の中で、「牛乳や乳製品は、百害あって一利なし」、「牛乳は骨を弱くし、全身の細胞の環境を悪化させる」と記しています。

 病院食であれば、牛乳・ヨーグルト・チーズを廃止し、豆乳・豆腐・納豆・湯葉・ゆで卵に変え、良く噛むだけで、体中の細胞の環境が改善される訳です。

①乳製品の摂取を0にする ②グルテンの害を回避する  

ために小麦製品の摂取量を控える

③オメガ3オイルを毎日適量摂取する

この3つに取り組むだけで、相当に良質な細胞が造られるようになり、かなりの体質改善が期待出来ます。

 緑黄色野菜・果物・種子類・ナッツ・ベリー・きのこを積極的に摂取し、最高の栄養素であるファイトケミカルを充分に取り込むと、抵抗力と免疫力が飛躍的にアップするでしょう。

「発症も重症化も自分で防ぐ」

 新型コロナウイルスに曝露しても、すぐに感染して発症する訳ではありません。

「舌の上と、舌の奥の方の喉で一旦増殖し、ある程度まとまった数になったウイルスが、夜中のイビキ等による誤嚥で気道に落ちて発症する」というパターンが多いと思われます。

①毎日の歯磨き

②舌の上の舌苔(ぜったい)を優しく舌磨き

③舌の奥の方の喉のガラガラうがい 

 この3つの対策を実行することで初期の増殖を阻止できれば、発症はかなり防げるでしょう。

 みらいクリニック院長・内科医の今井一彰先生は「あいうべ体操」を指導し、口呼吸を鼻呼吸に変えることで、インフルエンザを予防し、学級閉鎖を皆無にしています。

 鼻呼吸により口の中の乾燥が解消され、自律神経が整えられ、体調が良くなると共に、鼻粘膜・気道・気管支・肺胞が保湿され粘膜本来の免疫力が発揮されます。口呼吸に比べ150%以上、酸素の肺への取り込み量が増え、鼻粘膜から出る一酸化窒素が血管や気管支を広げ、血流を促進してくれます。

 体の隅々にまで新鮮な血液と酸素が供給され、細胞がますます元気になり、重症化防止に繋がります。

 日本人の10人中9人までが口呼吸をしているとのことで、大きな改善効果を与えるでしょう。

「広く情報発信を」

 人流の抑制を叫ぶことも大切かもしれませんが、新型コロナに対抗可能な健康知識の情報提供は、出来ることの一つと思います。

 新変異株のたびに右往左往しなくて済むのが理想です。普通に自立歩行が可能な人であれば『宿主の強化』のみで何とか乗り切れるでしょう。

 こうした事に皆が取り組むことで、健康な体になり、蔓延を阻止、医療資源を節約し、少しでも医療崩壊を防ぐことに繋がればと思います。

(広報部部長 大国 仁)

■群馬保険医新聞2021年9月15日号 

ごあいさつ

【2021. 8月 17日】

群馬県保険医協会 会長 清水 信雄

 長引くコロナ禍で、すでに1年半以上も国民は不自由な生活を強いられています。ワクチン接種も、ようやく高齢者への接種の遂行が見えてきたところです。

 いずれにしても、私たちの生活や仕事の仕方が、それまでとはすっかり変わってしまいました。当たり前が当たり前でなくなる—こんな変化が突然起こりうるという事実を私達は身をもって知りました。災害とはそういうものです。

 この間、医療機関、ことにウィルス感染者に直接関わる医療従事者は、自らの感染リスクを負いながら診療に当たっています。その勇気と尽力に心より敬意を表します。

 一方で感染リスクの面からは、不特定多数と接触する機会のある職種は医療機関以外にも多々あります。飲食業界をはじめ、展示場、演劇、ライブやコンサート、スポーツ関係など、対ひとの業界等は、甚大な影響を受けました。

 政府は、自粛や営業の時短等、感染予防のための協力要請はするものの、そのための手当てや助成金等については、制度上、運営上の不備が目立ち、また額においてもあまりに不十分です。まだ収束が見えない中、ともすると禍=わざわいという不幸な面が強調されがちですが、奇しくもこの間、私たちが獲得したこともありました。

 歴史を振り返れば、人類はこれまでも、試練から多くのことを学んできました。 (順風満帆の時は、人はあえて変化や改革を考えないものです。)

 身に迫る隘路打開のため知恵を絞り、それまでの経験や成果を生かそうと試行錯誤を重ね、それにより新しい技術やシステムを開拓してきました。

 協会の理事会をはじめ、諸会議、研修会の形態がWEBの活用により大きく変わりました。しかしWEB会議は、直接顔を合わせられない、音声が聞き取りにくい、表情、反応がわかりにくい等、今後改善すべき課題もあります。

 一方で、時間や交通費の節約、またこれまでいろんな事情から参加できなかった方の参加が可能になったことも、この状況下で得られた大きなメリットではないでしょうか。今後、先の課題を含め、コミュニケーションをどう深めるかが鍵になりそうです。

 また、医療現場のマスクやグローブ等、感染予防器材の備蓄が不足するという重大な事態も経験しました。こうしたことから、平時においても、非常時を見据えての感染予防器材の確保など、今後も政府、自治体に訴えていかねばなりません。

 私たち医療従事者は、住民のマスクやワクチンに対する過信にも正確な情報を発信していかねばなりません。マスク着用により口呼吸が助長されること、そして口呼吸による感染リスクの増加、またワクチン接種による感染対策軽視の傾向等、住民に注意喚起していくことが重要です。

 また、マスク着用により子供たちの表情が乏しくなったとの指摘もあります。学童期の、感受性の熟成への弊害についても、今後取り組む必要があろうかと思います。  

 コロナ禍がもたらした社会や経済の変化は、収束後も完全に元に戻る事はもはやありえないでしょう。

新しい時代に向けて医療はどうあるべきか、住民のニーズにどう応えるかなど、当会では、その時々の状況に応じ最善の策を実行してまいります。

 なお私ごとではありますが、これまで協会の体制は不文律として会長の任期は4年で引き継がれてきましたが、今期私は会長5年目となります。これは、昨年コロナ禍で本来の協会活動を全うできなかったため、つまり会員の皆様に対し満足のいく活動ができなかったとの思いから、もう一期、微力ながら皆様の納得のいくような活動をさせていただければと思います。

 今後とも、会員皆様のご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

■群馬保険医新聞8月15日号