群馬県保険医協会の会長に就任してからはやくも二年が経ちました。

 群馬県保険医協会の会員数は一時期1000人を割り込んでいましたが、現在は1008人になりました。

 さて今年に入っても、多くの医療問題が私達の周りに山積みとなっています。

 2020年日本に寄港したダイヤモンド・プリンセス号の新型コロナウイルスの爆発的感染から4年が経ち、令和5年5月8日に感染症法上の位置づけは2類相当から5類に引き下げられました。

 それから1年が経ち、感染者は一時減少していましたが、最近増加傾向を示しています。 老健施設や病院群ではまだクラスターが発生していると聞きます。

 医療界にとっては5類になった今も気を抜けない診療体制が必要です。

 しかし人々のコロナへの 対応は大分変化を見せ、マスクをする人の数が目に見えて減ってきています。

 またコロナワクチンも接種に関しては65歳未満の人に対しては基本自費となりました。

 65歳以上の人に対しては、国から補助が出て、残りの7000円程度から市町村の補助を引いた額が支払う実費になります。

 市町村の補助額は定額ではなく、例えば、高崎市民の自己負担額は1500円、前橋市民の自己負担額は3000円となります。

 65歳未満の人が接種するには15000円程度かかり、高額のワクチンになってしまったのが実情です。

 ワクチンを接種したくても、金銭的な事情により接種を控える人が出てしまう恐れがあります。

 2024年は医療・介護・障害福祉の3つの報酬が同時に改定される「トリプル改定」の年に当たりました。介護報酬と障害福祉サービス等報酬は3年に1度改定されるため、6年に1度のタイミングで3制度の報酬が一斉に見直されました。

 医療の報酬改定では初めて2ヶ月の移行期間があり6月から施行となる年でした。

 この6月からの施行に対して群馬県保険医協会では今回は5月に新点数検討会を開催しました。

 関東信越厚生局の群馬支部では今回の改定に対しての説明は動画配信のみにとどまり、今後の検討会も同様に動画配信になると思われます。 診療報酬の丁寧な説明もせず、多くの分野で診療の報酬の減点が行われています。内科における高血圧症・脂質異常症 ・糖尿病で算定できていた特定疾患療養管理料を生活習慣病管理料に変更したことは内科にとっては大打撃です。

 そのほかの問題点として

・人員配置と加算の課題があります。改定内容では、職員の人員配置や重度者支援の加算などが細分化され、多くの加算が要件や事務量を課せられ、小規模な事業所ほど受けられない現状となっています。

・薬価の問題に関して、後発医薬品を推進する一方、低すぎる薬価により不採算品の製造中止や手順不正が見られています。小児科分野で抗生剤や抗ウイルス薬、鎮咳薬が不足しているのは記憶に新しいことです。

 これに加え10月1日から、医療上の必要性がないにもかかわらず、患者が「後発医薬品でなく先発品(長期収載品)を使いたい」と希望した場合には、両者の差額の4分の1を患者自身が負担する仕組み(選定療養)が導入されます。

 ジェネリック医薬品が欠品するなか、混乱が起きるのは必至です。

 この制度の説明に対しても厚生労働省は国民に十分な説明をせず、医療機関へ丸投げです。

・医師の働き方改革に関して、2024年4月から医師に対して「時間外労働の上限規制」が適用されるため、医療従事者の働き方改革が求められています。

 開業医の院主には当てはまらないことではありますが、勤務に関してはこれからじわじわと問題になってくる改革です。

 救急医療分野、外科医療分野、産科医療分野では人員不足に対する対策が急務になってきています。

 以上の事などが挙げられます。

 マイナンバーカードがいよいよ今年の12月から本格実施されます。

 未だにマイナンバーカードの資格確認問題は、メディア で取り上げられ与党の議員からも多くのマイナンバーカードに対する疑問が出てきています。

 弁護士からも、今現在使われている保険証に特に問題がないのに義務化することは違法かもしれない、との意見が多く聞かれます。

 マイナンバーカードの取得は元々、持つか持たないかは本人の意思で選択できましたが、保険証との紐付けの義務化によりマイナンバーカードの取得も義務化となってしまいます。

 最近では、政府は携帯電話の契約にもマイナンバーカードのICチップを読み取るよう義務付けることを決定しました。

 又運転免許証もマイナンバーカードと一体化することが発表されました。

 何が何でもマイナンバーカード、といった状況です。

 現在マイナンバーカードを取得しなくても保険診療は受けられるように、資格確認書が発行される事になっています。しかし実際にはその資格確認書有効期間が1年で更新が必要とされ、更新は資格者自身がしないと放置されてしまいます。

 知らないうちに保険診療が受けられなくなってしまう可能性がある、ということです。

 群馬県保険医協会は、私達保険医にとって、そして医療を受ける県民・地域住民たちにとって何が本当に必要であるかを冷静に見極め、発言し、行動していきたいと考えています。

 協会員拡大のため開業医だけでなく、勤務医の会員拡大も進めていきます。

 協会事務員も増員され、協会員へのサービス向上、講演会の開催などに取り組んでいます。

 今後とも協会へのご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

(会長 小澤 聖史)