- 演題/審美補綴に必要な天然歯形態と基本三形態の類似性
- 演者/片岡 繁夫 先生 大阪セラミックトレーニングセンター 主宰
- 日時/2023年7月2日(日) 10:00~13:00(受付9:30~)
- 場所/群馬県生涯学習センター4F 第1研修室
- 定員/80名
- 参加費/会員無料(日本歯科技工士会及び群馬県歯科技工士会)・学生
- 参加費/会員外2000円(歯科技工士・歯科医師・歯科衛生士・一般)
- 締切/2023年6月26日(月)
- 申込はこちらから→申込フォーム

東京保険医協会が提訴した「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」は、2月22日の第一次訴訟に274人、第二次訴訟に801人、合計1075人が原告団に加わりました。弁護団は、「義務化」を定めた省令(改正療養担当規則)を精査すると健康保険法の委任の範囲を逸脱した憲法第41条違反等の違憲・違法性があること、および、憲法上保護された医療活動の自由に対する権利侵害にあたると指摘し、今後裁判は6月20日までに国の答弁書が提出され、6月29日に第2回口頭弁論が開かれる予定です。
東京保険医協会では第三次訴訟に向けて6月末日まで引き続き原告団を募集しています。提訴に賛同し、原告団に参加していただける先生は東京保険医協会のホームページ(https://www.hokeni.org/poster-docs/2023012000019/)、または添付の二次元コードからお申し込みください。原告には保険診療を行う医師・歯科医師であれば誰でも参加することができます。また、先生方には一切負担は生じません(東京保険医協会作成「原告団への参加に係るQ&A」参照)。
◇原告団募集締め切り 2023年6月末日
請求の主な趣旨
1.保険医療機関が、患者から健康保険法3条13項に規定するマイナンバーカードによる電子資格確認により療養の給付を求められた場合に、(1)電子資格確認によって療養の給付を受ける資格確認義務がないこと、(2)そのためにあらかじめ必要な体制を整備する義務がないこと、の2点を確認すること。
2.違憲・違法な省令制定とそれに関連した政府の動向による保険医としての職業活動またはその継続に対する不安のための精神的苦痛による損害賠償の請求です。
■栃木県保険医協会主催医業経営WEBセミナー「あなたの想いを叶える生前贈与の使い分け」
※会員のみなさまには、群馬保険医新聞2023年5月15日号に参加申込書を同封いたしました。群馬協会の会員もご参加いただけます。
乳がんの現状
1980年代以降、我が国において乳がんの罹患数は増加傾向にあり、近年でも女性の部位別悪性新生物罹患率において1位を維持している。国立がんセンターの統計によると、2019年の乳がん罹患数は97,142人で、部位別で1位であった。年齢別では40歳代後半と60歳代後半にピークがある。また、2020年の乳がんによる死亡数は14,650人で、部位別では大腸、肺、膵臓に次いで4位であった。生存率を見ると、「地域がん登録」に基づく乳がん全症例の5年相対生存率は92.3%(2009~2011年診断例)であった。病期別の5年相対生存率は、全国がんセンター協議会や癌診療連携拠点病院などの統計があるが、いずれもⅠ期でほぼ100%、Ⅱ期で約95%であるのに対してⅢ期では約80%、Ⅳ期で40%以下と病期が進むにつれて急激に悪化する。このため検診で早期に発見することが、乳がん治療には重要である。
乳がん検診の現状と課題
厚生労働省は現在40歳以上の女性に対して、マンモグラフィによる乳がん検診を2年に1回受診することを推奨している。しかし2019年の受診率は、全国平均で47.4%、群馬県では48.3%と検診対象人口の半数にも満たない。乳がん検診の受診率を上げるためには、一般市民に対して検診の重要性を周知するための啓蒙活動を続けることと、検診を受けやすい環境を提供することが必要だと思われる。
乳がん検診のメリットは、言うまでも無く乳がんの早期発見と死亡率の減少である。これに対してデメリットは、マンモグラフィによる放射線被曝と偽陽性による不必要な精査(これに伴う受診者の身体的・精神的・経済的負担および医療費の増加)、偽陰性による乳がんの進行などである。
マンモグラフィによる検診では検出が困難な乳がんもあり、特に高濃度乳房(乳腺に脂肪がほとんど混在せず、病変と正常乳腺との判別が困難)では偽陰性の可能性が高くなる。このような偽陰性を減らすために、超音波検診の導入が進められている。超音波検診はマンモグラフィ検診より、がんの発見率や感度が向上し早期乳がんの割合が増加したが、一方で特異度は低下していた。今後の課題として、感度と特異度を両立するために超音波検診とマンモグラフィ検診の総合判定の必要性が指摘されている。
また過去のマンモグラフィ画像との比較読影はマンモグラフィ判定の精度を向上させるのに有用で、特に偽陽性率を下げる効果が期待されている。しかし異なる施設で検診を受けると、比較読影が出来ず偽陽性となることがある。将来的には検診画像を各検診施設で共有するか、検診受診者自身が画像データを保持出来るようになれば、マンモグラフィの偽陽性率を下げられるだろう。
ブレスト・アウェアネス
厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」(2021年10月1日改正)では、従来の「乳がんに関する正しい知識及び乳がんの自己触診の方法等について」が「乳がんに関する正しい知識及び乳房を意識する生活習慣(以下「ブレスト・アウェアネス」という。)」に変更された。ブレスト・アウェアネスは、常日頃から自身の乳房の状態を意識し、いつもと異なる状態に早く気付く様にする生活習慣で、具体的な方法として以下の項目を挙げている。
①自分の乳房の状態を知る
②乳房の変化に気をつける
③変化にきづいたらすぐ医師に相談する
④40歳になったら2年に1回乳がん検診を受ける
各個人が日常的に自身の乳房を意識することにより、乳がんの早期発見につなげていく生活習慣で、ブレスト・アウェアネスの普及により検診対象年齢以下の若年性乳がんの早期発見や、マンモグラフィ検診で偽陰性となった乳がんを出来るだけ早く発見する効果が期待されている。
おわりに
乳がん検診を提供する側は、機器の改良や新たな検査の導入、検査技術の研鑽、知見の集積などにより精度の高い検診を提供することが必要とされている。また市民に対する啓蒙活動として、乳がん検診を受ける、ブレスト・アウェアネスを実践するなど、一人一人が自分自身で乳がんから命を守る意識を浸透させていくことが大切と思われる。
(研究部・医科部長 竹尾健)
■群馬保険医新聞2023年5月15日号
日 時 2023年6月18日(日) 9:30~13:30(開場9:00)
