子宮頸がんとHPVワクチン

小沢医院 院長 小澤 聖史

 子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症する。このHPV感染を防ぐために子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)が開発された。

 日本では平成25(2013)年4月1日から定期接種が開始されたが、接種開始後すぐに副作用が問題となり、同年6月に積極的な勧奨を一時的に差し控えることになった。

 その後令和3(2021)年11月に、専門家の評価により「HPVワクチンの積極的勧奨を差し控えている状態を終了させることが妥当」とされ、令和4(2022)年4月から、他の定期接種と同様に個別の勧奨を行っている。そして令和5年(2023)4月には、新たに9価の子宮頸がんワクチンが公費のワクチンとして追加された。

 HPVワクチンは、小学校6年から高校1年相当の女子を対象に定期接種が行われている。現在日本で接種できるHPVワクチンは「サーバリックス(2価)」、「ガーダシル(4価)」、「シルガード9(9価)」の3種類から希望のワクチンを選択できる。

 HPVワクチンは一定の間隔をあけて、同じワクチンを合計2回または3回接種することが必要だが、ワクチンの種類や年齢によって接種のタイミングや回数(図1)、さらにワクチンごとの効果や副作用等が異なる(表1)。

 サーバリックスおよびガーダシルは、子宮頸がんをおこしやすいウイルスであるHPV16型と18型の感染を防ぐことができ、子宮頸がんの原因の50~70%を防ぐといわれている。またシルガード9は、HPV16型と18型に加え、31型、33型、45型、52型、58型の感染も防ぐため、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぐといわれている。(図2)

 子宮頸がんワクチンの接種は、原則として同じ種類のワクチンを接種することとされているが、防げるHPVタイプが多い9価のワクチンが接種可能になったため、患者の希望があれば医師と相談のうえ途中からシルガード9に変更し、残りの接種を完了させることもできる。

 平成9年度生まれから平成18年度生まれ(誕生日が1997年4月2日から2007年4月1日)の女性の中に、通常の子宮頸がんワクチンの定期接種の対象年齢(小学校6年から高校1年相当)の間に接種を逃した人がいる。そのため、厚労省は接種を受けていない人を対象に、あらためて子宮頸がんワクチンを接種できる「キャッチアップ接種」を提供している。このキャッチアップ接種の対象の人も、途中からシルガード9に変更し、残りの接種を完了させることができる。

 子宮頸がんワクチンで問題となった副作用の対策として、副反応に該当するか判断しにくい症状が出た場合には、接種した医師が相談に応じることになった。更に、全国に設置された「HPVワクチン接種後に生じた症状の診療に関する協力医療機関」を紹介できるようになった。各都道府県において、衛生部局と教育部局の1箇所ずつ「ヒトパピローマウイルス感染症の予防接種後に症状が生じた方に対する相談窓口」を設置し、接種できる環境、副作用に対応する環境も整備されてきている。

図1 厚労省配付リーフレットより

図2 厚労省ホームページより

表1 各ワクチン添付文書より