帯状疱疹ワクチンについて

周東クリニック 副院長 周東 朋子

 当院は2022年8月に前橋市で開院した泌尿器科、内科、皮膚科のクリニックです。地域の皆様のお役に立てるよう努力してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。当院は、幸福で肉体的、精神的、社会的全てにおいて満たされた状態「Well-being」を目指し、ワクチンを始めとした予防医学、患者さんへの知識の啓発にも力を入れています。

 近年、帯状疱疹の認知度は徐々に上がっている印象があります。発症早期の段階から、帯状疱疹を疑い受診される患者さんが増えており、速やかに抗ウイルス剤内服加療を開始できるようになりました。しかし、顔面に発症して角膜ヘルペスや顔面神経麻痺を生じる症例、下腹部に発症して尿閉を生じる症例、帯状疱疹後神経痛で長期にわたりQOLを下げてしまう症例なども散見されます。抗ウイルス薬や、神経障害性疼痛に対する内服薬による治療はもちろん有効ですが、やはりワクチンによる予防が最善策です。

 テレビコマーシャルやウェブサイトで帯状疱疹ワクチンの情報提供が行われていますが、「帯状疱疹」に比較して「帯状疱疹ワクチン」の認知度は低く、さらなる啓発活動が望まれます。

 帯状疱疹ワクチンには、生ワクチン(販売名:ビケン)と不活化ワクチン(販売名:シングリックス)の2種類があります。当院では、予防効果が高く、効果持続期間が長い、不活化ワクチンの接種を勧めていますが、希望者には生ワクチンの接種も行っています。待合室と診察室にポスターやパンフレットを掲示し情報提供を行っています。また、医師のみならず、看護師、医療事務員も帯状疱疹ワクチンの知識を持ち、興味を持った患者さんに速やかに正確な情報をお伝えできるように努力しています。

 不活化帯状疱疹ワクチン接種における最大の障壁は数万円もの高額な接種費用と考えます。多くのワクチンは、公費か数千円の支払いで済むことから、不活化帯状疱疹ワクチンの金額を知ると二の足を踏む方が多いと感じます。そこで多大な効果を発揮するのが自治体からの助成金です。当院は、関越自動車道の側道沿いで、前橋市と高崎市の市境に位置しており、両自治体の助成の有無による違いを実感しています。昨年度までは、実際に接種されるのは、自ら、あるいは家族や知人が帯状疱疹に罹患した方が中心でしたが、前橋市で帯状疱疹ワクチンへの助成が開始されてから、「助成金があるうちに」と考える前橋市在住者の接種が増えています。対照的に、助成を行なっていない高崎市在住者は、「助成が始まるのを待つ」という方が多いです。また、助成がある自治体でも、そもそも帯状疱疹ワクチンの認知度が低いので、重症化の観点からも特に接種をした方が良い高齢者などに十分に伝えられていない可能性があります。群馬県は帯状疱疹ワクチンへの助成がある自治体が全国的にも非常に多く、大変恵まれていると思います。県民の「Well-being」のために、帯状疱疹のリスク、帯状疱疹ワクチンの効果、副作用、自治体からの助成など、かかりつけ医が積極的に患者さんに情報提供を行っていくことは非常に有効と考えます。

 不活化帯状疱疹ワクチンについて、ワクチン対象年齢、接種回数や副作用、COVID-19やインフルエンザワクチンとの接種間隔、自治体による助成費用など、問い合わせが多い内容をまとめましたので、下記をご参照ください。

不活化帯状疱疹ワクチンQ&A

Q1.不活化ワクチンの対象年齢、接種回数を教えてください。

A.接種対象年齢は50歳以上、接種回数は2回で、1回目の接種から2ヶ月後に2回目を接種します。遅くとも6ヶ月後までに接種します。

2023年6月より、「帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の者」も接種できるようになりました。疾病または治療により免疫不全である者、免疫機能が低下した者または免疫機能が低下する可能性がある者、上記以外で医師が接種を必要と認めた者が対象で、この場合のみ、1回目の接種から2回目までの接種間隔を1ヶ月まで短縮できることになりました。

Q2.どんな副作用がありますか。

A.接種部位の腫れや痛み、発赤などの局所症状が主ですが、発熱や頭痛などが起こることもあります。当院では、コロナワクチン後の副作用に似ていますと説明しています。

Q3.COVID-19やインフルエンザワクチンとの接種間隔を教えてください。

A.COVID-19ワクチンとの間隔は2週間開ければ接種可能です。どちらを先に接種しても構いません。また、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなどの不活化ワクチンとの接種間隔には制限がありません。同時接種も可能です。

Q4.帯状疱疹にかかったあと、どのくらい空けばワクチン接種ができますか。

A.帯状疱疹に罹患後もワクチン接種は可能ですが、罹患から接種までの間隔に明確な基準はありません。

Q5.群馬県内の帯状疱疹ワクチン助成がある自治体を教えてください。

A.2023年9月現在の当院調べの情報になります。

前橋市、伊勢崎市、桐生市、渋川市、沼田市、館林市、安中市、富岡市、吉岡町、玉村町、みなかみ町、甘楽町、東吾妻町、中之条町、長野原町、神流町、大泉町、草津町、榛東村、高山村、昭和村、川場村、嬬恋村、上野村

※他市町村の医療機関で接種しても助成が受けられる、各自治体の指定医療機関での接種のみ助成が受けられる、事前申請が必要など、自治体によって条件が異なりますので、詳細は各自治体にご確認下さい。