場 所 群馬県生涯学習センター 4F 第1研修室
対 象 会員本人のみ
参加費 無料
定 員 80人(先着)
【第1部】 9:30~11:05 ●院内感染防止対策 ●医療事故対応●偶発症に対する緊急時対応
講師 狩野証夫氏 狩野歯科口腔外科医院院長 医学博士 口腔外科専門医・口腔外科指導医 顎顔面インプラント指導医/顎関節症専門医/群馬県保険医協会理事
【第2部】11:15~11:45 ●歯科の重症化予防に資する継続管理
講師 狩野証夫氏
11:45~13:30 ●高齢者の心身の特性●認知症に関する内容●口腔機能の管理
講師 種村達哉氏 医療法人上毛会伊勢崎福島病院 歯科医長/日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士/ 日本静脈経腸栄養学会TNT研修終了/北関東摂食嚥下リハビリテーション研究会世話人
締 切 2023年6月12日(月)
※歯科会員のみなさまには、全国保険医新聞4月25日号に参加申込書を同封いたしました。
下記申込書を印刷してFAXにてお申込みください。
クリックするとPDFが開きます。↓
日時:2023年7月12日(水)~16日(日)
10:00~17:30(12日は19:00まで、最終日は14:00まで)
会場:群馬県生涯学習センター 1F創作活動作品展示室(前橋市文京町2-20-22)
作品募集期間は、5月17日(水)~6月12日(月)
●応募資格:群馬県内在住・在勤の保険医と家族・従業員
*保険医協会の会員でなくても上記資格を満たしていればご応募できます。
●応募規格:半切または四ツ切(ワイド四ツ切も可)
●募集点数:100点
●出品数:課題部門「青」、自由部門合わせて一人4点まで
●出品料:無料
●パネル代:2,500~3,000円(税抜)
●送付先:〒371-0023 前橋市本町2-15-10 前橋フコク生命ビル8F 群馬県保険医協会
たくさんのご応募をお待ちしております。
写真展の作品応募・詳細はこちらから → 写真展応募用紙
※会員のみなさまには、群馬保険医新聞4月号に写真展応募票を同封いたしました。
日時:2023年5月21日(日)雨天決行
場所:湯沢高原パノラマパーク(新潟県南魚沼郡湯沢町大字湯沢490)
参加費:大人9,800円、小人7,000円(小学生以下)
定員:20人(先着)
募集対象:群馬県在住・在勤の保険医と家族、従業員(会員以外でもご参加できます)
写真撮影バス旅行の参加申し込みはこちらから→写真撮影会申込書
※会員のみなさまには、群馬保険医新聞4月号に写真撮影会申込書を同封いたしました。
国会では昨年から「かかりつけ医」を認定制・登録制にしようとする議論が行われていたが、先月16日に岸田首相はこの認定制・登録制を見送った。
「かかりつけ医」という言葉は、1992年に当時の日本医師会長であった村瀬敏郎先生が使い始めたことで広まったと考えられている。それ以前では、1956年に「家庭医」を専門医制の一つにすべきという提言が出され、1985年には、当時の厚生省に「家庭医に関する懇談会」が設けられ報告書がまとめられている。しかし当時の日本では受け入れられず、家庭医という言葉が盛んに使われるようになったのはもっと後になってからだ。2017年には「新専門医制度」が開始され、その後は総合診療専門医が各地で誕生し、現在は総合診療、プライマリ・ケア、家庭医などの言葉とともに「かかりつけ医」という曖昧な言葉を制度化しようと進めている状況となっている。
厚労省は、かかりつけ医について「上手な医療のかかり方.jp」(https://kakarikata.mhlw.go.jp/kakaritsuke/motou.html)というサイトで国民に啓蒙活動を行っている。このサイトでは「かかりつけ医とは何なのか」「かかりつけ医をもつメリット」「かかりつけ医をもつと安心」「かかりつけ医の機能」について説明している。どの項目ももっともらしいことが記されているが、改めて国民に啓発する必要が果たしてあるのだろうかと考えると甚だ疑問である。ここに記されているようなことは、今まで開業医が当たり前にしてきたことなのではないか。そこに通院し、関わっている方はそれを肌で感じていることだろう。
中には大きな病院をかかりつけ医とするような患者さんや、健康(健康と思っている人も)であることで医療機関とのつながりが薄い人たちももちろんいるだろう。しかし、そのような人たちにもかかりつけ医を勧める活動にはあまり賛同できない。医療や介護という分野は必要となったら考えるものであるべきで、「病気になった時に頼れる存在」とは、かかりつけ医というよりは医療者全般がそうあるべきではないだろうか。私たちが病に苦しむ人たちに対して慈悲の心を持って向き合うこと。それが大事なことだと思うのは私だけだろうか。通院している医療機関で一番信頼できると思われる医師でありたいと日々診療していることを、法律の名のもとに制度化してほしくないと感じる。
批判ばかりしていても仕方がないので、かかりつけ医の役割にはどのようなものがあるのか考えたい。かかりつけ医には医療的機能と社会的機能の2つの側面がある。医療的側面については、自己の専門性に基づき専門医療について迅速かつ的確に高次医療機関への紹介など適切な対応を行えること。また、患者の背景などを熟知し価値観に沿った医療を提供できること。一方、社会的側面については、日常診療に加え、母子保健、がん検診、介護保険、学校医活動など様々な活動が期待される。どこまで対応できるかはかかりつけ医としての醍醐味だろう。ただ、この2つの役割については現在開業されている先生方のほとんどがすでに実践されていることと思う。
専門分化が進むのは良いことだと思う。しかし、高齢者の中には開業医を複数受診されている方も多いだろう。内科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科を受診していて誰がかかりつけ医になるか。すべての専門医がかかりつけ医になれば最高だが、やはりより横断的に、俯瞰的に患者さんの背景をとらえられる内科系の開業医がかかりつけ医の第一候補になるのではないか。
かかりつけ医機能の議論は今後も継続されていくだろうが、目の前の患者さんに対してこれからも真摯に向き合う姿勢を私は継続していきたい。
●かかりつけ医について議論されている書籍は以下の通りです。もし興味があればご一読をお勧めします。
・『医学の本道―プライマリ・ケア』永井友二郎(青山ライフ出版)
・『日本の医療 制度と政策』島崎謙治(東京大学出版会)
・『医療政策集中講義 医療を動かす戦略と実践』東京大学公共政策大学院医療政策教育・研究ユニット(医学書院)
(研究部・医科 金子 稔)
■群馬保険医新聞2023年4月15日号
