脱金パラ加速
次期診療報酬改定(令和8年6月1日実施)は2月中旬には中央社会保険医療協議会(中医協)の答申が出て、全体像が明らかになります。この中で脱金パラが加速します。
歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金12%以上、JIS規格適合)、通称「金パラ」を部分入れ歯の材料から外すことや金属のかぶせ物の代わりに使えるハイブリッドレジンなど代替材料の使用範囲を拡大することなどが具体化されます。
止まらない金パラ価格高騰
金パラ価格は高騰が続いており、逆ザヤが生じています。逆ザヤとは保険の告示価格(特定の医療行為や材料に対して設定された価格基準)よりも歯科医療機関の仕入れ価格の方が高い状態のことです。2019年12月の実勢価格は、1gあたり約2260円でしたが、昨年12月には4500円に上昇しました。一方、保険診療の告示価格は2019年12月当時1gあたり1675円でしたが、昨年12月には3802円に改定されました。昨年12月時点で約700円の逆ザヤが生じています。今年1月には金パラの実勢価格は5000円を超え、逆ザヤは約1200円に拡大しています。現在の告示価格の計算方式は、前回改定以降から改定2か月前までの期間における金、銀、パラジウム各金属の取引価格を用いて算出しているため、金パラ価格の高騰が続く中では、必ず逆ザヤが生じます。逆ザヤが生じない算定方式に改める必要があります。
代替材料の保険導入と適用の拡大
2014年からハイブリッドレジンを材料とするCAD/CAM冠が保険導入されました。最初は小臼歯だけでしたが、徐々に適用範囲が拡大され、2024年の6月からは、かみ合わせなどの条件付きで第一・第二大臼歯にも適用できるようになりました。また2023年には高強度プラスチックのポリエーテルエーテルケトンを材料とするPEEK冠が大臼歯に保険導入されました。2024年6月時点で小臼歯ではCAD/CAM冠の割合は59.3%、大臼歯では27.5%まで増えています。
ハイブリッドレジンによるCAD/CAM冠は金属冠に比べて審美性に優れ、今後、光学印象の普及と合わせて、患者、歯科医師、歯科技工士の負担軽減につながることが期待できます。しかし、耐摩耗性については不確かです。また、被せるために金属冠の場合に比べて歯を削る量が多くなり、歯の長期予後(寿命)にも影響を与えます。
金パラ価格の高騰による代替材料への転換は、保険の財政上の理由からある程度やむを得ないと思われますが、歯科医師の裁量による選択肢は十分に確保される必要があります。金属の節約という点では、現在は認められていない小臼歯の単冠(1歯ずつのかぶせ物)の前装鋳造冠(表側がレジンで他は金属のかぶせ物)の保険導入なども選択肢です。
部分入れ歯への使用制限
次期診療報酬改定では部分入れ歯のクラスプ(入れ歯を歯に固定するための金具、鉤)の材料がコバルトクロム合金に限定されます。改定案では「鋳造鉤を算定する場合の特定保険材料は、基本的に鋳造用コバルトクロム合金とする」とされています。クラスプのうち、鋳造の二腕鉤の材料としては、現状ではコバルトクロムが約70%、金パラが約30%の割合で使用されています。コバルトクロム合金は高温での鋳造が必要なため、それに対応した鋳造機が必要です。日本は小規模な歯科技工所が多く、全体の75%以上が技工士1人で運営しています。このうちコバルトクロム合金に対応した鋳造機を持っているところは多くないと推測されます。就業技工士の50%以上が50歳以上と高齢化も進んでおり、新たな設備投資は容易ではないと思われます。そんな状況下で、使用金属の制限が設けられると、保険の部分入れ歯に対応しきれない技工所が多く出る心配があります。保険で部分入れ歯ができない!という事態は杞憂であれば良いのですが、気になります。
金パラ価格の高騰は今後も続くと予想されます。社会保険料の負担感も高まっており、保険財政も抑制されています。歯科医療費のパイが大きくならないのだとすれば、金パラ代に多くの歯科医療費が注ぎ込まれるのは良い選択とは言い難いと思われます。結局はどう配分するか、何をとって何を犠牲にするかという問題に行きつくかと思いますが、選択肢を残すことは重要です。また、歯科医療費のパイを大きくする努力も、捨ててはいけない重要なことと考えます。
(審査指導対策部長・歯科半澤正)