群馬県保険医協会の会長に就任してからはやくも三年が経ちました。

 現在群馬県保険医協会の会員は993名であり、1000人を割り込んでいます。私の力不足で申し訳ありませんが、是非知り合いの先生をご紹介いただければと考えています。開業医会員、勤務医会員だけで無く、本年より研修医の会員も広く募集しています。研修医会員について研修医期間は会費を免除することが、この夏の総会で議決されました。保険医協会の目玉ともいえる共済保険を若いうちに加入することは有益であると考えています。

 2024年度診療報酬改定から1年経ちましたが、医師の診療に対するモチベーションを下げるためとしか思えてなりません。多くの医療機関で減収になっているのは、皆さんも実感していることと思います。各保険医協会からも開業医の6割以上が減収であったと報告があります。物価や人件費の上昇に、診療報酬などの収入が追いついていません。皆さんの診療所でも職員の給料を他業種並に上げるのに苦労されていることと存じます。今の診療体系では日本の医療は先細りにしか見えないと感じています。

 また、開業医のみならず日本の病院群のおよそ7割が赤字であるというショッキングな報告がされました。病院群は救急医療、NICU等いわゆる赤字部門を抱えているため赤字経営に陥ると理解している私達医師の感覚からしても由々しき事態です。全国にある国立大学の44の附属病院の病院長で作る「国立大学病院長会議」は、先月9日に都内で会見を開き、昨年度の決算の速報値を公表しました。44病院の昨年度の経常損益は過去最大の285億円の赤字になったということです。2023年度はおよそ60億円の赤字で、初めて赤字に転落しましたが、今回はさらに大幅な減益になっています。現実に群馬県内でも赤字の病院群が多く黒字なのはほんの一部の病院のみです。そのため老朽化した病院の建て替えもままならぬ状況です。

 今の診療報酬では、とても建て替えに必要な利益は得られないのが実情です。現実に医療機関の倒産は昨年には64件となり過去最多になっています。この数字には、倒産はしていないもののこのままでは赤字が膨らむため診療を中止したという病院・診療所の数は含まれていませんので、実情はもっと多くの医療機関が倒産していることになるでしょう。診療報酬体系の大幅な見直しが必要と考えます。

 昨年末に健康保険証の新規発行が停止され、マイナンバーカードに統一されるようになりました。医療機関では未だにトラブルが続出しています。トラブル時の問い合わせ先はなかなか電話が繋がらず事務職員の大きな負担になっています。マイナンバーカードに保険証を紐付けしていない人に発行される「資格確認書」とマイナ保険証を持っている人に届く「資格情報のお知らせ」について、理解が出来ている国民は少数派なのではないでしょうか。「資格情報のお知らせ」はマイナ保険証がうまく読み取れないときに使用されますが、マイナ保険証を持たず「資格情報のお知らせ」だけで受診しようとする方が多く出てきてしまうのではないかと杞憂してしまいます。

 昨年から続く薬価の問題はまだ解決していません。後発医薬品を推進する一方、低すぎる薬価が不採算品の製造中止や手順不正が見られていた昨年と変わっていません。小児科分野で抗生剤や抗ウイルス薬、鎮咳医薬の不足は少し改善していますが、まだまだ今までどおりとは行きません。これに加えトランプ関税に見られる輸入物質の不透明化がより薬の製造に影響を与え、混乱が続くのは必至であると考えます。

 先月行われた参議院議員選挙では、医師資格を持つ候補者が20名立候補し、7名が当選しました。現在の医療実情の厳しさを国に訴えかけ、診療報酬のプラス改定や医療DX推進により起こっているトラブルなどの解決策を、有識者として党派を超え議論してくことができる医療系国会議員が今以上に必要だと思います。

 群馬県保険医協会は、私達保険医にとって、そして医療を受ける県民・地域住民たちにとって何が本当に必要であるかを冷静に見極め、発言し、行動していきたいと考えています。

 協会員拡大のため開業医だけでなく、勤務医の会員拡大も進め、より一層協会員へのサービス向上、講演会の開催などに取り組んでいます。

 今後とも協会へのご支援、ご協力をよろしくお願いします。

(会長 小澤聖史)