以下の書籍につきましては、2023年4月17日(月)より販売価格を改定させていただきます。
■価格改定する書籍
・歯科「患者情報提供用箋」6種類
①「歯科疾患管理計画書(初回用)」
②「歯科疾患管理継続書(継続用)
③「お口の中をいつもきれいにしましょう」(実地指)
④「お口の健康を大切にしましょう」(訪衛指)
⑤「新製有床義歯管理用」(義管)
⑥「クラウン・ブリッジ維持管理に関する説明書」
【新価格】 ①~⑥ 350円 (旧価格300円)
※2023年4月17日(月)より適用。
■口腔内スキャナー体験会(株式会社4DX協力)
開催日 2023年5月10日(水)19:30~21:00
2023年5月18日(木)19:30~21:00
会場 群馬県保険医協会会議室
対象 群馬県保険医協会会員及び会員医療機関の勤務医、従業員、家族
参加費 無料
定員 各日10名様限定(先着順)
申込方法 こちらを印刷し群馬県保険医協会宛にFAX(027-220-1126)してください。
※歯科会員のみなさまには全国保険医新聞4月5日号、15日号に申込書を同封いたします。
母体血漿中には胎児由来のcell-free DNAが含まれており「NIPT(Non-Invasive Prenatal genetic Testing)」 はこれらを解析することで胎児の染色体異常を検出する、出生前遺伝学的検査のひとつ である。ダウン症候群(21トリソミー)や、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群 (13トリソミー)といった染色体の数的異常を高い感度と特異度で検出することができ、妊娠初期(10週)から採血のみで侵襲なく検査できる。一方で偽陽性や偽陰性も一定頻度でみられる非確定検査であり、診断を確定させるためには妊娠15週以降での羊水検査が必要となるが、羊水検査は侵襲的検査であり、流産率が0.3%あることも注意すべきである。
米国では2011年にNIPTを開始し、日本では2013年より全国の日本産科婦人科学会認定施設において染色体疾患のハイリスク妊婦を対象とした臨床研究として開始された。2019年までの6年間に72,395件の検査が行われ、受検者の平均年齢は38歳、陽性率1.8%、陽性的中率90.0%だった。特に21トリソミーにおいての陽性的中率は96.5%と高い結果であった。
妊婦がNIPTを希望もしくは検討している場合には、事前に遺伝カウンセリングを受けることが重要である。「陰性の結果を確認して安心したい」、「義母から検査するよう強く勧められた」など、NIPTを検討するまでの過程は様々であるため、先天性疾患の可能性や出生前検査に対する問題点について理解したうえで、自律的な自己決定ができるよう支援が必要となる。
また、偏見によるイメージが先行して不安が大きくなるケースもある。児の先天性疾患は3~5%でみられるが、その中で染色体異常が関連するのは4分の1である。母体年齢とともに罹患率は上昇するものの、もっとも多いダウン症候群でも600~800出生に1人程度である。
21トリソミー受精卵全体の約80%は流産・死産となる。その内の多くは妊娠16週までに流産・死産となるが、妊娠16週以降も生存し、羊水検査でダウン症候群と診断された胎児も20~30%は流産・死産となっている。そのような中でも出生した児の平均寿命は50~60歳とされ、学校の卒業や就労はともに8割以上であり、9割以上が自身の人生に幸せを感じているとの調査報告もあるため、こうした情報も提供していかなければならない。
だが、検査についての適切な情報提供がなされないままNIPTを実施する無認定施設が急増し、妊婦に混乱と不安を引き起こしていることが問題となっている。群馬県にはこれまで認定施設が無かったことから、NIPTを希望する妊婦は県内の無認定施設で検査を受けるか、県外の認定施設まで出向くしかなかった。そうした中で、昨年より群馬大学医学部附属病院と群馬県立小児医療センターを基幹施設とし、横田マタニティーホスピタルなど複数の連携施設によるNIPTの実施時における新たな体制がスタートした。NIPTの実施とその前後での遺伝カウンセリングを連携施設で行い、陽性の場合には基幹施設で専門的なカウンセリングを受けられるようになった。現在は35歳未満のリスク因子のない妊婦も、希望すればNIPTを受けることができる。
多様性の尊重が社会全体で叫ばれて久しいが、この分野においては簡単なことではない。NIPTは『最適な分娩方法と療育環境を検討すること』を目的として始まったが、染色体異常が認められた妊婦の多くが中絶を選択している。諸外国の動向からも今後NIPTのニーズはより高まっていくと予想される。米国では染色体の数的異常だけでなく、染色体の微小欠失や重複といった変化へと検査対象が拡大しており、こうした中で偶発的に胎児の親が持つ染色体疾患が明らかとなる可能性もあることから、遺伝カウンセリングの重要性がさらに増していくだろう。
(環境平和部長 白石知己)
■群馬保険医新聞2023年3月15日号
当会は、全国の保険医協会・医会、保団連と連帯して、本年4月施行予定のマイナンバーカードによるオンライン資格確認等システム「義務化」撤回のために活動してきました。しかし、昨年12月の中医協総会では、4月から原則義務化の実施を強行することが決定されました。
東京保険医協会が呼びかけた保険医・歯科保険医274人は2月22日、「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」第一次原告団を結成し、国を相手に東京地方裁判所に提訴しました(第一次訴訟)。弁護団は、「義務化」を定めた省令(改正療養担当規則)を精査すると健康保険法の委任の範囲を逸脱した憲法第41条違反等の違憲・違法性があること、および、憲法上保護された医療活動の自由に対する権利侵害にあたると指摘しています。今後は活動を全国に広げて数千人規模の原告団(二次訴訟)を目標に、全国の保険医協会・医会に原告団への参加を呼びかけています。
請求の主な趣旨は、
1.保険医療機関が、患者から健康保険法3条13項に規定するマイナンバーカードによる電子資格確認により療養の給付を求められた場合に、(1)電子資格確認によって療養の給付を受ける資格確認義務がないこと、(2)そのためにあらかじめ必要な体制を整備する義務がないこと、の2点を確認すること。
2.違憲・違法な省令制定とそれに関連した政府の動向による保険医としての職業活動またはその継続に対する不安のための精神的苦痛による損害賠償の請求です。
当会理事会は協議の上、東京保険医協会からの二次訴訟原告団参加への呼びかけに応えて、会員の皆様に原告団への参加をご案内することを決めました。ぜひ「義務化」撤回に向けて共に立ち上がり闘っていきたいと考えます。
