2025年問題とは、国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)の超高齢化社会を迎えることで雇用、医療、福祉といった日本経済や社会の広い領域に影響を及ぼす諸問題の総称である。

 人生50年と言われた時代から、人生100年時代へ。平均寿命は延びているが寝たきりの方も含まれており、 医療費・社会福祉費の増加が懸念され、健康寿命の延伸が望まれる。厚生労働省は 全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和5年法律第31号) を成立させた。

 2024年4月、診療報酬が改定され、施行は6月からと猶予期間が設けられた。

 令和6年度診療報酬改定の基本方針には

○生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理及び重症化予防の取組推進

○口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療の推進

・歯科医療機関を受診する患者像が多様化する中、地域の関係者との連携体制を確保しつつ、口腔疾患の重症化予防や口腔機能の維持・向上のため、ライフステージに応じ、生涯を通じた継続的な口腔管理・指導が行われるよう、かかりつけ歯科医の機能を評価。(再掲)

・病院歯科の役割に応じた評価、歯科診療所との連携の推進。

・歯科衛生士が行う指導管理、歯科技工士が関わる技術を含む歯科固有の技術等の適切な評価。

と記されている。

 歯科において「かかりつけ歯科医療機能強化型歯科診療所」が廃止となり、 その内容を引き継いだ「口腔管理体制強化加算」の施設基準が新設され、口腔機能管理を重点的に評価された。

 歯の形態回復に係る評価は置き去りに、クラウン・ブリッジ維持管理料おいては金パラ・銀合金の単冠が算定から外された。

 人生50年時代は歯を喪失したら補綴処置を行うことで食べられる時代であったが、人生100年の時代は歯があっても食べられない、飲み込めない時代になり、口腔の機能低下の評価回復維持が求められる。

 歯科診療所では、むし歯の治療が減少し、歯周病のメインテナンスが中心になり、口腔機能の低下に対応する事が求められる。通院困難な高齢者も増加傾向であり、歯科の訪問診療も望まれる時代が想定される。

 群馬県の歯科医療機関数954機関の内、 在宅療養支援歯科診療所の施設基準の登録は80医療機関であり、8.4%にすぎない(2024年5月1日現在)。 これでは対応が不十分である事が予想される。

 歯科の訪問診療は、20分以上と20分未満で、時間的な要件が含まれていたが、訪問診療1(一人だけ訪問する場合)は、時間要件が無くなり、訪問診療の敷居が低くなったように感じる。兼ねてからの保団連の要求が実現したと思われる。今後、在宅療養支援歯科診療所の施設基準の登録が増加する事を期待する。

 余談であるが、訪問診療において、よく「口腔ケア」という用語が使用されている。 これは一般社団法人日本口腔ケア学会が権利者として商標登録(商標登録番号:4568672)されており、学術用語として位置づける事が疑問視されている。

 日本老年歯科医学会では、学術用語として、口腔清掃を含む口腔環境の改善など口腔衛生にかかわる行為を「口腔衛生管理」、口腔の機能の回復および維持・増進にかかわる行為を「口腔機能管理」とし、この両者を含む行為は「口腔健康管理」と定義している。

   (歯科会代表 小山敦)