群馬県保険医協会 会長 小山 敦

 このたび会長に就任いたしました。歯科医師としては歴代3人目の会長となります。会員の皆様のお力添えをいただきながら、保険医協会の発展と地域医療の充実に努めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

 最近の医療動向と、これからの医療の方向性について考えてみました。

 日本は今、大きな転換期を迎えています。少子高齢化の進行に伴い医療費は増加を続ける一方、医療従事者の不足や医療機関の閉院が各地で見られるようになりました。さらに、物価や人件費の上昇に診療報酬が十分追いつかず、多くの医療機関が厳しい経営環境に置かれています。

 同時に、医療のあり方も大きく変わろうとしています。これまでの「病気になったら治す」という治療中心の医療から、「病気を予防し、健康を維持する」という予防・健康管理を重視する医療へと大きく舵が切られています。

 2026年度診療報酬改定でも、医科と歯科の連携、口腔機能の維持、栄養管理、在宅医療、多職種連携などが重視され、健康寿命の延伸を目指す方向性がより明確になりました。これは超高齢社会を迎えた日本にとって重要な取り組みであり、歯科医療の役割は今後さらに大きくなると考えます。

 実際に、歯周病と糖尿病、誤嚥性肺炎、認知症、心血管疾患などとの関連が明らかとなり、口腔の健康が全身の健康を支えることが広く認識されるようになっています。

 一方で、現場では新たな課題も生じています。診療報酬改定のたびに算定要件や施設基準、各種書類は複雑化し、医療者の事務負担は増え続けています。また、標準化された診療が求められる一方で、患者さん一人ひとりの背景や価値観に応じた柔軟な対応も欠かせません。

 制度を尊重しながらも、患者さんに最も適した医療を提供することこそ、本来の医療の姿ではないでしょうか。しかし現場では、「必要と思われる医療でも制度上評価されない」「要件を満たさなければ算定できない」といった場面も少なくありません。保険医が専門的な知識と経験に基づいて行う判断も、制度上の要件に左右される場面が増えているように感じます。

 診療報酬は医療の価値を評価する制度であると同時に、国が目指す医療政策を現場へ示す仕組みでもあります。その結果、制度への対応に時間を費やし、本来もっと大切にしたい患者さんとの対話や信頼関係づくりが十分にできないという声も聞かれます。

 これからの医療には、「標準化」と「個別化」の両立が求められます。AIや医療DXが進歩しても、患者さんの思いに耳を傾け、ともに治療方針を考え、信頼関係を築くことは、医療者にしか果たせない大切な役割です。制度は医療者を縛るものではなく、患者さんにより良い医療を届けるための支えであってほしいと願っています。

 保険医協会には、現場の声を社会や行政へ届けるとともに、医療者が安心して保険診療を続けられる環境を整え、地域住民が安心して医療を受けられる国民皆保険制度を守るという重要な役割があります。

 会員の皆様と力を合わせ、地域医療と国民皆保険制度を次の世代へ確実に引き継いでいけるよう努めてまいります。今後とも、皆様のご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

■群馬保険医新聞2026年8月15日号より