原告には保険診療を行う医師・歯科医師であれば誰でも参加することができます。また、先生方には一切負担は生じません(東京保険医協会作成「原告団への参加に係るQ&A」参照)。提訴に賛同し、原告団に参加していただける先生は東京保険医協会のホームページ(https://www.hokeni.org)または添付の二次元コードからお申し込みください。
2023年3月31日(金)までにお申し込みくださいますようお願い申し上げます。
2022年10月26日付の厚労省事務連絡(新型コロナに係る臨時的取扱いについて(その79))に基づき、コロナ疑い患者へ対面診療を行った場合の「二類感染症患者入院診療加算(250点)」は、2023年3月1日から3月末までの間は「二類感染症患者入院診療加算(147点)」を算定することとされました(点数が250点→147点に引き下げられましたが、請求コードはこれまでと同じです)ので、お知らせいたします。
区分番号:A999-00
診療行為名称:二類感染症患者入院診療加算(外来診療・診療報酬上臨時的取扱)
点数:147点
請求コード:113033650
(出典)厚労省保険局運用ホームページ「診療報酬情報提供サービス」(令和5年2月28日現在)http://shinryohoshu.mhlw.go.jp/shinryohoshu/
【その他】
⑴ コロナ疑い患者又は陽性患者へ対面診療を行った場合の「院内トリアージ実施料(300点)」は引き続き算定できます。(令和5年2月28日現在、算定期限は示されておりません)
⑵ 「院内トリアージ実施料(300点)」と「二類感染症患者入院診療加算(147点)」は、小児科外来診療料又は小児かかりつけ診療料と併せて算定できます。
⑶ コロナ陽性患者へ対面によりコロナに係る診療を行った場合の「救急医療管理加算(外来:950点 往診・訪問診療:2,850点)」は引き続き算定できます。(令和5年2月28日現在、算定期限は示されておりません)
⑷ コロナ陽性患者へ電話等によりコロナに係る診療を行った場合の「二類感染症患者入院診療加算(250点)」は引き続き算定できます。(令和5年2月28日現在、算定期限は示されておりません)
⑸ 重症化リスクの高いコロナ陽性患者へ電話等によりコロナに係る診療を行った場合の「電話等による診療(147点)」は令和5年3月末まで引き続き算定できます。(令和5年4月1日以降は算定できません)
年頭所感
群馬県保険医協会 会長 小澤 聖史
みなさまに新年のご挨拶を申し上げます。
昨年も新型コロナウイルス感染症が全世界を駆け回り、群馬県でも第8波が押し寄せ医療現場を圧迫しているのはご存じの通りです。
しかし、コロナウイルス株も変異を重ね、以前と比べると致死率が下がってきているようです。政府の資料によると、デルタ株が主流だった昨夏の第5波で、60歳以上の致死率は2・5%でした。これが、昨年7月ごろから始まったオミクロン株の派生型「BA・5」による第7波では0・48%となり、季節性インフルエンザの0・55%とほとんど差がなくなってきています。
マスクに関しても、ヨーロッパ、アメリカ等では、街を歩く人を見ても着用している人が少なくなり、必要ないとの意見が多くなりました。新しいコロナウイルスとの共存が始まっていると感じます。
ワクチン接種も進み、塩野義製薬が開発した国産初の飲み薬「ゾコーバ」が年末に緊急承認されています。処方時に他剤との併用に注意しなければならない等、まだ簡単に処方できる物ではなさそうですが、インフルエンザの内服薬と同じように開業医でも簡単に処方でき、治療が確立すれば、今年中にもコロナウイルスの感染症法の分類は2類相当から5類へと引き下げられるでしょう。
また、今年から始まるマイナンバーカードの健康保険証利用及びオンライン資格確認は、医療界に大きな波紋を引き起こすことと思います。他協会では、オンライン資格確認が義務化になるなら閉院を考えていると答える高齢の先生が1割前後いる調査結果もあります。使用機器の導入には国の補助を受けられますが、4月までに機器の納入が間に合わない、インターネットの工事が間に合わないとの声も聞こえてきます。
日本医師会では、4月の完全義務化の延期を求めて、オンライン資格確認等システム導入の経過措置等要望のためのアンケート調査を始め、経過措置を認めてもらう考えのようです。
保険医協会も、完全義務化に対する反対行動を各地の協会や保団連で起こしており、署名活動や国会行動を通して、導入による医師の窮状を粘り強く政府に訴えていきます。
海外ではロシアによるウクライナへの侵攻が依然続いています。ロシアもこの戦いを戦争と認め始めましたが、この戦争のために世界各地で引き起こされているエネルギーの高騰、食料品の不足や高騰等はまだまだ続く問題であります。
私たち群馬県保険医協会は、すべての医師が、今までのように安定した医療を患者さんに提供できる環境を整えるため、これからも活動していきます。
本年も群馬県保険医協会を、どうぞよろしくお願いいたします。
■群馬保険医新聞2023年1月15日号
年末の中医協にて、医療機関におけるオンライン資格確認の整備義務化の取り扱いが決まる予定となっていることから、2022年12月20日群馬県選出国会議員9名、中医協委員23名、厚労省大臣官房総務課宛に「1人の閉院・廃業も出さないようオンライン資格確認整備の『4月義務化』の撤回・延期など至急の対応を求めます」を提出しました。
要請書原本はこちら → 群馬県選出国会議員宛
政府がオンライン資格確認システムの来年4月からの義務化を発表して以来、政府は何らメッセージや案内を発信していない状況等を鑑み、責任ある対応を求めて関東1都7県保険医協会会長・理事長連名共同要望として要望書を提出しました。
要望書原本はこちら → 「1人の閉院・廃業も出さないよう要望します(1都7県会長・理事長連名共同要望)」
保険証廃止の発表
2022年10月に河野デジタル相は、2024年秋を目処に現行の保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体となるマイナ保険証に切り替えることを発表した。
しかし、日本では国民に対して公的医療保険への加入を義務付ける「国民皆保険制度」を採用している。現行の保険証を廃止してマイナ保険証に一本化する今回の発表は、義務を伴う保険制度と、任意取得のマイナンバーカードの紐付けであり、マイナンバーカード取得の事実上の義務化といえる。
マイナンバーとは
マイナンバーとは、行政手続における特定の個人を識別するための番号のことで、その利用に関するマイナンバー法は2013年に成立した。
その目的について、総務省のウェブサイトには「公平・公正な社会の実現」「行政の効率化」「国民の利便性の向上」という3つの意義をうたっているが、「行政の効率化」は「お上の都合」であり、国民に関係するのは3番目だけである。
マイナンバーの問題点
マイナンバーは住民票を元に付番するため、住民票のないホームレスや住民票の住所に住んでいない人には届かず、全国民への通知の徹底は不可能であり、真に手をさしのべる必要のある人に対する社会保障の充実は困難である。
また、世帯単位の収入等を把握する総合合算制度により給付を行う等の政府発表もあるが、行政機関の申請主義は変わることはなく、生活保護などでも行政からの手厚い給付は期待できない。
マイナンバーは生涯不変で、行政内だけでなく民間での利用も想定しているため、漏洩を防ぐ事は不可能である。本来、個人情報は情報漏洩を前提に分散管理を行うことが基本であるが、マイナンバーはそれとは正反対の集中管理であり、セキュリティ面でも懸念がある。
マイナンバーにより政府は国民の情報入手が容易になる。特定秘密保護法と合わせて出された法であるため、政府に都合の悪い情報は秘密にし、国民の情報は国家による一元管理が可能となる。独裁国家にとって都合の良い制度と言えるだろう。
マイナンバーカード交付率
マイナンバーカード交付は2016年から始まったが、マイナポイントなどのオマケをつけても、交付率は5割と低い。
内閣府の『2018年世論調査』での取得しない理由は「必要性が感じられない」、「身分証明書は他にもある」、「個人情報の漏えいが心配」、「紛失や盗難が心配」とあり、カード取得の魅力が乏しい上に、情報の流出に不安を感じていることが伺える。
マイナンバーカード普及を急ぐ理由
例えば、2016年から金融機関は預金口座とマイナンバーを紐付けて管理する義務が課せられ、登録が進められているが、この登録には、マイナンバー通知カードと本人確認書類のコピーを紙で提出してもらう必要があるため手続きは容易なものではなく、順調とは言えない。もし、マイナンバーカードがあれば、本人確認が容易になり、この手続きも楽になるだろう。
紙と人による作業を避けて、マイナンバーと各種情報を紐付けるには、マイナンバーカードを使うやり方が、事業者側と利用者側の双方にとって最も容易である。ただ政府がマイナンバーを国民に割り振っただけでは、実効性は薄い。
他の様々な情報を紐付けるために、マイナンバーカードを全国民が取得し、利用に慣れてもらう必要がある。これが、政府がマイナンバーカードの普及を急ぐ理由と思われる。
マイナ保険証
2021年10月からマイナンバーカードの保険証利用が可能となったが、利用可能な施設は少なく、2023年4月からのオンライン資格確認義務化はその施設を増やすことが目的であると思われる。
厚生労働省の公式サイトでは、マイナ保険証のメリットを次の様にうたっている。
(1)就職・転職・引越をしても健康保険証として継続して使える。
(2)マイナポータルで特定健診情報や診療・薬剤情報・医療費が見られる。
(3)マイナポータルで確定申告の医療費控除が簡単にできる。
保険証廃止の問題点
現行の保険証を廃止するという政府のいきなりの発表に対して問題点は多く、次の様な意見がある。
・保険証を人質にとって無理矢理マイナンバーカードを取得させるのは、何か裏の意味があるのではと勘ぐってしまう。
・本人の意識が無い時は?薬局に代理家族やケアスタッフだけが来る時は?電子的にしか確認できないのは不便以外の何物でもない。
・対応できない高齢者は多数いるはずであり、サポートをするのは行政や医療機関であることを無視した強硬策に思える。
・体制を整え十二分に周知してから行うべき。また、顔認証カードリーダーを医療機関に強制するならば導入経費と維持費は全額国が負担すべき。
・将来的に色々なものと紐付けされていくと、情報漏洩が気になるし、持ち歩くことによる盗難や紛失などのリスクがあまりにも大きいと感じる。 マイナンバーカードへの保険証強制導入による行政のメリットに対して、保険証廃止の国民のデメリットは大きい。強引な保険証廃止は問題ありだ。
(副会長 長沼 誠一)
■群馬保険医新聞2022年12月15日号
支払基金から2022年12月5日付で医療機関宛に「顔認証付きリーダー申請のご案内」が送付されたことに対し、12月12日「厚労省と支払基金からの周知文書に抗議します(関東1都6県保険医協会会長・理事長抗議声明を提出しました。
抗議文原本はこちら → 「厚労省と支払基金からの周知文書に抗議します」
■栃木県保険医協会主催WEB参加「これだけは知っておきたい『在宅医療点数』講座」(医科)
※開業医科・勤務医科の会員のみなさまには、全国保険医新聞11月25日号に参加申込書を同封いたしました。群馬協会の会員及び会員医療機関のスタッフなどもご参加いただけます。
2022年4月に診療報酬が改定された。基本方針から抜粋する。
(健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現)
○同時に、我が国は、国民皆保険や優れた保健・医療システムの成果により、世界最高水準の平均寿命を達成し、人生100年時代を迎えようとしている。人口構成の変化を見ると、2025年にはいわゆる団塊の世代が全て後期高齢者となり、2040年頃にはいわゆる団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となって高齢者人口がピークを迎えるとともに、既に減少に転じている現役世代(生産年齢人口)は、2025年以降、更に減少が加速していく。
○このような中、社会の活力を維持・向上していくためには、健康寿命の延伸により高齢者をはじめとする意欲のある方々が役割を持ち活躍のできる社会を実現する(後略)。
フレイル予防の打ち出しを感じる。
(具体的方向性の例)
〇かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価
・かかりつけ医機能を担う医療機関が地域の医療機関と連携して実施する在宅医療の取組を推進。
・歯科医療機関を受診する患者像が多様化する中、地域の関係者との連携体制を確保しつつ、口腔疾患の重症化予防や口腔機能の維持・向上のため、継続的な口腔管理・指導が行われるよう、かかりつけ歯科医の機能を評価。
プレフレイルとしての、オーラルフレイル予防の位置づけを感じる。
2018年に保険導入された、65歳以上の「口腔機能低下症」における「口腔機能管理料」算定は、50歳以上に拡大された。
「口腔機能管理料」は、歯の喪失や加齢、これら以外の全身的な疾患等により口腔機能の低下を認める患者に対し、口腔機能の回復又は維持・向上を目的として行う医学管理を評価したものである。口腔機能低下の7つの項目(口腔衛生状態、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能検査、咬合圧検査又は舌圧検査)のうちいずれか3項目以上に該当すると「口腔機能低下症」と診断され、継続的な指導および管理を実地する場合に算定できる。2020年度の厚労省『第7回NDBオープンデータ』より、病名「口腔機能低下症」として算定される「口腔機能管理料(100点)」は、全国統計で42万3455点、群馬県では1893点と算定率の低さが読み取れる。
算定においては、7項目全ての検査を実施する事が義務付けられている。この検査に必要な機器の価格は、「口腔乾燥測定器」7万5千円、「咀嚼機能検査機器」2万4800円、「咬合調整圧測定器」42万5千円、「舌圧測定器」16万円と、多額の設備投資が必要である。
機器のランニングコストは、口腔乾燥測定74円/回。咀嚼機能検査553円/回/6か月。咬合圧測定743円/回/6か月。舌圧測定2千円/回/3か月。さらに舌圧測定は、1500円の舌圧チューブを1ヶ月毎に交換する必要がある。機器を使わずに評価できる方法も提示されているが、舌圧測定に関しては舌圧計の使用が求められるため、最低でも舌圧測定器は必須となる。
診療報酬として算定できる点数は、咀嚼機能検査140点。咬合圧測定130点。舌圧測定140点。
あまりにもコストが掛かるように感じる。口腔機能低下症の診断における問題点は、7項目すべての測定が口腔機能低下症と診断し算定をするための条件になっていることである。すべての検査を行わずとも、舌圧を測定して残存歯数が20本未満、舌苔の付着度が50%以上あれば、すでに3項目をクリアするため、口腔機能低下症の診断ができると考えられる。
例えば、2週間前から義歯の具合が悪いので新しく義歯を作りたい、と来院された患者がいたとする。口腔乾燥があり、舌苔を認める。舌圧を測定すると23kPaと基準値の30kPaに満たない。食前の口腔体操を指導すると、2週間後には義歯の違和感は消え使用可能になった、などという例は多々ある。
7項目すべてを検査せずとも、3項目以上が当てはまれば口腔機能低下症と診断できるが、この場合口腔機能低下症の診断名は使用できない。7項目すべてを検査するという義務付けは、医療費抑制の縛りを感じる。
口腔機能低下症と診断することがゴールではない。それを患者に説明し、口腔機能リハビリを継続させるために動機付けて納得させることが重要であり、その指導には、多くの時間を費やす事になる。
7項目すべてを検査し口腔機能低下症としても、口腔機能管理料は100点。診療報酬として適正な対価であるかは疑問である。
超高齢社会において、健康寿命延伸を掲げ、フレイル予防の入り口であるオーラルフレイル予防に歯科が重要な役割をもつことは周知の事実であるが、一般の歯科診療体系にはまだまだ浸透しておらず、地域におけるかかりつけ歯科医としての在り方が問われる時代になっていくと推測される。
(副会長 小山 敦)
■群馬保険医新聞2022年11月15日号
会員の先生方のご協力をいただき、2022年9月~10月に実施した「オンライン資格確認システムの導入義務化に関するアンケート」結果をまとめ、2022年10月27日群馬県庁記者クラブ「刀水クラブ」へプレスリリースいたしました。
プレスリリース原文はこちら → 「オンライン資格確認システムの導入義務化に関するアンケート結果について」
群馬県保険医協会では、「会員紹介キャンペーン」を実施いたします。当会に未入会の県内で開業、県内に勤務または在住の保険医の医師・歯科医師でお知り合いの先生がいらっしゃいましたら、ご紹介ください。
本キャンペーンは、ご紹介により当会にご入会された場合、ご入会された先生とご紹介いただいた先生のお二人に「グルメカタログギフト(10,000円相当)」をプレゼントいたします。複数名ご紹介いただいた場合は、ご紹介いただいた人数分プレゼントいたします。
是非ともこの機会にご紹介ください。
【会員紹介キャンペーン】
・参加資格 群馬県保険医協会 会員
・紹介対象 当会未入会の県内で開業、県内に勤務または在住の医師・歯科医師
・紹介方法 こちらを印刷しFAX(027-220-1126)でお送りください。→ ご紹介申込書
・応募期間 2022年10月17日(月)~2022年12月27日(火)
・進呈 グルメカタログギフト10,000円相当(入会者、紹介者にそれぞれ進呈)
※ご紹介いただいた方がご入会いただけなかった場合、プレゼントの発送はございません。ご了承ください。
※会員のみなさまには群馬保険医新聞10月15日号にご紹介申込書を同封いたしました。
不明な点等がございましたら、群馬県保険医協会事務局TEL(027-220-1125)までお問い合わせください。
安倍晋三元首相が凶弾に倒れて3か月が経過した。旧統一教会と国葬の問題の対処の仕方で岸田内閣の支持率が不支持率を下回った。
日本政治はこの10年、安倍元首相の路線の是非をめぐる対立軸で動いてきた。菅、岸田両政権でもその構図は引き継がれ、安倍氏が亡くなった今でも続く。外交、安全保障もそうだが、とりわけ経済政策は安倍政権の呪縛が強い。第二次安倍政権で国政選挙を6連勝に導き、政治資産の多くをアベノミクスが稼ぎ出したと言われるからだ。その可否は今後の国民生活の行方を左右すると言ってもいい。
アベノミクスの核心、それは先進国家にとって禁断とされていた錬金術に手を染めたことである。日本銀行は大量の紙幣を刷らせ、国債を買い上げて悪化する借金財政を支えた。お陰で増税や歳出削減という不人気政策は先送りできたが、財政事情は著しく劣化した。一時は政治家や国民の間に醸成されつつあった財政健全化への問題意識を消し去ってしまったことも、極めて深刻だ。
アベノミクスの実行部隊である日銀を指揮してきたのは、安倍政権が指名した黒田総裁だった。9年以上にわたって、異次元緩和を続け、その一環として470兆円超の長期国債を買い上げた。今や日銀の国債保有残高は、黒田日銀以前と比べて8倍以上の約553兆円に膨らみ、政府の国債残高のほぼ半分を占める(2022年6月時点)。これはどう見ても先進諸国が禁じる財政ファイナンスそのものである。安倍氏自身も亡くなる直前まで、全国を回っての講演で「日銀は政府の子会社で、インク代と紙代の20円で1万円札はいくらでも刷れる」と言っていた。それでも日銀は経済のための金融緩和手段だと言い募る。だが巨大な緩和マネーは実は景気浮場にはほとんど役に立っていない。日銀が国債と引き換えに支払った巨額のお金の殆どが、日銀の当座預金口座に退蔵されているからだ。民間企業の投資や家計の消費のための需要が乏しく銀行も有り余るお金を差し出す先がないのだ。
金融機関は預金量に応じて、一定の預金準備額を日銀当座預金または準備預り金として預け入れることが義務付けられている。それ以外に積まれる当座預金は、業界の俗語で「ブタ積み」と呼ばれる経済を回すのに役立たないお金で、国内総生産(GDP)に匹敵する約473兆円(2022年6月時点)。ただ眠っているだけなら無害だ。だが何かのきっかけでインフレや金利の上昇が急速に進んだら、ブタ積みのお金が一転して市場に流れ出し、うまく制御できなければハイパーインフレが起きてしまう。日銀はそうならないように当座預金金利を大幅に引き上げるだろう。もし1%幅で引き上げるなら支払利息は約5兆円増える計算になる。仮に数%の引き上げが必要になれば、10兆円ほどしかない日銀の自己資本があっという間に吹き飛び日銀が債務超過に陥る可能性がある。
いま日本はエネルギー価格、食料品価格の高騰、為替も140円を超えた。円安がどこまで進むのだろうか。日本経済の行方が気になる。
(経営対策部部長 深井尚武)
■群馬保険医新聞2022年10月15日号
■茨城県保険医協会主催 第96回コモンディジーズ研究会 Inertia 語源はArt ~高血圧を例に、Inertiaに陥る要因を分析・解析する~
※群馬協会の会員もご参加いただけます。
■栃木県保険医協会主催WEB参加医療経営セミナー 失敗しない相続!~相続対策の2大ツール「遺言」×「生命保険」~
※会員のみなさまには、全国保険医新聞10月5日号に参加申込書を同封いたしました。群馬協会の会員もご参加いただけます。
我が国における医療廃棄物は概括にいえば
(1)特別管理廃棄物(感染性)
(2)産業廃棄物(非感染性)
(3)一般廃棄物(非感染性)
の3つに分類される。(1)はさらに特別管理産業廃棄物および特別管理一般廃棄物に分けられる。特別管理廃棄物とは産業廃棄物および一般廃棄物をさらに厳格に処理をするものであり、その分コスト高となる廃棄物である。
現在、感染性産業廃棄物以外の特別管理産業廃棄物については、その定義が具体的に定められている。一方、感染性産業廃棄物の定義は「感染性廃棄物とは、医療関係機関等から生じ、人が感染し、若しくは感染するおそれのある病原体が含まれ、若しくは付着している廃棄物又はこれらのおそれのある廃棄物を言う」と具体的とは言い難く、これでは判断に迷ってしまう。
平成12年12月に環境省は、行政改革推進本部規制改革委員会から「『廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル』(環境省等)(以下マニュアルという)は、感染性廃棄物の判断の多くを医師等に委ねていて判断基準が客観性を欠いている」等の指摘を受け、平成16年3月に感染性廃棄物の判断基準の客観性の向上等を加味した改訂を行った。(大阪府の医療廃棄物Q&Aより)
以降は最新版のマニュアル(令和4年6月)の内容に沿って話を進める。感染性か否かを分別するための評価項目は、3段階からなっている。ステップ1は「形状」の観点で、①血液等の体液そのもの、②病理廃棄物、③病原微生物に関連した試験、検査等に使用されたもの、④血液等が付着している鋭利なもの、の以上である。なお、鋭利なものは血液付着の有無に関わらず感染性廃棄物とするよう注釈がついている。ステップ2「排出場所」の観点は、①感染症病床等、手術室、緊急外来室、集中治療室、検査室において治療、検査等に使用され、排出されたもの、②実験室・研究室で微生物実験に使用され、排出されたもの、の以上である。ステップ3「感染症の種類」の観点は、①感染症法の一~三類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症の治療、検査等に使用され、排出されたもの、②感染症法の四、五類感染症の治療、検査などに使用され、排出された医療器材、ディスポーザブル製品、衛生材料等(ただし、紙おむつについては、特定の感染症に係るもの等に限る。)、の以上である。「これらステップのいずれの観点からも判断ができない場合、血液等その他の付着の程度やこれらが付着した廃棄物の形状、性状の違いにより、専門知識を有する者(医師、歯科医師、獣医師)によって感染の恐れがあると判断される場合は感染性廃棄物とする」となっている。
感染性廃棄物が増える大きな要因の一つに、客観的な評価が困難な物品(代表としてグローブやガーゼなど)の存在がある。これらが感染性廃棄物となるケースについて考えてみたい。例えば、これらが手術室から排出されれば、血液付着の有無に関わらずステップ2に該当し、感染性廃棄物となる。また、HBV感染症患者の治療にこれらが使用されたならば血液付着の有無に関わらずステップ3に該当し、感染性廃棄物となる。悩ましいのはステップ2または3に該当しないケースである。基本的に専門知識を有する者により感染の恐れを判断するのだが、その判断の目安が大阪府の医療廃棄物Q&Aに示されている。「多量の血液が付着していることにより血液がこぼれ落ちて周囲を汚染するおそれがあるものを感染性廃棄物とし、血液の付着の程度が少量であるものや乾燥しているものは、非感染性廃棄物とする」とし、「唾液、排泄物、嘔吐物等は、血液と比較して感染性は低いが、それらが多量に混入していれば感染性廃棄物とする」としている。なお、グローブは感染性がないと判断されればあくまでも産業廃棄物である。
もう一つの要因は、運搬業者側にある。一般的に感染性廃棄物に比べ非感染性廃棄物の運搬費は当然安価となるが、特別管理産業廃棄物の運搬業者によっては非感染性のグローブ等の産業廃棄物を感染性廃棄物と区別せず、同価格で運搬を行っているケースがあると聞く。これではグローブ=感染性廃棄物と思い込んでしまうのも無理はない。コストを考えても別の産業廃棄物(非感染性)運搬業者に委託するしかないだろう。
感染性廃棄物はいつ、どこで、誰に、どのようにして感染の脅威を与えるかを考えれば、患者や医療従事者に対して講じる交差感染の防止を主眼とした感染対策と同列ではなく、適切な梱包と厳重な保管が重要となってくる。しかしながら、50リットルまたは80リットルダンボールに15キログラムを上限とする固定価格制をとっている特別管理廃棄物運搬業者が多いと聞く。処分場の取り決め事なのだから致し方ないだろうが、これでは「食品の詰め放題」と同様の心理が働き、感染性廃棄物を上限の15キログラムまで潰すだけ潰して詰め込むことに繋がる非常に危険なシステムではなかろうか。マニュアルにも、「内容物の詰めすぎにより、容器の蓋の脱落、注射針の容器外側への突き抜け、内容物の容器外部への飛散・流出等が生じるおそれがあるため、容器に感染性廃棄物を詰め過ぎない(容器容量の8割程度)ように注意する」とある。
コロナ禍の現在、急激な勢いで感染性廃棄物は増え続けている。運搬業者の中には感染性廃棄物の量が多すぎて、新規の取引は受け付けないところもあると聞く。このままでは運搬・処理価格の高騰や廃棄物運搬の引受拒否のような事態を招く恐れがある。廃棄物を減らすための取り組みの一つに「3R(Reduce・Reuse・Recycle)」があるが、我々が今すぐにできることは、院内より排出された廃棄物をマニュアルに則って分別し、感染性廃棄物をできるかぎり減らすことだろう。ゴミは機械的に「ゴミ箱」に廃棄するのではなく、感染性廃棄物か否か、産業廃棄物か否かを常に意識し、ゴミ箱のみならず運搬業者も適宜仕分けて排出することこそが、感染性廃棄物を減らすためには大変重要なことなのだろう。
(研究部・歯科部長 狩野証夫)
■群馬保険医新聞2022年9月15日号
群馬県保険医協会 会長 小澤 聖史
2022年7月14日の第52回群馬県保険医協会定期総会にて、清水会長に代わり新会長に選任されました。
私より適任の方が多くいる中、副会長や理事、皆様方の推薦を得て、少しでもお役に立てればと考え、力不足ではありますが会長を引き受けさせていただきました。
保険医協会は医師会、歯科医師会と違い、医科・歯科一体の組織であることが大きな特徴です。その特徴を最大限に生かせるように、医療問題に取り組む所存です。
その中で他職種との協力も必要と考えています。以前歯科技工士会の皆様と懇談をしたときに、医師・歯科医師だけでなく医療を支える多くの方々と意見交換をする必要性を感じました。今後は他職種との連携を踏まえ、様々な方と交流していきたいと思います。
医療対策では、最近少なくなってきている医科向けの講演活動も再開させたいと考えています。会員の皆さんもこの方の講演が聴きたいというリクエストがありましたら事務局までお知らせ下さい。
個別指導対策では、弁護士の紹介や帯同の実績を積み上げ、よりよい指導対策を行えるようにしていきたいと考えています。そのためには弁護士の先生との勉強会や講演会を開催していく事が必要と考えています。
協会は発足当時からひとつの政党に偏ることなく、思想信条は自由という立場を貫き通しています。今後もこの信条を貫き通していくことは当然のことであり、一つ一つの法案に対し是々非々で対応していきたいと考えています。
政府の医療費削減の政策が続く中、新型コロナウイルス感染症がパンデミックとなりました。感染症に対しての準備不足、病床の減少政策による入院制限など様々な問題が露見し、市民のみならず、医療従事者も多くの犠牲を払い疲弊してきています。今こそすべての人が医療問題に向き合い、医療を支え、皆保険制度を継続していけるように取り組んでまいります。
会員の皆様、理事会の皆様、事務局の皆様と一緒に群馬県保険医協会を盛り上げていく所存です。皆様一人一人のご協力をお願いいたします。
■群馬保険医新聞2022年8月15日号
今年の4月より、民法改正によって成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。1876年(明治9年)太政官布告で定められてから、146年ぶりの成人年齢の変更となりました。なぜ引き下げられたのでしょうか。三つの理由をあげたいと思います。
一つ目は、若者の社会参加を促進する目的で始まった憲法改正の手続きでした。2007年に国民投票法が制定され、憲法改正の賛否を問う国民投票にあたっては、18歳以上の国民に投票権が与えられることになりました。これにより、2016年には公職選挙法が改正され、選挙権年齢が18歳以上に拡大されました。これに伴い、他の権利や義務が発生する民法の成人年齢の引き下げが行われました。
二つ目は、少年による凶悪事件が発生するたびに起こる、少年法への批判からでした。成人は、罪を犯すと刑事事件として起訴されますが、少年は保護・更生させることが大事と考えられてきました。しかし、民法改正に伴い、少年法も変わりました。法律の対象年齢は従来の20歳未満のままですが、18歳と19歳の少年は「特定少年」と位置付け、検察官に送られる罪の幅を拡大し、成人の犯罪の扱いに近付けました。起訴されれば、実名や顔写真など本人を特定できる報道も可能となりました。
三つ目は、男女の結婚年齢の統一です。明治時代に民法で男性は17歳以上、女性は15歳以上と定められ、戦後の民法改正で男性18歳以上、女性16歳以上と引き上げられました。1996年には法制審議会より結婚年齢の男女統一の答申があり、さらに2003年、国連の女子差別撤廃委員会から「差別的」として改正するように勧告されるなど様々な議論がなされ、ようやく2022年4月より民法の成人年齢と結婚年齢が18歳に統一され男女差が解消されました。
さて、海外での成人年齢はどうなっているのでしょうか。国や地域によって18から21歳とばらつきがあり、中には14歳とかなり低い年齢を基準にしている国もあります。欧米の多くの成人年齢は21歳でしたが、1970年代にベトナム戦争への軍隊派兵や徴兵制度の関係から、18歳に引き下げられました。日本でも、明治の近代化とともに、近代国家制度である学校と軍隊が成人年齢を規定しました。明治6年に制定された徴兵令で満20歳が徴兵年齢とされた為、第2次世界大戦以前の日本の庶民が成人を意識するのは徴兵検査であったともいわれます。ロシアとウクライナが戦争を起こしている現在、複雑な心境になります。
成人とは何でしょうか。成年または成人年齢は、法的には、単独で法律行為が行えるようになる年齢のことです。民法が定めている成人年齢は、「一人で契約をすることができる年齢」であり、「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味があります。成年に達すると、親の同意を得なくても、自分の意思で様々な契約ができるようになります。
一般社会においては、成人とは身体的、精神的に十分に成熟している年齢の人間を指すことが多いです。戦前は身体の成熟と社会での成人の認知はほぼ一致していました。しかし戦後は経済成長とともに高学歴化が進み、現在成人年齢とされる20歳では約7割の若者は在学していて、経済的には自立していません。社会で一人前と認められるのも、結婚をする年齢も30歳前後となってきています。一方、身体的な成熟は早くなっているので、子どもから大人への移行期である青年期が長くなりました。また、「成人」も多様化しています。経済成長が止まり、終身雇用制度が崩れ社会の価値観が多様になっています。学校教育も多様な「個性」を尊重し、伸ばす「支援」が求められています。
憲法改正のための手続きを定める法律に端を発して18歳成人の議論がされました。 既に経済的に自立した若者は、18歳成人は親を煩わすことなく、会社等の運営ができ喜ばしいことのようです。しかし、心配なこともあります。親の知らないうちに高校生が結婚することも可能ですし、社会経験が少ない若者が高額な契約をさせられることもあります。若者を消費者被害などからどう守っていくか。本人たちの自覚に加え、家庭や学校の支えも大事なのではないでしょうか。今回の18歳成人は成人になる若者だけでなく、既に成人になっているものも、社会や政治に関心を向けるきっかけになったと思います。
(文化部長 北條みどり)
■群馬県保険医協会2022年7月15日号